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9話 俺とこれからも一緒に居てくれないか……?

 さて目的地までは……うーんと、あと半分ってとこか。まだちょっとかかるかもしれないな。


 結衣に話したいことも聞きたいこともあるし……結衣のことをもっと知れるかもしれない。


 俺はさっきまでのドキドキした気持ちを抑えて結衣に話をすることにした。


「なあ、結衣。俺……」


「ん?またお腹見てもらいたくなった?」


「は?」


 思わず反射的に言ってしまった。……何いってんだ。俺の腹筋ならもう十分過ぎるほど見ただろう。それに見られるほうだって案外大変、というか疲れるんだぞ?見ているだけの結衣には分からないだろうが。


「お、おい、勘弁してくれ……」


「あはは。冗談、冗談だって」


「ま、でもまた見せてね。私のお腹とかも見せてあげるから!」


「!!」


 いたずらっぽく笑って結衣が言う。……海に来てからこういうからかい?が増えているように感じるのは気のせいだろうか。


 それに、からかわれたらからかい返したくなるのが人間の本能というもの。ちょっとくらい、いいよな……?


「おう、時間はたっぷりあるしじっくり隅から隅まで見てやるから」


「え?」


「俺、結衣の水着姿とか結構楽しみにしてんだぞ?なんなら今ここで着替えてもらっても俺は別に……」


 俺も結衣と同じようにいたずらっぽく言ってみる。……今、傍から見たら俺結構悪い顔してんだろうな。


 結衣が他の人に見えていなくて良かったかもしれない。見えていたら、俺はただ女の子をからかって涙目にさせているろくでもない奴みたいに見られるかもしれないからな。……十分今でもろくでもない奴か。


 ……いや、結衣が見えて居ないなら今俺は他の人からは見えていない誰かをからかっている変な奴みたいに見られてるのか。……何か急に恥ずかしくなってきたな。


 それに、やり過ぎはかえって身を滅ぼすって言うし……覚えてないけどついさっき身をもって体感したような気がするからそろそろ謝るか。


「あー結衣、からかうようなこと言ってごめ……」


「〜〜っ!」


「あ、あのー……」


「ゆ、ゆ、ゆ、ゆーま君の…………バカぁぁぁぁ!!」


「ひ、ひいっ!」


 流石にからかいが過ぎてしまった。結衣がさっきよりも涙目になって震えている。こういう癖、本当に直さないとな……。


「あ、あの。結衣?」


「もう、でも私の水着姿楽しみなんだね……嬉しい」


「んん?」


 あれ、また何か雲行きが怪しくなってきたような……。


「私ももう我慢できないし……ここで着替えちゃおうかな……?」


「……!」


 結衣は涙目のまま俺を見ている。しかし、顔はいたずらっぽい顔に戻っている。おまけにセーラー服を右手の指で摘んでおり、服をゆらゆらと上下に動かしている。そしてそこからはおへそがチラリ、チラリと見え隠れしている。


「ちょっ!たんまたんま!!」


「悪かった!俺の負けだ!」


「えへへ、いいよ。もう、ゆーま君たら……」


「でも、水着姿、楽しみにしててね!」


 ……結衣にはかなわないなあ、完敗だ。どんな事があっても結衣と俺が勝負をすれば結衣が勝つように感じられる。その強さの秘密は生粋の天然か緻密な計算のおかげなのかは分からないけれど。


 ──このあともどんどん目的地へ向かって歩いていき、あと少しというところになった。あの出来事のあとも結衣の好きなことの話や知り合いの幽霊がいることとかで話は盛り上がった。


 目的地までの距離からしてあと話せる話題は一つといったところだろう。今しかない。俺はさっき結衣に言えなかったことを話すことにした。


「なあ、結衣。少し聞いてもらってもいいか」


「ん、なあに?そんな改まって……。いいよ」


 さっきとは違い、結衣も真剣に聞いてくれそうでちゃんと話せそうだ。


「俺が更衣室から着替えを終えて戻ってきて、結衣の着替える場所をさあ探そうってなったとき、結衣は俺を置いて先に走って探しに行こうとしただろ?」


「うん……。」


「そんな結衣の姿を見て俺、『変わらないな』って思ったんだ」


「……それがどうしたの?」


「変わらない、なんて思うのはその人のことをよく知ってるからじゃないか?」


「……それって」


「俺、結衣のことは心のどこかでは覚えているんだと思うんだ」


「……っ!」


「でも、俺は今どこか記憶がこんがらがっている。それは結衣が一番分かっているはずだ。」


「……」


「だから、だから……」


「俺、結衣のことを思い出せるように頑張るから……だから」


「俺とこれからも一緒に居てくれないか……?」


 やっとのことで振り出した言葉のあとに少しの沈黙が訪れる。恐る恐る結衣の顔を覗いて見ると涙を浮かべていた。ぼつぽつと数滴、ゆっくりと砂浜の上に落ちていく。


「……そんなの当たり前じゃない!私はゆーま君に恩返し、いや幸せになってもらうためにここに来たんだから!」


「でも嬉しいなあ……。心のどこか、奥底でも私のことを覚えててくれてるってことでしょ……?」


「私もゆーま君の支えになるから……」


「こちらこそ、これからもよろしくお願いします!」


 言い終わった結衣の顔には涙ともう一つ、笑顔があった。涙を拭ったあとに結衣がまた口を開く。


「いっっちばん大切なのは今を楽しむこと!そして目の前には海!」


「砂浜の端、つまりは目的地まであともう少し!」


 結衣の顔を見合わせお互いに頷く。そして俺は目的地を指さして言う。


「結衣、あそこまで走って行かないか?」


「いいけど……私足速いよ?ご存知の通り」


「ああ、知ってる。それでも頑張ってついて行ってみせるさ」


「そう、それじゃあ行く……」


 おい、流石に言い終わってから行けよ。って結衣に言っても無駄か。いろんな意味で。ハンデがある上に不意を突くように有利な相手の方が先に出てしまうというハンデも背負ってしまった。


 ……どんなハンデがあっても結局はついて行くのを頑張るしかないんだけどな。


「おい、結衣。待てって〜!」

最後まで読んでいただきありがとうございました!次回も読んでいただけると嬉しいです!

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