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12 ひょっとしたら殿下の気配りだったのかもしれません

フィリップ殿下がいらっしゃってから、お父様は元気が無かったようですが、暫くして私に話をしてくださいました。


妾として邸に住まわせていたナタリーを放遂したのだと。


詳しくは仰っていませんでしたが、恐らく殿下が話された内容にそれの事に触れられていたのでしょう。

何にせよ、彼女達の存在は侯爵家を歪なものにさせていたのですから、ある意味当然であるべき姿になったのかもしれません。


「もう一つ、大事な事を伝えなければならない。近々私は侯爵位を降りてお前に譲ろうと思っている」


お父様の引退宣言に驚きはしましたが、ある種の予感はありました。

王命に背いた家門を他の貴族家が看過するわけありません。

”あの”フィリップ殿下が、のんびりと私に頼み事だけしにわざわざ我が家にやってくる訳がありません。

ひょっとしたら私への用事の方がついでの事だったのかもしれませんわ。


益々祝宴の参加が重要になってきました。

次期侯爵として堂々と立ち振る舞わなければならないのですから。

そう考えると、エスコートをしていただくのが殿下で良かったのかもしれません。

幾ら可愛げが無いと定評の私でも、国王陛下の現役側近達である百戦錬磨の貴族のお偉方の中に放り込まれたら委縮してしまうでしょう。

ええ、自分で言っておいて何ですが、そうなる自信がありますわ。

殿下と一緒に居る間はキツイ威嚇もしてこないでしょうし、そう考えたら殿下も魔除けというか風除けになろうと立候補なさってくれたのかもしれません。


ありがたや、ありがたや。

絶対王城に足向けて寝たりできません。

しないけど。



引退宣言をしてからお父様は引き継ぎの作業もあり、俄かに忙しくされています。

アンジェ様の話によると、公爵家でもオリバー様の公爵交代の時期が早まり、バタバタと慌ただしいのだそうです。

やはり、殿下のお話はそういう王家の意向があったということなのでしょうね。


祝宴の出席の準備だけでなく、私自身も侯爵位の引継ぎと側近を固める事をしなければなりません。

執事のアルバートはお父様が長年信頼して雇ってきたのですから、私から解雇することはないでしょうが、本人が希望するなら受け入れる意向ではいます。

その前に代わりを見繕う事は頼むかもしれませんが、そう易々と信頼できる者なんて見つかりません。

でも希望が無いわけではなく、アルバートの息子さんが学校を出てから執事の仕事を手伝っているらしく、「数年以内に仕込んでお嬢様付きになるように育てるつもりです」と言っていたの。

頼もしいわ。

祝宴の席でヨサゲな人材をスカウトするのは流石に無理かしら。


…こうやってウンウン唸って頭を捻らせるのも無駄な抵抗だったのだと後で思い知ることになるのですけどね。



あれから一週間も経たないうちに祝宴の為のドレスが届けられました。

早っ!

幾ら王家の威光をチラつかせたとしても、余りにも仕事が早くありませんこと!?


それにドレス用に採寸した覚えがありませんのに、きっちりとぴったりフィットのドレスが出来上がってる不思議。

いつの間に私のサイズを把握したのだか。

何でも私のドレスを仕立てたショップで王家の威光をそれこそチラつかせてサイズを聞きだしたのだとか。

そんな事に大事な威光を使わんでください、ホント。

王家の情報網、怖っ!


さてその件のドレスなんですが。

開封したアンナがひえっ、と声をあげました。


何事?って思ってその箱の中をのぞき込むと。


眩いばかりのプラチナな真っ白ドレスですよ!

ご丁寧にアイスブルーカラーのサファイアの豪奢なアクセサリー付き。

パートナーの色を纏うのはある種のマナーではありますけど、流石にこれは誤解を招きかねません。


抗議しようかと思っても、王家への物言いはうちとしてはやるべきではないのもわかっています。

しかし、しかしですね。

これを衆目を集める場で着る私の身にもなってくださいませ。

居た堪れなくなるのが目に見えるようですっ!!

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