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ハワイアンクルーザー級トーナメント②

この話も2話を合わせたので長いです。

 試合後はマイクパフォーマンスする暇も与えられず控室に行くようにとスタッフから支持される。

 試合は準決勝2試合と決勝前に一試合、決勝が残っているから進行的にも邪魔だった様だ。


 控室に戻ると汗を拭き覆面マスクとロングタイツを取り替えた。

 本当ならシャワーを浴びてスッキリしたかったがカイドウとグレイ・リッチの勝者が決勝の相手になるので観ておきたかった。

 この後の試合に俺が勝つ前提だけどね。


 着替終わり控室前のモニターに行くと既に試合は始まっていて互角の展開。

 いや、カイドウの方が有利に見える。

 1回戦を見た限りでは実力も経験もグレイが優っていた、今カイドウが攻勢なのは頭を攻めに防御に使っているからだ……物理的に。


 カイドウは馬…単純だから2回戦で頭突きの有効性を理解して馬…単純なりに考えて、この戦法を生み出したのだろう。

 頭は当然硬いから防御で使えば相手にダメージを与えられるけど首の負担は多くなる。

 多分そこまで考えてないな……。


 シツコイほど頭を多様するカイドウにグレイは時折レフリーに抗議をしている。

 何を言っているかはモニター越しではわからないが頭に何か仕込んでると言っているのだろう。

 その度にカイドウは頭を叩き「仕込みようがないだろ!」と一々反応している。


 グレイの狙いは攻撃のリズムを崩す事で仕込み云々は口実に過ぎないのだが馬…単細胞生物は気が付けない。

 フッと気が付くとグレイにセコンドに背の大きい選手らしい人物が指示を出している様に見えた。


「あれは誰なんだ?」


 誰かに訪ねたわけではなく独り言だった。


「あいつはグレイの兄、ライアン・リッチ。

ハワイアンヘビー級の王者さ」


 この声に隣を見ると1回戦で対戦したソル・レーザーがいた。


「アイツはこの団体のヘビー級チャンピオンでトップヒールでもあるから弟に優勝させる為に介入しに来たんだろうさ」


「って事はオーソドックスな悪役ヒールか」


 モニターに視線を戻すと二人は場外で乱闘、ライアンはレフリーに抗議して注意を逸している。

 そのスキに弟はパイプ椅子でカイドウを滅多打ちにしている。

 その後の試合展開は兄が弟がレフリーを引き付けて反則を繰り返た。

 カイドウも健闘はしたが最後は力尽きて敗北した。


「カイドウはこの大会で化けたな。

今までは総合的に能力は高かったがここまで出来る選手じゃなかった」


「アドバイス1つで化けるんだから人ってわからないよな……」


「アドバイス?カイドウにアドバイスしたのか!?」


「したと言うかする気もなかったんだけど一言、頭を使えと言ったらああなった(笑)」


「アハハハ、頭を使えでヘッドバットって単純すぎて笑える!」


 ソルはしばらく爆笑すると


「Mr.トビーに負けたけど一応優勝候補だったんだ。

貴方が優勝してくれればオレの面目も立つだからグレイを倒してくれ!」


 右手を差し出したので握手する。


「2対1は経験ないが気持ちには応えるよ」


 数日前にデビューしたのでそんな経験あったらやばいけどね。


 ソルはその場を去ろうとした


「ソル、君は思い通りにならないと攻撃が単調になるから気を付けたほうがイイ」


「他にアドバイスはあるかい?」


「頭を使え(笑)」


 ソルは再び爆笑すると今度こそ去って行った。


 俺は頬を数回叩いて気合を入れると控室に戻る。

 中には着替え終わった娘たち2人。


「準備は良いかい?」


 と娘たちに声を掛けた。


「頑張って応援します!」


「パパさっきはごめんなさい……」


 俺はアイの頭を軽く叩いて


「試合に集中しよう」

 そう言って戦場リングに向かった。


★☆★☆★


 準決勝の対戦者はMMА(総合格闘技)出身のデューダ選手(豪国)

 俺のコールが終るとマイクを要求し


「Mr.ラビット、試合を観ていたが中々グラウンドもスタンディングも上手いじゃないか!

この試合はMMAルールでやらないか?」


 自分が手にしていたオープンフィンガーグローブを頭上に掲げた。


「トビーさん、相手が有利すぎます!」


「やっちゃえパパ!」


 ミコとアイは反する意見を言うが


「その提案は呑むがグローブは要らない!」


「いい度胸だ!この試合は長く掛らないぜあんしんしな!」


 リングアナウンサーからのルール説明が終わるとゴングが鳴った。

 試合は圧倒的に一方的な展開になり2分も掛からず終了する。


 もちろん俺の勝利だ!

 勝因は俺が波道使いだったからだ。

 波道とは零距離戦闘術で抱き合った状態でも高い威力の打撃をノーモーションで繰り出せる。

 予備動作が無いから相手は俺の動きを読む事は出来無い。

 決勝の為に体力を温存する為に出した提案だったのだろうが逆の結果になった訳だ。


 勝ち名乗りを受けているとライアンが現れマイクパフォーマンス


「爺さん、決勝進出おめでとう」


 気のない拍手をする。


「新人の爺さんの快進撃はここ迄だ!

俺のグレイがトーナメント制止ハワイアンクルーザー級のベルトを巻く!」


 このマイクを聞いてライアンはプロレスをわかってるなと思った。

 俺を侮辱することで敵対関係って事を印象づけて観客に感情移入する状況をマイク一つで作り出した。

 ここで俺も乗っかってアピールしなければ……


「パパを侮辱するのやめてくれる?」


 ライアンからマイクを奪ったアイが激昂する。

 普段良いなのに俺が絡むと何故こうなるんだ?

 っていうか反省してないよね?


「お兄ちゃんの助けが無いと勝てない様なチキン野郎がパパに勝てる訳ないでしょ!

最後にベルトを巻くのは『超人』トビーよ!!」

 ライアンはアイのマイクに余裕の表情で鼻で笑ってからリングを降りた。

 アイはそんな態度に頭きたのか日本語で罵詈雑言を浴びせていた。


 あれ?俺の出番は?


 試合が終わり控室に入り椅子に座りひと息つく、一試合挟んでから決勝だから20分は休憩出来る。

 

「パパ疲れているところ悪いけど作戦どうする?」


「作戦?」


「あの兄弟、介入とか凶器攻撃するよ?

対応策考えなくていいの?」


「別に作戦なんていらないよ」


「え、どうして?」


「ライアンはプロレスってモノを理解してる。

さっきのマイクだって俺を煽る目的じゃなくて観客が感情移入しやすい様に自分達が悪役と印象づけるのが目的だしアイがキレるのも計算していた」


「そうだったの?」


「そうなんですか?」


 驚く2人


「そこまで考えれる奴に下手な作戦は通用しないし、仮に作戦立てるにしてもアイやミコが危険ある。

唯一言うならアイがキレない事かな?」


「え?アタシ」


「アイは俺がバカにされると必要以上にキレたり暴走するのはタリアとマイクの件で明らかになっているから奴はそれを利用する可能性は高いよ」


「アタシが我慢すればイイの?」


「そうだけど多分無理だからミコが止めてくれ」


「私?どうしたら……」


「ビンタするなり水ブッ掛ければ?(笑)」


「水バケツ持ち込んだら利用されそうだし……」


「冗談だから(笑)

試合開始したら控室に戻るのも手だと思うよ」


★☆★☆★


 試合は俺の敗北で終わった。

 予想通りレフリーのブラインドをついての介入&反則三昧で覆面マスクも破られたがライアンと同様に俺はプロレスを熟知していたので初めから2対1を想定していたので苦戦はしていたが負ける要素は少ないと考えていた。


 最終的にはリング中央でオリジナルのサブミッションを極めるつもりだった。

 敗因はアイが我慢出来ずレフリーに抗議し、そのスキに急所を思いっきり蹴られてから丸め込まれた。

 リッチ兄弟とその取り巻きがリング上で勝利の喜びを炸裂している中、俺はリングの外でソルに腰をトントンされていた。


 優勝出来なかったのは残念だがトーナメントで色々経験出来たので満足はしている。

 アイは自分の落ち度で負けた事に何度も謝りながらガン泣き。

 ミコもアイを止められなかった事に号泣していた。

 満足はしているが気分が悪い!

 愛娘を泣かした自分が許せないがライアンが一番許せない!


「ミコ、ミネラルウォーターあるか?」


「グスッ、ランドセルの中にはタオルと予備のマスクしかないです」


 ミコは高級ランドセルを背負って入場している。


「飲み掛けだけど……」


 俺の話を聞いた観客の青年がペットボトルを差し出した。

 俺は礼を言って受け取ると口をゆすぎ最後にはうがいをして水を吐き出した。


「ミコ、予備の覆面をくれ」


 覆面を受け取るとリングの下に頭を突っ込んでマスクを取り替えた。

 リング下から出て立ち上がると気合いを込めてシャーと発した。

 先程の青年に破れたマスクを渡し


「水の礼だよ。

ここから面白くなるから最後まで見ていってくれ!」


 そう言ってマイクを手にしエプロンサイドに上がる。

 リッチ兄弟に祝福では無くブーイングを浴びせていた観客は俺の行動に気が付きブーイングを止めた。


「グレイ優勝おめでとう!

俺に勝ったんだから未来永劫王者でいる事を願うよ。

そして観客の皆様俺を思ってのブーイングとても嬉しかったし感謝している。

レフリーがスリーカウント入れた以上途中に反則されても負けは負けだし判定は覆らない。

でもな!一つだけ許せない事がある!

ライアンお前だよ!

試合に負けた事はどうでもいい!

愛娘を泣かせたお前を許せないし、王者である事も許せない!

今ココでお前の持つハワイアンヘビー級王座に挑戦させろ!」


 俺の言葉に観客のボルテージは一気に上がり爆発した。


「資格がないとが権利がないとかつまらないこと言うなよ。

お前ら兄弟が二人がかりで反則しなければ勝てなかった俺の挑戦受けるよな?

今日3試合した俺が怖いのか?」


 俺を支持する観客は「戦え」コールの大合唱で後押しする。

 ライアンはプロレスを理解してるからこそNOとは言えず俺の要求を呑むしかなかった。


 ゴングが鳴り試合が始まる。

 手四つの手堅いレスリングをしようとしたがライアンは付き合わず執拗にボディーに膝蹴りをし俺のスタミナを奪いにかかる。

 そしてチャンスがあればリング外に落し取り巻きに攻撃させる。

 ただライアンの計算外があるとすればリンク下にはライアンの取り巻きだけじゃなくトーナメント参加者が俺を守る為に思ったほど俺にダメージを与えられない。

 狙ったわけでは無いがランバージャックデスマッチの様になっていた。


 ランバージャックデスマッチとはリング上で決着させる為リング下には多人数のレスラーを配置し試合者がリング下に落ちるとリングに上げる役目を持つ。

 味方なら素直にリングに戻すが敵ならボコられる地味に嫌なルールの試合だ。


 リング外では常に乱闘が行われグレイにはカイドウやアイが攻撃を仕掛けている。

 あっアイが危ない!と思ったらタリアが助けてる。

 ミコはソルやタイガーが羽交い締めした選手をビンタする謎のコンビネーションを繰り返してる。

 ん?何故試合中にリング外の事観察してる余裕あるのかって?

 今リング中央でボストンクラブ掛けられてるから周囲を見る余裕あるんだよ。

 俺は軟体動物かって言われる程身体が柔らかいから通常の選手がギブアップする角度でも俺にとっては適度なストレッチでしかない。

 このまま動かなかったらレフリーストップの可能性もあるから反撃するか!


 腕立て伏せ+波道+下半身に力を入れるとボストンクラブを跳ね返しライアンを転がした。

 すぐ起き上がりロープに走り反動を利用して攻撃しようとしたが足がもつれて倒れてしまう。

 今の攻撃と執拗なボディー攻撃で下半身に効いているぽい。

 それならとリング中央で正座しライアンを見据える。

 俺の姿を見て「喧嘩売っといて土下座かよ!」と指差して大笑いした。


 俺は手招きして「来いよチャンプ」と挑発。

 ライアンはバズソーキックを放つも交わし足を払い正座の姿勢に戻る。

 すぐ様起き上がり再び蹴りをしてくるが一本背負いの要領で投げ正座に戻る。

 この正座はヤバいと感じたライアンは距離を取り俺の周りを歩きスキを伺い出した。


 この技と言うか体勢は『居取り』で会談中にサムライに刀で襲われても無効化する身体操作の一種で波道を応用した俺流トビーバージョンだ。

 マジで波道には毎回お世話になってます!

 この大会では本当に!

 ライアンは背後から低空ドロップキックして来るが土下座の姿勢で交わしたら目の前に落下したので首4の字に移行。

 のたうち回りながら必死にロープエスケープする。

 俺は立ち上がり脚を叩いて気合を入れ「どうしたチャンプ!」と挑発した。

 立ち上がったライアンと額を付け合わせて睨み合うと逆水平チョップの撃ち合いになる。

 十数発撃ち合うとライアンが膝を着いたのでストレートエルボーで追い打ちを掛ける。

 青木選手の技だ!


 うつ伏せにダウンしたのでスワンダイブ式ムーンサルトプレスしオリジナルサブミッション『胡座アグラ片裏かたうら』を仕掛け決まる!


 この技はシンプルで胡座の中に相手の足を入れて足首辺りに座るだけだ。

 技のバリエーションも両足、片脚の裏表ありと豊富だ。

 俺が楽してる様に見える技だが威力はフランクのお墨付きである。


 強烈な痛みでロープに逃げる事も出来ないライアンは苦悶の声をあげ続ける。

 ウワッハハハァ苦痛に耐えながら生まれた事を後悔すれば良いさ!


 少しだけ調子に乗っていると背後からスリーパーホールドを仕掛けられた。


 ライアンの仲間らしい奴がレフリーを引き付けている。

 この時仕掛けた相手がグレイと気が付いた。

 俺は当然苦しいのだが体重を掛けられ締め上げられる毎にライアンの苦悶の声が増す(笑)

 それに気が付かないグレイに苦しいの忘れて笑い出しそうだ。

 と言ってもグレイをどうにかしないと俺もヤバい、だからといって技を解くと2対1だしなと考えてると眼の前にミコが立っていた。


「トビーさんを離せ!」


 と強烈なビンタを炸裂されグレイは技を解く。

「大丈夫ですか?」

「俺は平気だからリングから降りて!レフリーに見られたら反則負けになる」


「ビンタすれば良いんですね?」


「何でだよ!普通にリングから降りろよ!

Sに目覚めたの!?リング下で何があったの!?」


 ミコは残念そうにリングから降りるついでにグレイの股間を踏んづける。

 リッチ兄弟の取り巻き達は乱闘を止めミコに踏まれるグレイを羨ましさと嫉妬混じった目で見ていたのだ。


「スマイルクイーンに踏まれてる……羨ましい」


「アレは幾ら払えばしてもらえるんだ?」


「グレイの野郎!羨ましすぎて眼からビームが出そうだ!!」


 本当にリング下で何が起こったのさ!?

 レフリーが取り巻きから逃れるとライアンに近寄りギブアップかを確認する。


 リング下では悶絶するグレイに


「気持ちよかったか?」


「あとでレポート提出してくれ!」


「今ならお前への羨ましさで勝てる気がする!」


 うるさいドM共!


 何度か目の確認でライアンはタップしてギブアップを認めその瞬間にゴングが鳴り勝利が確定した。

 ハワイアンクルーザー級を決めるトーナメントに出場したのに何故かヘビー級の王座に成りました。


 久々に言おう、なんでこうなった!?(笑)

お読み頂き感謝感謝\(^o^)/

ブックマークや評価を頂けるとモチベーション上がるのでヨロシクお願い致しますm(_ _)m

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