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戦う理由 A

彼女(彼)は助けてという声を聞いて夜の街に駆けだすがそこであったのは報われない現実であった。

 第4話 戦う理由 A


 喧騒が止まない街中。ダッフルコートで着飾った女はフードを風に靡かせながらビルの上で高みの見物をする。後ろから「おーい!」と呼びかける声が聞こえるが彼女にはそんな声は聞こえておらず脳内に響く、「助けて」という声によって支配されてしまっていた。


「ねぇ、神代!どこに向かうのさ!!」


「、、、」


「ねぇ!!」


 俺は手を耳に当てて今にもどうにか頭がおかしくなりそうであったが、彼女に肩を掴まれたことでハッとし、正気を取り戻した。いや、正確には正気を取り戻したわけではない。ただ意識が彼女の方に向いたんだ。


「あぁ、お前か。どうした。」


「どこに向かうのか聞いてんの!!」


「、、、助けを求めてる場所。」


「ゴメン、イミワカンネ。」


 そりゃそうだろうな。俺にしか声が聞こえないはずの音にこいつが気付くはずがない。ましてやそう答えると少し頭の可笑しい何かを眺めるかのようにハテナマークをジェスチャーしてくる、、、うぜぇ。よし、やっぱこいつもう一発殴っておくか。


「おら行くぞ。」


「、、、あのさぁ。人が気にかけてんのにアッパーするってんのはあり得ないんじゃないかなぁ!!」


「おめぇ、もう人じゃねぇだろ。」


「こいつ、、、あとでぜってぇぶっ殺す!!」


 俺がビルの上から街中へと飛び降りると彼女も、、、おぉ怖い、怖い。恋人の浮気現場を見て激昂している彼女の如く迫ってきているではありませんか。うん、これ死ぬ。絶対に殺される。てか、もう口に宣言してやがる。そう余裕で彼女の顔面を見ていると地面がアスファルトである事に気付かず、直でグシャァ!!っという如何にも痛そうな音を鳴りながらぶつかった。


「着地失敗してやんの。」


「いてて、、、うるせぇな。てめぇがそういう顔をしなければ、、、」


 彼女は嘲笑いながら俺の無惨な姿を貶し、俺は次第に再生していく顔面と共に指を差して反論する。すると彼女は溜息混じりに呟いた。


「責任転嫁だね。ん?あぁ責任もって君の嫁に行けばいいのかな?じゃあ優しくしてね、、、」


「誰がするか、この落下中般若ガオーン。」


 俺が澄ました顔でそう罵倒をすると彼女は般若顔から暗黒に染まったかのようなおかめの仮面のような表情で俺に近付き、そして、、、


 ※しばらくお待ちください

 “グシャ!ボキッ!ブォン!ヒュードゴン!バキィ!!”


「あぁ、すっきりしたぁ!!顔の整形してみたんだけどどうかな?」


「誰がこんなモザイク塗れの顔面にしろって言ったんだよ、てめーはよ!!」


 人で絶対になってはいけないあらゆる擬音が顔の隅々から鳴り響く。っていうか今、変な花のテロップだしきものと明らかに顔から鳴らないような音が鳴らなかったか?いやいや、それよりも彼女のあの忌々しいくらいの清々しい顔に対して俺の顔面に他人のゲロを吐かれたかのようなモザイク処理を施されたような顔面にされたツケは返さねぇと俺の怒りは収まらねぇ!!こいつの首を掴んで窒息させてやる!!と彼女に手を伸ばした瞬間、彼女もそれに気付き互いに力合わせをする力士のような構図になり、そのガヤ騒ぎに周りの人々もぞろぞろと集まり始めた。


「いくらなんでも攻撃的すぎないかなぁ!?君!」


「それはテメ―もだろうが!!」


「「うぎぎぎぎぎ!!」」


「はいはい、そこまでだ。」


 そう小競り合いが激しくなっていきとうとう収集が付かなくなってきた時にぞろぞろ集まりだした群衆の中から茶色いトレンチコートの男がなにやらパスポートらしきものをもって手を叩きながらこちらへと向かって来た。


「君たちが何で揉めてるかは分からないがこれ以上、揉め事を起こすのであれば”綺麗な箱庭計画”に仇名すものとして粛正することになる。」


「綺麗な、、、」


「あぁすいません!!すぐにここから立ち去るんですいませんねー!!」


 エメルは彼の姿を見た途端に隠し事をするように立ち退くカフェの客のように俺を引き吊りながらここから立ち去る。一体なぜだ?なぜなんだ?しかも彼女の顔には如何にも不味い、まずい!っという焦りの表情がこれほどかというまでに滲み出ていた。


「あっぶねぇ、、、危うく消されるところだった、、、」


 少し町から外れた車だけが行き交う橋の上で俺は引きずられた手をスナップしながらちゃんと動くのを確認する。一方、彼女は全速力で走ったからか息切れを起こしており少し呼吸を整えている。そんなのお構いなしに俺は一つ尋ねた。


「あいつはなんだ。」


「あぁ、あれは次元統率機構ギルドの役人さんだよ。」


「次元統率機構?」


 俺は聞きなれない単語ばかりで疑問でしかなく首を傾げる。すると人差し指を立てて説明を始めた。


「次元統率機構っていうのはこの世界と、上の世界の治安を守る組織でいわば警察。あぁ、君の世界では警察っていう概念がもう無いんだとしたら村を守っていた入口の守り人と思えば行けるよ。」


「あぁ、つまりはあれだな。噛ませ犬。」


「うん違う。ていうかあれそういう認識なんだ、、、つまりは悪い人とかこの場所で危害起こしそうなことをするなら容赦しねぇぞ!!っていう奴らだよ。」


「ふーん。で、あいつらが言ってた綺麗な箱庭計画って何さ。」


「簡単に説明すると、”この世界にそぐわないやつはみんな死ね!”という法律。」


「気に食わないと処刑かよ。」


 耳をほじくりながら聞いてると処刑だとか治安だとかこの国の独裁が酷い事が見て取れる。まぁ、そんなもんか。どこでも権力を持った奴が調子に乗っていつしか破滅する。まぁ、この法律を作った奴もいつしか反感買って殺されるんだろうな。そう浮ついた空を見上げていたら彼女が胸倉を掴んできた。


「あのさぁ、一つ言わせてもらうけど。君、人の前では言葉が通じないからね。」


「どういうことだ。」


 彼女は俺の言葉に胸倉を離して頭を抱えながらこちらを見つめながら困りだした。


「あぁ、なんて説明すればいいか。言ってしまえば死人には認識の齟齬が起こっていて人間には言葉が通じないんだよ。つまりいうと、外国人が英語を平然と相手が分かってる体で話してるけど相手は英語を話せないから理解できていない異国の言葉が聞こえてくるし、逆に英語が分かるやつに対して平然と話せば会話できるでしょ。」


「ちょっと待て。だったら言葉が通じる奴ならアリンゲってことでいいんだよな。」


「あぁ半分違うけど、、、そうだね。」


「で、どうやったら人間に言葉を伝えられるんだ。」


「君さ脈絡って知ってる?まぁとりあえず猫が作った薬。ランゲ―ジF100っていう薬を飲めば人と会話する事は一時的に可能だよ。ほれ一セット。」


 彼女は煙草を分け合う見知らぬ人のように錠剤の詰まったパッケージを一つ手渡す。俺はそれをバシッっと掴み取るようにし、ズボンのポケットの中にスッと入れ込む。すると異音のようなノイズが段々と近づいてきて、、、


(助けて、、、!!助けて!!もう無理、、、いやだぁ!!!)


 と耳をつんざくような音が脳内で鳴り響く。それと同時に脳内で少年が無惨に泣きながら鉈のような何かで切り刻まれる映像や少女の口から内臓やありとあらゆるものが引きずられる映像が脳内で赤いスクリーンセーバーに覆われた状態で映し出される。俺はその負荷に耐えきれず耳を塞いで地面でバタバタと藻掻き出した。


「ぐっ、、、あぁ、、、!!」


「いきなりどうしたの!?」


 今、ようやく確信した、、、この音は敵が今どういう事を行っているか、もしも救えなかった時にどうなるか教えるための警告(アラート)だってことに、、、!こんな感覚共有はもう嫌だ。地獄をぶり返すような映し鏡はもう見たくない!!


(おぉ、ようやく確信した。)


(てめぇのせいか!!)


 奥でひっそりと自信満々のように如何にも説明しようみたいな感じで鼻息を荒くしながら腕輪の怪物が脳内にある暗闇の中から現れた。


(すまない、腕輪を付けた時の能力でね。狂人君には戦ってもらいたいからさ、自身の一番嫌な言葉と声が対象の襲われてる時に脳内で鳴り響くようにしているのだ!!)


  (対象って、、、)


(あぁ、君の場合は救えなかった少年、少女。つまりは精神的に成熟してない子供たちだね。まぁ怪物になった子供には効力はないようだが、、、まぁ境界線があやふやだな。)


(ふざけんな!!)


(しかもしかもさぁ~敵が近ければ近い程、その声は大きくなって救えなかった場合は今みたいに大音量で映像も付いて来るのだよ!!)


 今、怪物から屈託もなく流れ星でも降り注がれるかのような満面の笑みから聞きたくないようなセリフが俺の心臓を矢で貫かれるように突き刺した。じゃあさっきのって、、、もしもじゃなくて、、、嫌だ。考えたくない、、、想像もしたくない!!こんな悪夢が垂れ流しに流れるとか正気の沙汰じゃない。心が壊れるのも時間の問題だ!どうする、いや、、、

なら、やる事は一つしかない。

何がお前は誰も救えないだ。

何が悪夢だ。

ふざけんな。

襲ってる奴を全て消せば解決じゃねぇか。

だったら、、、

(戦ってやるよ、、、)


(お、いいn)


(だがてめぇの見世物(人形)じゃねぇ!俺は俺のために戦って、それで誰かを救えるのならその為にも戦う!!)


(綺麗事で俺なりに言い換えれば「誰かの明日のために俺は戦う!」っていうとこか。いいね、正義のヒーローっぽい!!頑張れよー!!)


 俺は腕輪の怪物に指を差して絶対に救うという決意をし、腕輪の怪物は物凄く興味の湧いたかのように前のめりになり無邪気な子供のように喜んで消えていく。この時に頭の中でぶり返す「お前は誰も救えない」という映像に対しての恐怖心は消えていき、寧ろ受け入れたことによって怒りだけが残った。いずれ脳内の暗闇が朝日の日を浴びるように開けていき目の前にはエメルが心配するようにこちらを見つめており、同時に「助けて」という声がまた聞こえる。


「あ、ようやく起きた!」


「エメル、行くぞ。」


「お、ようやくあだ名で呼んでくれ、、、」


「急ぐぞ。あとさっきはすまなかった。」


「は?え!?ちょ、、、!?もう急になんなんだよ!!」


 彼女の困惑した顔を横目にし、俺は着崩れたダッフルコートを整えて先程の街へと向かった。


理4

腕輪を身につけると自身の嫌いな言葉が声が脳内に響き渡る。

それによって心を壊したものは計り知れない。

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