天国の採用基準は見直した方がいい
半月に一度のペースになりそうです。
読んでくれた方、ブクマしてくれた方、ありがとうございます!
天国と地上では時間の流れが違う。
天国の時間は、”早くて遅い”。
何を言っているかって?
ここは、1日の流れが早く、年月が経つのがとてつもなく遅いのだ。
なんというか…某国民的アニメの時空のように、ある時期になると年月が戻る。
かといって、年を取らないわけではないのだが、取ろうと思えば取れるし、嫌だと思えば年を取らずに済む。
ここで働くかみさま達は大体死んだときの年齢のままだ。
年を取ろうと思うのは少年課にいる子供たちくらい。
だから、基本的に年を取るという感覚もない。
強いて言うならば、死者の没年を見て、
「あぁ。もうそんなに経ってんのか。」
と思うくらいだ。
そして、今日も桜の咲く中庭を見て、またそう思った。
私が死んだのは大学の卒業式、22歳の3月だった。
「今日でもう卒業か~。」
「早いよね~。」
中学から一緒の親友と帰っていた。
「ねぇ詩歌、ほんとに打ち上げ出なくてよかったの?」
「ん~まぁ、出てもよかったんだけどさ、明日からキャンプだから。」
「あんたの”それ”はキャンプって言わないよ。あれはサバイバル。」
「一応キャンプセット持ってくけど?怜も行く?」
「行かないよ!遭難したくない。」
「失敬な。遭難はしないよ。ちょっと連絡の取れないところに行くだけ。」
「それを世では遭難っていうの!」
そんな話をしながら横断歩道を渡っていると、いきなり鋭いブレーキ音が聞こえた。
「___怜!!」
どこか遠くで、ドン!!と鈍い音が鳴った気がした。
気づけば、役所のような場所にいた。
「え…ここどこ?」
ところが驚いている間もなくあれよあれよと別室に案内された。
「白くね?」
「初めて見たぞ、ここ来てそんな事言う人。」
気づけば目の前に1人の男の人がいた。
「ぬおおお!!!??」
「おおおお!!??」
男の喉元に手刀を向ける。
「け、気配を消さないでください!!」
「いや、神様だぞ!?気配も何もあるか!」
神様という言葉を聞いて慌てて手刀を下ろし、頭を下げた。
「申し訳ございませんっっっっっっ!!!!!!」
つか土下座した。
「あ~別にいいが…。とりあえず、土下座をやめてくれ。」
「はい!」
「あ~…君は今の状況を理解しているかな?」
「えっと、確かトラックに轢かれたんですよね?」
思い出すのは迫りくるトラックと鈍い音。
「そうだ。だが、、、申し訳ない。こちら側のミスだったんだ。」
「はい?」
目の前で申し訳無さそうに体を縮こませる神様。
「いや…君のそばにいたもうひとりの彼女が死ぬ予定だったんだが…。何かが狂って君も死んでしまったんだ…。」
「つまり…死ぬ予定ではなかった、と?」
「あぁ。お詫びと言ってはなんだが、来世でそれなりの特典はつけるつもりだ。どこに行きたいか?」
クリップボードを手に持った神様を見て首をかしげる。
「いや…どこに行きたい、とは?」
「転生先だ。何か好きなアニメや漫画の世界でもいいし、異世界で魔法使いになるでもいい。何かないか?」
「えぇ…急に言われてもわかりません。そちらで決めて結構です…。」
「それが一番困るんだが…。う~ん…。」
なんか悩みだしたよこの神様。
「あ、お茶どうです?」
「ありがとうございます~。」
「う~ん…。」
「あ、その計算ここ違ってますよ。」
「本当だ!ありがとー!」
「いや…ここよりこっち?」
「それ運ぶの手伝いましょうか?」
「いいの!?じゃあこっちにおねがい!」
「だが…。」
「これどうしましょう。」
「あ、それはそこのファイルに入れといて。」
「…何してるんだ?」
「何って…暇なんでお手伝いです。」
「採用!!」
「何が!?」
思わず神様にツッコミを入れてしまった。
「なるほど…つまりここ、天国で働いてみないか、と…。」
「あぁ。振り分け困難者でも大体はここに入る。まぁ、君のような例は稀だが…どうだ?」
「別にいいですけど…。」
「よし!あぁ、宮田くん、彼女の案内と教育係よろしく。」
「はい!じゃあ森山さん、行きましょうか。」
「よ、よろしくお願いします。」
私、森山詩歌。
大学の卒業式の日に死亡し、天国現世日本支部転生課に就職しました。
…一応、前世で大手企業に内定貰ってたのにな。
昔のことをつらつらと思い返していたら、同僚がやってきた。
「森山さん、この書類確認お願いできる?」
「え?三浦さんは?」
三浦さんは天世課でも古参で私の上司だ。
故に書類の確認作業は彼の仕事なのだが…。
「あー…失踪しました。」
「またかよ!!!」
一応、優秀なのだ。…優秀なはずだ。
ただちょっと、いや大分サボり魔なだけで。
仕事が山積みになるとすぐどっか行ってしまう。
今回もその口だろう。
「山か川か…。」
本人はサバイバルが好きだからどこにでも行く。
つまり、広くて人が少ない天国では探しようがないのだ。
だから、探しに行く暇もないため、必然的に私に皺寄せがくる。
「わかった、やっとくよ。…今度パンケーキ奢ってもらうぞ、あの上司。」
ため息をつきながら書類をさばき始めた。
~今日の日誌~
今日は桜が見事に咲いていました。
それはともかく、パンケーキは○○カフェの一番豪華なのが食べたいなぁ(ちらり)。