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11 それは愛ではなかったのかもしれません

「それだけ?そう思っていること自体が間違いだったのだ」


ナタリーだけではない、カタリナにそう思われた原因は自分にもあるとランセットは自戒を込めて反論する。


「他人のものを欲しがるのは卑しい行為だと教えなければならなかった」

「それは私へのあてつけですの?」


平民が高位貴族の生活を手に入れることに対してナタリーには罪悪感など無い。


「愛があればよいというなら、お金など無くても困らないだろう?」


当人は気付かないかもしれないが、ランセットはナタリーに向ける笑顔が普段よりシニカルになっている。


「国王は王命に背く貴族を排除する。何も国王陛下が殊更冷徹というわけではない。背臣など棄て置いてはならないものだからだ」


どういう意味?と言いたげにナタリーは首を傾げる。


「このままナタリーと共に暮らすのであれば、私は爵位を失い平民に下る。どの道この先もナタリーを養う事はできなくなる」


漸く事態が呑み込めたのか、ナタリーが息を呑んだ。


「私と共にいるなら、ナタリーも働き私を支える側に回るのだという事だ。どうする、それでも私と共に居たいと思うか?」


敢えてナタリーに選ばせる。

それでも愛が大事なのだと言えばその覚悟を汲むつもりでは居た。

けれど自分を金蔓としか見ていないのなら、そこに愛は無かったのだと証明される。


「美しさや愛らしさを殿方は女性に求めるのに、女性は殿方に財力を求めるなと仰いますの?」


ランセットは目を閉じる。

自分達は『お互い様』だった。

ナタリーだけを責めるのはお門違いだとわかっていても。


結局、この美しい女と過ごした日々は打算の上に成り立ち、自分の娘を徒に傷付けただけだったのだ。


「それもそうだな。…わかった、うちが手掛けている事業の中から出来そうなところに君への紹介状を書こう」


事業の、というからには新しい愛人の斡旋ではなさそうで働き口の事を指しているのだと気付く。


「うちの事業の関係なら、怪しさや卑しさもない所で働けるだろう」


ランセットがそう言って紹介状を書くと、金の切れ目が縁の切れ目とばかり数日後にはナタリーは邸を出て行った。



―――愛とは何だろう?



娘からの信頼もなくしかけて、一方的だった自分のこの想いが何だったのかとランセットは思うに至った。

結局は自分の事しか愛していなかった。


誰も愛していないのに、誰かから愛される筈なんてなかったのだ。

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