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天世課の仕事と、私の仕事、ときどき焼き鳥

天世課の朝は早い。


地上世界での朝7時くらいには仕事が始まる。


「おはよーございます。」


「森山さぁぁぁぁん…。助けてください…。」


たった1人の後輩、井口くんがゾンビのような顔でやってくる。


…これはまた徹夜したな。


今日で確か4徹じゃない?


「どうしたの?」


「いえ…昨日までのは終わったんですけど…夜間にやってきた人の中に


『振り分け困難者』がいまして…。」


振り分け困難者。


それは、転生先がうまく決まらない死者のことだ。


大体が、どこに行きたいか言ってくるが、そうでない場合は神様が決める。


だがしかし、神様だって全知全能ではないのだ。


故に、1万人に1人くらいの確率で起こる。


「何?決められないなら就職させればいいじゃん。」


そして、その1人は大体天国に就職となる。


「いえ…希望はあるんです。」


「?合致するところがないの?」


ちょっと貸して、と手に持っていた用紙を見る。


「え~っと…、チートで無双できて、かっこいい子とかいっぱいいるところで、


それでいて争そいはNG…あるかこんなとこ。」


思わず呆れて声が出る。


そもそも、チートで無双したいんならもっとハードなとこ行けよ。


「それを説明はしたんですけど…。」


「ダメだったわけね…。わかった。今日行く視察先合うか見てくる。」


「ありがとうございます!」








天国現世日本支部には、沢山の課がある。


少年課、神秘課、庶務課…。


私に知り合いがいるのは、この3つぐらいだが、他にもある。


有名所だと空想課や生物課。


だが、私の務める転生課が1番人が多い。


天国現世日本支部転生課_略して天世課には、部がいくつかある。


・アニメ、漫画部


・異世界部


・逆行部


・闇部


そして、1つの課に4つの部があるのは天世課しかない。


故に1番人が多く、支部の4割は天世課のかみさまだ。


そんな天世課での仕事は多岐に渡る。


死者への転生先の紹介、選択。


異世界へなら一々報告書を作成してそれを転生先の天国に送らねばならない。(逆もまた然り)


そして、ステータスの調節やかんたんに死なないような補正…。


やることは山積み。


だけど、人では足りない。


地上世界で言ったらブラックである。


いや、地上世界じゃなくてもブラック。


2徹3徹は当たり前だ。


もうやだ…。


パンケーキ食べたい…。


「森山!」


「はい!」


神様に呼ばれ、一旦報告書の作成を後にする。


さぁて、お仕事の時間だ。




_________________________




「森山、準備はいいか?」


「はい。」


電気がなく、神様の持つ蝋燭だけが光源の部屋。


部屋の真ん中に立ち、1つ頷くと、床の魔法陣が光った。


「では、いってきます。」


「気をつけてな。」


視界が白い霞で覆われ、ふわりと体が浮いた。


瞬間。


体がガクン、と落ちていく。


あぁ、やっぱりこの感覚には慣れない。






目を開けると、人のざわめきが聞こえた。


まず、周囲の状況と自分の姿を確認する。


降り立った場所はどこかの裏通り。恐らく市場か何かが近いのだろう。


今、私が来ている服は主婦が着るようなワンピースに


エプロンを付けている。


「見た感じ…中世かな?」


とりあえず、ざわめきの方に向かった。






私は他のかみさまとは少しだけ違う仕事をしている。


それが、転生先の視察。


衣食住が整っているのか。


レベルはどれくらいか。


そういうことを調べて神様に報告する。


それが私の仕事だ。














ざわめきの正体、市場には活気があった。


ちょうど昼過ぎぐらいだからか。


屋台が多く開かれており、その中の一つに向かう。


お、イケメンだ。




「お兄さん、焼き鳥1つ。」


「はいよ!」




焼き鳥を受け取り、ふーふーと冷ましてから口に運ぶ。


「ん、おいし。」


食べながらあたりを見渡し、ノートに気づいた点を書きこんでいく。


子供が多いし、看板に書かれているのはちゃんとした文字。




(日本語ではないのだが、かみさま特権でどんな言語も読めるのだ。)


識字率は高そうだ。


と、すれば。


少し市場から離れて見通しのよさそうな建物を見つけ、上階へ向かう。


「やっぱりあった。」


離れたところに城壁が見える。


そして、その向こうには大きな城がそびえ立っている。


「領主制…かな?___ん?」


私がいる建物の階下で何かすすり泣くような声がする。


気になり、こっそりと見に行くと、そこには2人の女の人がいた。


「もうあの薬もないよ…。」


「薬師さんが死んじまってから誰も薬を売ってくれない…。お貴族様達はひどいもんだ…。」




その言葉を聞いて思い出したのは先程の死者の履歴。




「__薬学部卒業だったよね?」






慌てて森に向かうと、それらしき薬草はたっぷりある。


これなら上手くいくかもしれない。


そう思い、今度は城付近に向かう。




城壁の前にいる警備は2人。




気配を殺して、こっそりと城内に忍び込み、様子を探る。




「うん。条件には合うな。」




警備の人数が少ないということは、それなりに平和な世界線なのだろう。




街中に向かい、目当ての店を探す。






「あった、、。」




組合を発見し、そこを見に行くと、依頼内容は魔物退治が多いようだ。




これなら薬が欲しい人も多いだろう。




仕事には困らない。




「ん~…でも、戸籍がけっこうゆるゆるだなぁ。」




戸籍がしっかりしてないということは生まれてから死ぬ子供が多いんだろう。




それに、こういうちょっと平和な世界で子供が異様な知恵を持っていたら疎まれる可能性も高い。




貴族がいるらしいからそこも心配だ。




「トリップ…かな?」




これなら、体が大きくなっていたほうが有利だろう。




そこまで調べて、少し満足してからもう一度市場の屋台に向かった。




「お兄さん、焼き鳥2本頂戴。」




「まいど!」






うん、やっぱりおいしい。


そしてイケメンだ。






_________________________






「井口くん。これ、さっきの振り分け困難者にあってそうだったよ。」




「本当ですか!!?」




「うん、ステータスに少し安全補正とギフト補正かけといて。」




安全補正は、危険なことに直接関わらないこと。


まぁ、大きく言えば簡単に死なないような補正。


ギフト補正は、この場合は必要のあるものが手に入ったり、手に入るタイミングを調節するものだ。




「ありがとうございました!」




「いいよ、じゃあ私書類終えたから退勤するね~。」




「お疲れさまでした!」






夜勤の人とすれ違いながら宿舎に戻る。








今日もかみさまは忙しいです。










~今日の日誌~




焼き鳥は塩が効いていて美味しかったです。


あの転生者さん、大豆あったから醤油作ってくれないかなと思いました。











後書き

読んでくださりありがとうございます。




さて…次はいつになるやら…。




これからも読んでくだされば嬉しいです!



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