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戦う理由B

腕輪の怪物によって自身の付けられた呪縛から解き放たれる為に繫華街に戻った神代。しかし、がむしゃらに探しても脳裏に浮かぶ場所が見当たらず焦りが募っている中、エメルが彼の状況を受け止めとある事を思いつく。

 ダイタスの繁華街にひっそりと佇む地下でざっと30から50くらいの少年や少女でらしき肉塊が吊るされていた。その奥で「んんん!んんっ!!」と縫い付けられた音とカラカラカラ、、、と何か回すような音が鳴り響いていた。


「さぁて、これで頭を割りまちょおねぇ、、、」


「んんん!!んんー!!」


 少年は涙を流しながら口を針で縫い付けられており声を喘ぐことすらできない状態の中、目が決まっている男がなにやらかき氷機のような何かを少年の頭に挟みながらレバーの部分を時計回りさせている。その器具はレバーを回転する度に下から針のようなものと圧縮するような鉄の塊が少年の頭蓋骨を突き刺し、圧縮しだす。少年は藻掻き苦しみ、泣きながら助けを求めようとするが口をミシンの縫い目のように針で縫い付けられてしまっている為、声が出せない。その後、頭蓋骨にヒビが入り込み痙攣だけが残る状態になってしまった。男はそんな少年を見て、落胆とした表情で「あぁ、面白くない。」と少年の肉塊を吊るし上げてから使用した器具を少年が横たわっていたベッドに投げ捨てて隣の部屋へと向かっていった。


「さぁて、次の玩具はどれで遊ぼうかなぁ。」


 男は部屋の隅で怯えている数人の少年や少女に手を伸ばし、一人の腕を掴んだ。


 その一方で、、、


 (何処だ、何処にいるんだ!!この目障りな音を鳴らしているガキは何処にいるんだ!!)


 俺は「助けて」と脳内に鳴り響く声だけを頼りにこの光だけが幻想的な街中を駆け走りながら辺りを散らして見渡す。しかし辺りを見渡しても大量の人だかりがまるで波の濁流のように行き来しておりとどまっている集まりも鼠の食事をしているかのような状態でこの声の主が誰なのか分からない。すると後ろから背中をポンと叩かれ、(不意打ちか!?)と思いながら裏拳を噛ますと「ぐぅえ!」という声と共に何かが吹っ飛ぶ音が鳴り、背後を振り向くと鼻を押さえたエメルが俺を睨みながらこちらを見ていた。


「あのさぁ、ほんと、、、殴る事あるかな!?それにさぁ、、、」


「今それどころじゃねぇ!てめぇに構ってると気が散るんだよ!」


 俺は彼女を跳ね除ける為に睨み付ける。だが彼女は怯える様子もなく、そんな殺気めいた表情に彼女は手に胸を当てながら深く息を吸って吐き、目を据わらせながらこちらに向かって来た。


「、、、何があったのか説明してもらえる。今まで見てきたけど、さっきから何を焦っている訳なのか理解できない。」


「、、、」


 、、、うるせぇ。「すいません、理解不能でぇ~す。」なんか言ってる奴にさっきの説明をしたって理解するわけはねぇだろうが。第一にもしも理解してもらったとしてもどうせお前には罵倒の一つや二つが飛んでくるだけだ。意味がない。ましてや、、、


「もしかして、、、さっき言ってた“助けを求めてる場所”っていうのが関係してるの?」


「!!」


 俺は彼女にそう尋ねられると動揺を隠せなかった。何故なら、こいつは俺の事をさっぱり理解していないやつであり、罵倒と煽りをふんだんに行う奴だろうと踏んでいたからだ。すると彼女はその動揺とした俺の顔を見て自分の顔を手で覆ってしまったと言わんばかりのポーズをしていた。


「やらかしたぁ、、、という事はさ“助けて”と求めてる人々がいるってことが分かるって事でいいんだよね?」


「、、、そうだよ。」


「ふぅ~むぅ?じゃあ奥の手だね。あ、そんなことよりさ!私、お腹すいたからあそこの居酒屋で作戦会議をしよう!」


「は、なんで。」


「いいから付き合って。」


 エメルに押し込まれるように居酒屋の扉の中へと入っていく、居酒屋の中では厨房で客と酒をかわしながら盛り上がる店員の姿と微笑みながら何食わぬ顔で接客している中年の女性らしき人物が接客をしている。そんな中、彼女は「おひっさーん!!」と大声で手を振っていると盛り上がっていた店員がこちらを向いて目を大きく見開き彼女に手を振った。


「おぉ、エメちゃんじゃないか!!相変わらず制服のコスプレしてるなぁ!!」


「なはははは!!奥さん、大将焼き一丁で。」


「あいよー、エメルちゃん。」


「ちょ、冗談キツイぞ!!」


 、、、こいつら何だ?知り合いか?やけに馴れ馴れしいな。そう目を凝らしているとエメルが俺の手を思いっきり握りしめる。その合間に女将が何やら奥にいる客とひそひそ話をしており、大将が「奥の方、相席になるけど使いな!」と指を向け、奥をちらっと見るとそこには朗らかな地蔵の笑みとは裏腹の白髪ロングヘアーゴリラが一升瓶の酒をグラスに注ぎながらカランカランとまるで自身のビジュアルは完璧だと思っているが恋人が出来ない事にうんざりしているかのように溜息を一つや二つ吐きながら佇んでいた。


「あら、エメルと新月じゃない。」


「なんであんたがいるんだよ、、、」


「ここ秋姉の行きつけの場所。私は見た目上あんまりいかないんだけどね。」


 エメルが俺の耳に小言を言うと秋音は「なにいってるの?」と満面の笑みでこちらに語りかけてくるためエメルも身を震わせて「な、なんでもございません!!」とまるで軍隊の敬礼のように胸を張って立ちながら答える。そんな彼女を見ながら斜めに構え、手を組みながら俺達に物柔らかそう表情で見つめるが同時に怪訝も感じられる雰囲気を醸し出していた。


「で、要件は?」


「秋姉の能力。」


「手掛かりは?」


 秋音が頬に手を付けながら、情報を求めるかのように手を差し伸べるとエメルは俺に指を差す。すると彼女は溜息を付きながら差し伸べた手が3という数字に変わった。


「3万。」


「アイアイさー!!」


 彼女達が俺を置き去りにしながら話が進んでいき、俺はいきなりエメルの重力操作の能力を使って椅子に座らせられ、秋音はその隣で前に俺の顔面をぶつけたブラウン管テレビをどこからともなく一台取り出す。(それよりもどうやって取り出したんだ。椅子の後ろから出てきたように見えたが明らかにその位置からでは隠せない場所から出て来たぞ。)と彼女の顔を目で凝らしながら見ているといきなり頭に何かを掛けさせられた。


「うわ、これなんだよ。てか、エメル放せよ。」


「や、だ、ね!」


「はいはい、大人しくしててね。あと、これはねヘッドホンよ。」


「ヘッドホン?」


「えぇ、耳に音が流れ込む機材なの。まぁ、、、私のは~違うんだけどねぇ。」


 これほど当てにならない「違うんだけどねぇ。」は聞いたこと無いのだが。耳に音が流れる道具ではないとするのであれば一体こいつは何を流す道具なんだよ。


「あ~これはね。あなたが思っている思考をこのブラウン管テレビに映し出すの。で、これであなたが脳内にある映像を投影する訳ね。それよりも私ってそんなに新月から信頼されてないの?」


「!?」


 驚いた、、、彼女がヘッドホンを俺の頭に掛けた途端に突如、ブラウン管テレビから俺の思考が文字として出力され、それが映像として流れて来たのだ。どういう原理だ?いや、そんなことよりもまずは俺の悪夢である忌々しきあの音を止ますことが先だ。俺は必死に先程流れた“助けられなかった少年と少女”の映像を再度思い出す。するとテレビからノイズが走り鉈を持った何者かと怯えている目が棒線になった少年少女が映し出された。


「、、、これね」


「フェイクじゃ、、、ないんだよね、、、?」


 秋音はまじまじと映像を眺めつつ、エメルは冗談だよねと嘘であってほしそうな顔で俺の顔を眺めるが、怪物の証言道理であればこれは間違いなく行われた無惨な死である。俺達は何か手掛かりが無いかとまじまじと眺めていると近くに座っていた酔っぱらいの男がどうやらこの映像に気に掛かったそうで映像に口出しをしてきた。


「おーい、秋姉さんたち。これさぁ、マグニファイデビルだろ?」


「「「マグニファイデビル?」」」


 俺達はそのおっさんから意味の分からない単語を聞かれて首を傾げた。するとおっさんはそんなのお構いなしになにやら熱く語り出した。


「おう、俺ホラー映画好きでな。黄色いガスの中で少年少女たちが体中拷問器具塗れの殺人鬼によって無惨に殺されるシーンがあるんだよな。この子たちの迫真の演技が最高でさ!!何度も見れちまうのよ!でもなぁ、少年少女の役名が無いし、巻き戻してもコマ送りしても顔がノイズ塗れで顔が分かんねぇのよ。そこが残念なんだよなぁ、、、」


 、、、演技、役名?何言ってんだ?こいつは。これは実際に起きた映像だぞ?なのに映画の演出であると思ってるのか?しかも映像はノイズ塗れではなく目に黒い棒が付いているだけだぞ?


「、、、どうやらその殺人鬼に殺された人物はその映画役者として置き換えられてるっぽいね。しかもやっぱり、、、」


「生者は存在を抹消されているからノイズで顔の処理を行われているって訳よね。秋姉。」


「、、、なるほど胸糞悪いな。」


 被害が増えればこの映画の被害者役として増えていくという事だ。何とかしてこいつを見つけ出して始末しないとこの悪夢が終わらないっていう事でもあるんだ、、、どうすれば、、、どうすれば、、、!!俺は落ち着けなりエメルに拘束されている椅子から何とか離れようと藻掻いていると秋音が何か気付いたかのように「あ!!」大きな声を上げ、どこか一点を凝視する。それと同時に俺も驚いて彼女の顔面に急いで振り向く。すると彼女が映像に映っているクマの頭に指を差した。


「このクマ、、、繁華街でも悪名高いお菓子屋ハッピーデミーハッピーの着ぐるみじゃない?」


「ハッピーデミーハッピーかぁ、、、」

「ハッピーデミーハッピー?」


 俺は彼女が言う事が良く分からなかったが、エメルはどうやらその名前を聞いて急にどんよりと落ち込んだ。しかも先程のおっさんに再度、火が付いたのか鼻息を荒くして熱く語りだし、今度は俺達の顔を割って入って来た。その顔は油ものに蓋をした後に水をぶっかけて大炎上してるかのように興奮している顔であった。


「お目が高いね、秋姉さんよ!そうなんだよ!マグニファイデビルの撮影地は噂によるとこの繁華街のスラムに店構えしているハッピーデミーハッピーの地下でやってるという説が大きいんだよ!!現にファンがハッピーデミーハッピーの前でこの作品に出てくる“クマの着ぐるみ”がハッピーデミーハッピーの前でよく立ってい、、、」


「なげえよおっさん。」


「ごめんそう熱く語られると辛い、、、」


 おっさんの高揚にそろそろ俺達も痺れを切らし、冷たく投げ返す。おっさんは少しその高揚が覚めたのか「す、すまない、、、しかし若いお嬢さん2人に言われると心に来るな。」とシュンとなりながら席に戻って酒を飲み、語り相手を漁さっていた。だがこのおっさんのおかげで二つ分かった事がある。一つは拷問の怪物である事、そして奴はハッピーデミーハッピーというお菓子屋に今もいてるであろうという事だ。その事を踏まえてエメルと俺は早速、そのお菓子屋に目指すことにした。が、急に秋音から肩を叩かれ、なんだ?と振り向くと笑顔で何か紙切れを渡してきた。


「はいこれ請求書。あと今月の家賃。」


「へ?」


「私は仕事をしたから、後できっちり働いて返してねぇ~」


 顔がポカーンとしている俺に対して彼女はレジ前で気前よく札束を置いて手を振りながらホテルへと戻って行ったのであった。


理5

死者によって殺された人間の存在は抹消されるが別の事象として置き換えられている事がある。身元不明の不審死、映画での役者不明の登場人物、突然の消息不明。これらは全て本来、アリンゲや死人によって殺された事象である。

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