ウサギと獅子①
ハーツ・ライオンのモデルはクリス・ジェリコ(ライオン・ハート、ライオン道)
ハワイから帰国した普段と変わらぬ日常に戻る。
もっとマスコミに追われたり会社にファンが集まったり色々騒動があるかと思ったが賢太郎が上手いことやってくれたようで何事もなかった。
次の試合は未定。
プロレスのスケジュールに関してはフランクが担当しているので彼が語らない限り何もわからないのが現状だ。
エイプリルフールにデビューして数日後にはハワイアンクルーザー級トーナメントに出場。
結果は準優勝でベルトは獲得出来なかったが勢いでヘビー級王座を獲得し、1日4試合とハードな経験をしたからしばらくは休息で良いと考えてる。
4月の後半にはZIPANGプロレスの次期シリーズ『ゴールドどんたくへの道』を全戦観戦を予定していて、ついでにプロレスツアーを体験するため観光バスもチャーターしている。
もちろん動画の企画だ。
いつものランニングを終わらすとトレーニング棟に向う。
入口を開けるとカメラが作動していたが特に気にしない、もう日常になっているからね。
ただニーナがドッキリを仕掛けるんじゃないかと警戒はした。
婚約後2人で話し合い悪質なドッキリは控えようとなっり、どうせするなら2人でドッキリをしようとなったのだが安心は出来ない。
すでにアイがいて
「おはようアイ」
「パパおはようございます」
「今日は先越されたな(笑)」
「アタシねパパの試合観て真剣にプロレスデビューしようと考えて気合い入っているんだ!」
「マジで?ヤル気あるなら止めはしないけど危険が伴うから親御さんの許可は取るんだぞ?」
「それは大丈夫!許しは貰ったしパパとミックスドタッグ出来るくらいになりなさいと言われた(笑)」
「それは楽しみ♪だけどフランクには言うなよ。
言ったら明日にでもカード組みそうだから」
「コーチならやりかねないね♪」
ちなみにフランクはこの場に居ない。
飛行機嫌いなのにハワイの往復したから体調を悪くしたそうだ。
「ニーナちゃんは?」
「実家に帰ってるよ
今夜婚約の挨拶するから準備するんだって」
「準備ってなにするの?」
「親の手伝いで料理とか掃除じゃないの?」
「全くイメージ出来ないけどニーナちゃん料理出来るの?」
「掃除洗濯はしてもらったことあるから安心だけど……焼肉屋で肉を焼いてもらった事しか無いような 」
「それって大丈夫なの?」
「例え料理出来なくてもニーナはニーナだし配達とか外食でも俺は一向に構わないよ。
幸いお金あるし(笑)」
動画職人、会社立ち上げ当初は一気に資金が減ったが動画が好調で元は今年中に取り戻しできそうだ。
世間話しながらストレッチしていると内線からアイが呼び出される。
「なんか急にクライアントさんがやって来てアタシと話したいみたいだよ」
「トレーニングあるから急な仕事は午前に入れない事になっているのに珍しいな……俺も行くか?」
「クライアントさん通勤途中に寄ったみたいで1度会ってみたいって話みたい。
社長のパパが来ると挨拶で終わらなくなるから来なくて良いんだって」
「……ドッキリ臭く感じるの俺だけ?」
「ニーナちゃんは実家何でしょ?」
「アイツはドッキリに命掛けているところあるしな……」
「でも約束したんでしょ?婚約者を信じないと!」
「それもそうか……」
少し釈然としなかったがニーナを信じアイを見送った。
その10数分後不意打ちでコールドブレイカーを喰らう俺がいた。
かなりの使い手が技を仕掛けた様でかなりのダメージを受けてしまった。
ようやく回復したところで顔を上げると俺の顔の形アップを撮影しているアイ、その後ろにはハーツ・ライオンがいた。
「よぉ!フックの弟子、オレサマは……」
ライオンが喋っている途中だが抱きついた。
「スーパースターに会えて嬉しい気持ちはわかるが男にハグされても嬉しくねぇ!」
泣きながら
「ずっと会いたかった!プロレスラーになった事を直接伝えたかった!」
ライオンは混乱しながらも背中を擦りながら落ち着くのを待ってくれた。
「で、どういう事だ!?」
「覚えていないと思いますが四半世紀以上前にライオンさんとは出会っているんです!」
★☆★☆★
俺がボク時代の13歳の頃プロレス雑誌で若き日のハーツ・ライオンのインタビュー記事を読んでいた。
彼は学生時代はロックバンドを組んで活躍、プロデビューの話が来るほどだった。
バンドと同時にプロレスラーデビューもはたしていて悩んだ結果レスラーを選んだ。
バンド活動は辞めたが音楽が嫌いになったわけではなく休日には中古レコード屋巡りをしていると記事にあった。
昔からZIPANGプロレスのファンだったが当時抗争していた『ツイン・ドラゴン』も好きで特にイケメンで華麗な空中殺法も出来るライオンが好きだった。
記事を読み進めると解散した米国でカルト的人気のデスメタルバンド『ダーク・メネシス』の熱狂的ファンらしく日本で手に入れたい物があると書かれていた。
それは超マイナーな日本のロック雑誌でダーク・メネシスのインタビュー記事がある号。
このバンドは世界各国でインタビューを受けた事無い事で有名らしく、この雑誌が唯一だそうだ。
その記事を読んでロック雑誌1冊持っていたなと思い出し確認すると正にビンゴだった!
表紙が気に入って衝動買いしてあったのだ。
俺はライオンが喜ぶと思いプロレス雑誌に書いてある団体の住所へ向かった。
運が良い事にライオンは会社にいて雑誌をプレゼントすると感激してくれてプロレスラー御用達のステーキハウスでご馳走してくれることになったのだ。
その時ボクはレスラーになって貴方に再会してタッグを組んでチャンピオンになるとか恥ずかしい事を延々とレフリー兼通訳の山野さんに話したのを覚えている(笑)
別れ際
「トビオ少年、この雜誌はどんな手段を使っても手に入れたいと願っていたものなんだ。
ステーキを御馳走したけどこんな事で俺の気持ちは収まらない。
大人になったらプロレスラーになって無くても俺に会いに来い!
世界広しとはいえ俺に貸しあるのはトビオ少年ただ1人だ」
★☆★☆★
昔話をライオンにした。
「トビオ少年!!」
今度はライオンがハグして涙ぐんだ。
再び涙が出てきて
「忙しい中、日本に来たかいがあったぜ!」
「何をしに?」
「ハワイアンのPPVを観ててボーイもバニー✕ばにーも素晴らしかったから1度会いたいと懐ったんだ」
「わざわざPPV観てくれたんですか?」
「そりゃあ観るだろ、オレサマがブッキングしたんだしな」
「えっ?」
「フックは話してないのか?
奴はブランクが長くプロレス界と疎遠だったかボーイが経験を積めそうなトーナメントを探してくれと頼まれたんだ」
「奴が業界に戻るのは歓迎だったしまさかトビーがボーイとは世間は狭いな!」
「で会いに来てどうするつもりだったんですか?」
「バニーは6月に行うLIVEのオープニングアクトを頼むつもりだ」
「うへっ!」
「オレサマが挑戦するエンドがボーイの名前を出したから3WAYマッチしようと思ってな(笑)」
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