ハワイアンクルーザー級トーナメント①
コレも3話分合わせたので長いです。
成田のホテルに着き、仮眠し、空港行って、飛行機でハワイに無事到着した。
ニーナが居ないのは正直寂しい。
けど問題児が居ないとトラブルも無く動画撮影したり、観光やショッピングをして平穏無事に過ごしている内に試合当日を迎えた。
先ずクルーザー級とは日本のJrヘビー級とほぼ同じもので体重100kg以下と考えて欲しい。
トーナメントの参加者は16名で2日間で行われる。
初日に1回戦を8試合、2日目は決勝まで一気に行われる。
1回戦を勝ち抜くと優勝するには2日目にその日の内に3試合するハードな内容になっている。
参加者中10名はアメリカ人でメキシコ人が3名、オーストラリア人が1名、日本人が2名。
アメリカの独立系団体選手が中心だ。
俺は団体に所属していないフリーランスになるのかな?
キャリアも3年以上5年以下、年齢は二十歳から30歳の選手が参加している。(俺は39歳の最年長)
完全にフランクのコネでの参加なのだが選手達もファンも俺を歓迎してくれている。
俺が名を馳せている動画クリエイターなので世界中のプロレスファンがこのトーナメントに注目しているからだ。
聞くところによると俺の参加が発表されてPPV(有料放送)の売上がものすごいらしい。
優勝しなくてもファンにインパクトを残せれば一気にブレイクしたりメジャー団体から声が掛かる可能性も0じゃない。
まあファンは兎も角、参加者は誰一人、俺なんか眼中に無いのが歓迎の理由なんだろけどね。
俺も優勝出来るとは思ってないが1つでも多く勝って経験を積みたいと思っている。
俺の試合は1回戦の最後でメインイベント、フランクのコネの力はスゴいね。
控室のモニターで最初から試合を観ていたのだが正直面白くなかった。
基本的に大雑把に殴る蹴るでレスリングの攻防なんてほとんど無く見栄えのイイ飛び技して丸め込んで勝つ感じだった。
良かったのは4人でメキシコ人の2人はライセンス持ちだから基礎が出来ていて実力者だった、地元ハワイで活躍するグレイ・リッチはアマレス出身で基礎を徹底的に鍛えた印象で他の選手と比べても頭1つ抜けていた。
最後は日本人のカイドウ選手、彼は器用に何でもこなすけど武器が無い感じだ。
この4人は1回戦を勝ち抜いている。
ついに俺の出番なのだが俺は緊張していない。
何故なら
「トビーさん私吐きそう……」
「アタシちょっとトイレに……」
二人は俺が冷静になる程緊張していたからだ。
2試合目が異国でのパフォーマンスだから無理はない。
「なるべく早く終わらすから我慢してくれ」
「うん」
「わかったわパパ」
俺達の入場曲が掛かると2人は緊張を忘れたかのようなパフォーマンスをする。
いつの間にかプロフェッショナルになっていたんだなと感動してしまった。
日本と同じ様に唄い踊りリングインすると大歓声で迎えられた。
気合を入れて対戦相手の入場を待った。
今回の対戦相手は『テレポーター』とあだ名が付くほど一瞬で投げ技する黒人選手のソル・レーザー選手だ。
瞬発力で投げられると受け身を取りづらいので油断出来ない。
彼はリングに上がると軽快なステップを披露し観客からの喝采されていた。
ゴングが鳴ると俺達は握手するとのオーソドックスにレスリングからはじめる。
手の取り合いから腕四つで組み合い力比べしてグラウンドの攻防。
彼もレスリングが出来る選手で俺は嬉しくなった。
だが彼は攻防で俺を圧倒出来ないことに苛立ち戦い方を殴る蹴るに変えてきた。
俺は挑発しながら攻撃を受けていたのだが正直音が鳴るだけで全く痛くない。
これを勝てると判断したのかロープに走り反動を利用したラリアットを狙ってきたので一本背負いで切り返し腕十字を決めるとアッサリとタッブされ勝利で試合が終わった。
「有言実行なんてスゴいです!」
「パパ最強〜!」
と祝福されるが素直に喜べなかった。
「たまたま早く終わっただけだよ」
と言ったがふたりは謙遜と捉えたようだ。
メインの勝者だからマイクを渡された。
「ハワイの皆さん、お疲れ様『超人』トビーです」
動画と同じ挨拶するとそれだけで観客は湧いた。
「こうして皆さんの前で試合出来て光栄でしたけど試合は楽しんでもらえましたか?」
観客に問い掛けると大声援で答えてくれた。
次の言葉をと考えていたらアイにマイクを奪われた。
「本当に楽しかった?」
歓声
「本当に本当に?」
歓声
「パパの実力はこんなものじゃないから!
絶対優勝するから明日も応援してね!」
歓声
「ミコも何か言いなよ」
「えっと、優勝候補のテレポーターに勝ったんだから優勝間違いなしだ〜!!
みんな〜明日も応援ヨロシク〜」
と言ってから俺にマイクを渡す。
「マジで!?アレで優勝候補ってウソだろ?
俺全然本気じゃなかったんだけど!」
気になったワードに反射的にツッコんだ瞬間失言したと気が付いたが観客の反応から引くに引けず勢いのまま
「この程度が優勝候補なら俺がこのトーナメントを支配する!!」
大歓声が響き俺達のエンディング曲が流れ花道から控室に帰る。
観客には大ウケだったが選手たちには反感を買ったようでスゴい殺気を感じた。
拝啓ニーナ、俺生きて日本に帰れないかも知れない……。
殺気溢れる控室に居心地の悪さを感じていると次の対戦相手がハワイアンプロレスの撮影クルーとやって来た。
「オイ、ロートルのルーキー!
リング上では舐めた事言ってくれたな!
金の力でフランク・ボーガンや上層部を誑し込んだのかも知れないが兄には通用しない!
本物の分ルチャ・リブレで化けの皮を剥がしてやる!」
※ハワイ編は英語の会話のつもり
俺に迫り強い口調で罵るのは対戦相手の妹だ。
兄の覆面選手はタイガーチャンと言うリングネームでメキシコ中心に活躍。
ルチャの動きにカンフースタイルを取り入れているので中国ぽい名前になったらしい。
パット見、堂々としている様に前で目が泳いているので予想外の展開なんだろう。
「ちょっと何処の誰だか知らないけどパパに失礼じゃないの?」
アイが激怒の様子で食って掛かる。
「あんたバカ?兄と来ているんだから関係者に決まってるでしょ!」
「パパの次の対戦相手タイガーチャン選手の関係者なのは見ればわかるわ!
どの立場で無礼な発言してるのかって話よ!」
「私はタリア、英語が苦手な兄の通訳として大会に参加しているわ、文句ある?」
「ダイヤかタイヤ館か知らないけどキチンと通訳の仕事をしなさいよ!
あんたのお兄さん一言も話してないのに何が通訳したの?」
「私もルチャドーラだから兄の考えはお見通しなのよ!」
ちなみにメキシコでは男性はルチャドール女性はルチャドーラと呼びます。
「へーそれはスゴい能力ですね(笑)
心読めるなら別な仕事したらどうですか?」
「キー!そう言う生意気なオマエは何様よ!」
「アタシはパパの娘様でセコンドのアイよ!」
「親子には見えないわね!
日本人は助平だから愛人が言うパパ?
商売女が口を開くなトーナメントが汚れる!」
二人は額を付け合わせて睨み合い胸倉掴み合いになりそったったのでアイをミコが羽交い締めし、ニータは団体女性スタッフが止めて引き離した。
距離をとっても激しく罵り合いタリアは控室から出され、アイは女性トイレへ連れてかれた。
あれ、次の対戦ってこの二人なの?
そう考えていると
「アァ……」
タイガーチャン選手は英語が話せないから身振り手振りで一生懸命に何かを伝えそうにしている。
多分、こんな風になると思ってなかった単純に良い試合をしようと言いたかったのだと思う。
だから俺は「グッドファイトしようぜ!」とサムズアップした。
彼もサムズアップで返してくれたので気持ちは伝わったと思う。
「オジさんちょっと良いかな?」
タイガー選手を見送っていると、このトーナメントもう一人の日本人選手が話し掛けてきた。
「オジさんじゃなくトビーと呼んでくれ」
「わかったよオジさん、オイラはカイドウ23歳でキャリアは3年。
本名は二階堂なんだけど「に」が付くだけで発音し難いぽいからこうなったんだ」
あっコイツ人の話聞かない、言いたい事だけいうタイプだ。
「でそのカイドウ君もさっきのマイクの苦情かい?」
「苦情?あぁ殺気ばしってる奴らか。
アレはMr.フランクの弟子でやっかんでるだけだよ。
オジさんの強さが理解出来ない雑魚なんて気にする必要ないよ。
そんな強いオジさんにアドバイスを貰おうと思ってきたんだ!
オイラこのトーナメント優勝したいんだよ!」
コイツ馬鹿なの?
俺の強さを理解した上で優勝したいからアドバイスって頭の構造どうなってるの?
試合は観ていたしアドバイスなんていくらでも出来るけど、する必要性を感じない。
「もっと頭を使った方がイイ」
嫌味を込めて言ったのだが
「なるほど、オジさんの言いたい事はバッチリ理解したぜ!
アドバイスありがとうな!」
と言うとさっさとその場を去った。
「アイツ絶対理解してないな……」
唖然としているとアイ達が戻ってきたので帰り支度をすると会場をあとにしホテルへ移動する。
その道中タクシーの中でどうして喧嘩腰だったのか尋ねたら
「パパに失礼な態度が許せなかった」
「だとしても大人な対応すべきだよ」
と言っても納得していない様子。
「向うはプロレスラーなんだからケガしたらどうするんだ」
「パパはアイツに私が負けると思っているの?
アタシだってフランスさんからプロレス習っているのに?」
アイは動画の企画でフランクのトレーニングを受けていて撮影以外でも俺と汗を流している。
その結果国内の女子プロレス団体からオファーがかかっている。
「勝つとか負けるとかじゃなくて喧嘩腰で対応するなと言いたいんだよ」
あの場で喧嘩になっても負けるとは思わない。
坂道さんから波道も教わってるしね。
アイは本当の娘ではないが間違った対応には叱らないと。
「わかったわ、もうあんな態度しない」
しぶしぶ納得してくれたが
「イヤイヤそうだね」
「理解したけど納得してないし反省もしていない」
もう少し叱ろうと考えたが理解はしてくれたから今回はここまでしておく。
少し時間が経過すれば冷静に考えられるだろう。
☆★☆★☆★
一夜明けアイは昨日事を謝ってくれた。
その言葉にホッとしてアイの頭をポンポンと叩いて
「わかってくれたならイイよ」
そう言って試合会場に向った。
試合は進みカイドウの試合は俺のアドバイスを守り頭を使って試合を組み立て見事に勝利した。
でも頭を使えと言ったけど頭突きしろなんて言ってない!
どこがバッチリなんだよ!!
試合前に精神的に疲れたけど俺の試合になった。
リングに上がる順番はトーナメント表の並びなので昨日メインだった俺はタイガー選手の後に入場する。
タイガー選手の入場曲が鳴り響きコールを受ける声が聞こえるとアイが舞台袖から飛び出してリングに走っていった。
何でだよ!!
慌てて追ってリングに向うとエルボー合戦しているアイとタリアの姿があった。
タイガー選手は何故止めないんだ?と思っていたらコーナーポストの根本で股間を抑えて悶絶していた。
多分止めようとして妹に蹴られたんだろうな(T_T)
昨日のやり取りが公式から公開されているので二人の関係性を知っている観客は大喜びだ。
レフリーは何してる?と思いながら二人を止めるためにリングに上がると花道と逆側のリング下に股間を抑えてのたうち回っているレフリーの姿が……。
アイから目を放して1分も経っていないのに、どれだけ悲劇おきてるの!
次は俺の番?俺の番なんですか!?
俺が躊躇していると
「トビーさん離れて下さい!」
言われるままコーナーポストまで下がるとミコが争う二人にバケツの水をブッかけた。
「頭を冷やせ、おバカさん!」
アイはキョトンとして何が起こったのって顔をしていたがタリアは頭に血が上りミコの胸倉を掴んだ。
その瞬間ミコがタリアにビンタし「Get out of here!(ここから出て行け!)」と言う。
タリアが何か言おうとすると、またビンタし「Get out of here」と繰り返す。
タリアの動きが止まるとセカンドレフリーがやって来て退場を促すとタリアはリングから降りて退場する。
ミコは笑顔で振り返りアイにも「Get out of here」と言い花道を指差した。
アイは口答えする事なく花道から退場した。
物理的にはアイの方がミコよりも強いが心の強さは圧倒的に彼女は強かった。
怒らさ内容にしないと……。
ここで団体からリング清掃するとアナウンスがあり俺達はリングから下りた。
清掃がどれだけ時間が掛かるか分からないが控室に戻るべきか?と考えているとミコはいつの間にかマイクを手にしていて
「私のせいで時間とらせてごめんね~
試合開始まで私達の歌を楽しんで下さい〜♪」
ファンを退屈させないようにする気の様だ。
ちょっと待て俺も歌うの!?
「音響さんミュージックスタート!」
カーニバル調のイントロが流れ始めミコが歌い出すアイのパートになるとマイクを向けられると「やっぱり歌うのね」と思いながら歌う。
歌い踊りながらリングサイドを回ると観客のボルテージは上がり大歓声になった。
入場曲とエンディング曲を歌い終わると丁度清掃が終了し試合となった。
観客の皆様、俺が唄い踊るのはレアですけど出来る事なら記憶から消して下さい……2度とやりたくない(T_T)
お互いコールされるとゴングがなり試合開始される。
当然アイとタリアは居ない。
おそらく大会スタッフに監視されているんだろうな。
俺達は握手してから手四つからオーソドックスなグラウンドレスリングからはじまった。
ルチャは未経験なのでタイガーのしたい事を防ぐ形で試合展開していく。
グラウンドではフランクに鍛えられ柔術の経験のある俺に武があるようだ。
前対戦者のソルと違い焦る事もなく自分のペースは崩さない。
グラウンドから徐々に変則的な動きをし始めタイガーの得意な展開に
シフトしていく。
俺は焦る事なく冷静に対応していく。
経験が圧倒的に足りないのだから全て受け切ってルチャを学ぼうと考えている。
だがそんな考えをミコはわからないから悲痛な声で声を出している。
その声を聞いて勝負時と考えたのかカンフーの動きを交え打撃に移行、パワースラムからシューティングスタープレスで俺を仕留めたつもりで確り体を固めずホールする。
カウント2で返しタイガーは驚きの表情するもすぐ気を引き締めコーナーポストに陣取り間合いを測る。
俺はヘッドスプリングで起き上がるとタイガーを睨み首を2回ほど鳴らし手招きする。
タイガーの瞬発力はスゴく数歩でMAXスピードになると高く跳躍しドロップキックを放つ。
それを胸で受け波道の力で跳ね飛ばす。
再び距離を取り驚きを隠せない様子。
ふふふ、驚いたか!
俺は鍛えるだけじゃなく金の力でセサミンとか精力がアップするサプリメントを飲み続け超人的な回復力を手に入れたのだ!
タイガーの間合いに入りながら「ビビってたら勝てないぞ!」と挑発。
英語がわからないのは知ってるけどニュアンスで理解するだろう。
彼はカンフーの打撃を仕掛けてくるが
それはさっき見たのでキックボクシングで学んだ防御力と波道で防ぎ、スキを見て腹部にソバットし動きを止めたところでパワーボムを仕掛ける。
がフランケンシュタイナーに切り替えそうになるが力尽くで耐えてパワーボムを炸裂させた。
カウント2でキックアウトされたがダメージでタイガーは動けないのでトップコーナーに上がり俺の必殺技のローリングギロチンドロップで止めを刺してスリーカウント取り勝利した。
最初はどうなるかと思ったが準決勝に進めてホッとした。
お読み頂き感謝感謝\(^o^)/
ブックマークや評価して頂けるとモチベーションが上がるのでヨロシクお願い致しますm(_ _)m
この話書いたのって2年くらい前なんですよ。
手直しのため読み返すとモデルの居ないレスラーの名前適当過ぎる!
タイガーチャンって何なのよ!と自分にツッコミ入れてます




