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デビューしてみた!

前同タイトルの『デビューしてみた』と後日譚を一つにまとめたので七千文字近くになり長くなってます。

 時の流れは早いものでデビュー当日になった。

 俺は順調に仕上がりフランクが呼んだ日本の中堅団体で活躍する外国人選手とスパーリングして仕上げた。

 アイドルプロジェクトはユニット名を『バニー✕ばにー』としてプロレスのリングでは『トビーwithバニー✕ばにー』としアイドルの活動の時俺が参加する場合はwithトビーになる。


 俺の入場曲であるデビュー曲『カーニバルふぁみりー』は某夢の国のパレードに使われそうな楽しさを全面に出した楽曲で歌詞にはミコ&アイの意見が多く採用されている。

 もう一つの曲『あしたへダンス』は試合勝利後に掛けるエンディングテーマの意味合いで製作した。

 カーニバル調の曲は勝利後には合わないと思っただけで深い意図は無かったのだが国内外から画期的なアイデアと絶賛され、1ヶ月前に公開したMVの再生数は1000万回を超えて世界中に配信が決定している。


 ニーナが手掛けた衣装も好評で早くもコスプレイベントに登場したりと話題になっている。

 それだけではなく衣装デザインの依頼も国内外から引っ切り無しだ。


 で肝心の俺のデビュー戦なんだが試合当日なのに教えてもらっていない。


 この半年で動画職人クリエイターデビューしたフランクは日本の流儀に染まりドッキリ動画を高い頻度でやるようになった。

 対戦相手を教えないのも俺の驚く顔が見たいからと自分勝手な理由だ。

 相手を知らなければ対策も練られないし煽りVTRを作って試合迄を盛り上げることが出来ないと抗議したが


「ハッハハ、試合相手はトビーが知る選手だし相手がわからないだけで負けるような鍛え方はしていない!」


 と言われ俺は納得出来なかったが健太郎やニーナが納得したのでマジで知らない。

 対戦相手とフランク以外は本当に知らないのだ。

 このエピソードをSNSでしたら話題になり対戦相手が誰なのか予想する事がトレンドになったりもした。

 1番予想されていたのはフランク本人で後はスパーリング動画に出てくれた外国人選手の名前が出ていた。


 デビュー会場はリングスタジオで観客は4百人、試合数はフランクの声掛けで集まった外国人バカリで俺のメインを含めて5試合する。


 試合は問題無く進みメインの俺の試合の時間になり何故か先に入場……。

 俺のデビューが売りの興行なのに何でだよ!


 エレクトリックなイントロが会場に鳴り響きミコとアイが歌い踊り1分ほどして俺を呼び登場する。


 花道中央で2人に合流すると頭を撫でてから追い越してリングに脚を進める。

 二人は歌いながら手を振り後を付いてくる。

 リング前に辿り着くと二人はステップからリングサイドにあがりトップロープを上げセカンドロープを下げて入りやすくしてくれる。

 そのロープの間からリング入りすると

「身長182cm体重93kgトビー〜〜〜!!!」


 とコールされ観客から声援を浴びる。

 その後2人もリング入りし


「With『バニー✕ばにー』アイ&ミコ」


 俺より大きなは大声援……あれ?本日の主役俺だよね?


 俺達のリングインが終わるとアイが俺の表情を移すべく撮影、ミコは花道を撮影し始める。

 会場の照明が少し暗くなると対戦相手の入場曲が流れる。


 特徴的なバイオリンのイントロ『暴力王キングオブバイオレンス青木あおきいのりの入場曲『ウィンドミル』だ。


 彼は世界で有数の日本のプロレス団体『ZIPANGジパングプロレス』にレギュラー参戦しているフリーレスラー。


 フリーレスラーとは簡単に言えばZIPANGの興行スケジュールを守れば他団体にも上がれる契約。


 齢50にして現役バリバリで実力と実績は申し分無く世界的に名を轟かしている大物中の大物!

 フランクとは別の『蘇伝説リビングレジェンド』だ。

 完全に想像してなかった相手に口を開け頭が真っ白になっていた。


「パパ大丈夫?」


 その声で現実に戻る


「アイは知ってた?」


「ううん、怖そうなオジサンだよね!」


 恐れ知らずだな!


「ミコは?」


「知らないけどマイケル・ジャクソ○出て来ても驚くなと言われたよ」


「マイケルは亡くなってるじゃん!

出て来たら驚くと別次元の騒ぎじゃん!!」


 ツッコんだところで少し落ち着いた。

 花道を歩み進める青木選手に集中する。

 曲は大サビに近づき彼はリングサイドに上がり観客を煽り大サビの『ウィンドミル』と同時にリングインし俺と額を付け合わせて睨み合いになる。


「小僧!39でプロレスデビューだと?

ナメるな!今日で引退させてやる!!」


 マイクを使っていないのに会場に声が響き観客のボルテージが上がる。

 鋭い眼光、殺気ある言葉を浴びせられ、本物の青木いのりだ!とテンションが上がった!


 眼の前でレフリーにボディーチェックを受けて今にでも俺に噛み付きそうな彼を見ているとワクワクが止まらなかった!

 最高だ!本当に最高の相手だ!

 数秒後には鳴り響くであろうゴングの音が待ちきれなかった。


 青木選手のボディーチェックが終わるとレフリーはリング中央から少しロープ寄りに立ちミコ達にリングから降りるように促すと右腕を上に大きく上げてから「ファイト!」の声と同時に振り下ろし

『カーン』とゴングが鳴り響いた。


 ゴングが鳴り終えると嘘のように殺気の失くなった青木選手が笑顔で右手を差し出し握手を求めてきた。


「デビューおめでとう!」


 イヤイヤ絶対に罠じゃん!握手した瞬間にお腹蹴るよね?と思ったが青木選手を体感したい欲に負けて握手すると予想通りに蹴りを喰らい倒れたところでストンピングの嵐。


 アイ&ミコは悲鳴、観客はブーイング、レフリーは慌てて反則カウントを取りながら青木選手をコーナーに下がらせる。


 俺はゆっくり立ち上がりながら「これがプロレスラー青木いのりか……」呟くと右手を差し出した。

 警戒する青木選手に


「オールドルーキーにビビってるんですか?」


 と煽ると手を握ってくる。

 一瞬握力で強く握ると顔を歪めたので波道を利用して投げを繰り返す。

 この技は合気道の達人が連続で相手を投げるのをイメージして欲しい。


 何度か投げてうつ伏せになった所で手を握ったまま青木選手の腕を彼の首に巻き付けてコブラクラッチと言う絞め技に移行する。


 その瞬間青木選手はロープエスケープする。

 レスリーが俺達に割って入り距離を取らせる。

 再び試合開始時の間合いになると彼は舌なめずりしてから自分の頬を叩き


「来いよ!」


 俺は遠慮なくビンタした。

 派手な音がなり観客から怯む声と同時にビンタを仕返してくる。

 お互いに何発も応酬し合い怯んでいた観客から声援が上がってくる。


 お互いが打ち疲れたタイミングで青木選手の十八番オハコ)のストレートエルボを喰らう。

 この技はストレートパンチのフォームで硬い肘で殴るため破壊力がスゴい。

 拳での攻撃は反則だが肘での攻撃は認められ彼のエルボは右ストレートのホームから

繰り出されるので強力無比である。

 堪らず膝を付くとマウントポジションを取られ何度も往復ビンタを喰らう。

 俺は脚を彼の脇に入れると体制を入れ替えカウントを狙う。

 レスリーのカウントは1(ワン)でキックアウトされ距離を取って睨み合うと観客からどよめきと歓声が上がる。

 リング中央で青木選手が仰向けになると


「カモンボーイ!!」


 と言いながら手招きする。

 寝技グラウンドの誘いだが俺はそれに乗っかり寝技の攻防に挑む。

 青木選手は総合格闘技色の強い団体で王者に君臨した実績もあり寝技は今現在も世界屈指の実力者でもある。


 観客的には地味に映るだろうが激しい攻防しながらフランクの教えてくれた技術は暴力王にも通じると自信を深めた。

 そう言えばフランクは青木選手の後輩にあたるから技術を叩き込まれたんだろうな。

 余計な事を考えていたらアンクルホールドが決まりたまらずロープエスケープ。


 一瞬脚の痛みを気にしたら徹底した脚攻撃が始まり防戦一方になる。

 何度か打撃や投げ技で返すが百戦錬磨の暴力王には通じず劣勢な時間が続く。

 リング中央で正座する形になると


「どうした、どうした小僧!土下座して命乞いか!?」


 俺は暴力王の目を見据えて


「カモンボーイ!!」


 と手招きして誘う。

 カッとして近づく彼の背後に回り込み高速バックドロップ、高角度バックドロップを連続して繰り出し最後はジャーマンスープレックスホールドでカウントを2(ツー)まで取った。

 流石にこの連続は効果あったのかリング中央で大の字になったので俺のフィニッシャー(決め技)の1つであるトップコーナーからのローリングギロチンドロップを御見舞する。

 がカウントは2でキックアウト。


 俺は立ち上がり「立てよ暴力王!」と言いながらロープワークしラリアットを狙うも躱され背後に回られスリーパーホールドをされ暴力王の必殺技『ゴッチ式パイルドライバー』の体制に入られる。

 必死に暴れて回避しビンタの応酬で形勢を変えようとしたが再びストレートエルボを喰らい膝を付く。

 暴力王が今度こそ必勝パターンを繰り出すタイミングで起死回生のスモールパケージホールド(首固め)を決め3(スリー)カウントを奪い勝利を収めた。

 この技は序盤でも決まる確率が高い技で終盤では逆転技として使用率が高い。



 この技は唐突に試合を終わらせる事もあるから賛否ある技だが俺は得意技として公表しているし何度か動画を撮影している。

 いちプロレスファンとして好きなレスラーの得意技を受けたい気持ちは理解出来るからスモールパッケージならファンにもできる(笑)



 勝利が決まるとアイ&ミコがリングに上がりが涙ながら抱きしめて祝福してくれた。

 青木選手はレフリーにカウント入ったのかと抗議していたが判定は覆ず俺を睨んでからマイクを要求。


「オイ小僧!

今日、引退試合にするのは止めてやるよ!

もっと鍛えて俺様に追いつけ!

大きな箱でトビー貴様を終わらせてやる!」


 マイクを叩きつけるとリングを降りて帰って行った。

 一見負け惜しみに聞こえるが俺には最大の賛辞に聞こえて勝利の喜びに溢れ涙がこぼれた。


 あの暴力王から合格を貰ったんだから嬉しくないはずはない!

 俺が立ち上がるとレフリーは俺の右腕を上げて勝利を称え、娘たちは跳び上がりながら祝福してくれた。

 鳴り止まない祝福の声拍手喝采に包まれているとフランクがマイク片手にリングに上がり、観客は爆発した様な声をあげた。

 引退した伝説のレスラーが再びリングに立ったのだから当然か。


「トビー勝利おめでとう!あの暴力王から勝利するとはコーチとして鼻が高い!」


 右手を出すので俺も出すと右腕を上げられ勝利を祝福される。


「次の試練は3日後ハワイで行われるハワイアンクルーザー級トーナメントだ!

必ずベルトを巻いて戻る事を期待してるぞ!」


 そう言ってサッサとリングから降りて行った。


「はぁ?そんな話聞いてないぞ!!」


 俺は娘たちを見ると


「試合の事は知らないけどハワイで仕事は聞いていたよパパ」


「もう準備は終わってます!トビーさんは聞かされてなかったんですか?」


「この会社はどれだけ俺を驚かせたら気が済むんだ?

俺社長だよね?」


 勝利の曲が鳴り響く中俺はため息を吐くと声援に答えながら花道から退場した。

 ハワイでもドッキリは続くと予感しながら……。


★☆★☆★


 花見からリングスタジオを出ると正面にテーブルが置かれ椅子が3つ用意されていた。


「閣下、お嬢様方こちらです」


 白悪魔ホワイトデビルの敵軍『Zーアーミーズ』の軍服のコスしたニーナに座る様に促される。

 ニーナは何かしらの撮影ある時は絶対コスするプロ意識が高いというか衣装代を経費で落とすつもりなのかはわからない。

 プライベートの時はアニメコスは着てくれない(T_T)


 席に着くと記者とカメラマンがテーブルの前に陣取る。

 後ろには観客達が出て来て、立ち止まる人、気にせず帰る人、グッズを買う人に別れた。


「デビュー戦を無事に終え、勝利する事が出来て満足してます。

これも今日観戦に来て頂いた皆様と動画ファンのお陰だと思っています、本当にありがとうございます」


 深く頭を下げる。


「試合の感想とか色々と話ししたいのですが最後に衝撃的な話聞かされて混乱しているので質問をして貰えると助かります」


 そう言うと一人の記者が手を上げて


「プロレス通信のたちばなです。

衝撃とはハワイでの試合の事ですか?」


「はい、今日の対戦相手の青木いのり選手の事もそうですけどハワイでトーナメントの話も全く聞いてないので何が何だか分からないです」


「娘さんたち『バニー✕ばにー』のお二人も聞いてなかったんですか?」


「試合に関してはパパと同じく聞いてませんでした」


「ハワイに関してはイベントで唄うからとは聞いていたので旅行の支度は出来てますよ」


「トビー選手は社長ですよね?そんな事あるんですか?」


「実際あるから混乱してます。

本当にいつ飛行機に乗るかとかも全く知らないんですよ」


「1時間後にはここを出て成田空港近くのホテルに泊まり朝の便でハワイに発ちます」


 とニーナ。

「俺何の準備してないんだけど?」


覆面マスクやリングコスチュームはトランクに詰めてあります。

服とかは現地で購入して動画撮影でもして下さい」


「雑!色々雑!コス用意するなら服とか下着も用意してくれよ!」


「秘書の私は下着なんて触れられません!

セクハラですか?これは公開セクハラですか?」


「お前秘書じゃないし!

……と言う事で今知る事実ばかりです」


 ため息を吐く。


「なるほど…」


「ワールドプロレスマガジンの反町そりまちです。

デビュー戦の相手の青木選手は予想してましたか?

対戦の感想もお願いします」


「SNSの予想では名を上げていたファンも居ましたけど私は全くしてませんでした。

感想としては嬉しかったの一言ですね」


「何が嬉しかったのですか?」


「元々プロレスファンで青木選手の事は十分に知ってました。

憧れと言うか尊敬する青木選手を体感出来た事は今後のプロレス人生において大きな財産になるだろうし兎に角嬉しかったです。

勝利よりも嬉しいですね」


「ありがとうございます」


「マイノリティアイドルの五所川原ごしょがわらです。

アイドル界、プロレス界においても画期的なプロジェクトだと思うのですがどう言う経緯で思いついたのですか?」


「娘をセコンドにしたのはフランクインパクトのお陰で世界中から注目をされたのでプロレスラー+日本文化で発信できたらと思ってたら自然に思いつきました。

入場曲とエンディング使用は入場曲が勝利後に流れる曲としてはにぎやかすぎるので別にしました。

画期的とか業界初とかは考えてませんでした」


「柏陸人氏に楽曲提供を依頼されたのは?」


「単純に彼のユニット『ハーレムスタイル』のファンだから駄目元でお願いしただけで深い意味は無いですよ」


「エンタメまにあの大豪院だいごういんですけどコーチのフランクさんについて教えて下さい」


 さっきから珍しい名字多くない!?

普通の一人も居ないんだけど!」

 ツッコんだ後に冷静になって咳払いをして


「フランクには言いたい事は山程あるけど……アイツどこ行った?全く見当たらないんだけど?」


「教官なら家族サービスすると言って帰られました」


「はぁ?ドッキリしといてテッテレー無しに帰ったのかよ!?ヤリっぱなしのヤリ逃げ?

これが米国人アメリカンなの?

……選手としてだけじゃなくコーチとして優秀なのはこの試合で証明出来たと思いますがドッキリのやり逃げは許せないですね!」


「ありがとうございました」


「この後スケジュールが詰まっているので会見はここ迄とします。

記者の皆様、会見にお付き合い頂いた観客の皆様ありがとうございました。お気を付けてお帰り下さい」


 こうして会見は終わった。


☆★☆★☆★


 会見が終ると俺はシャワーを浴びて慌ただしくアイ達と共にタクシーに乗り成田に移動した。

 ニーナは今回はハワイに行かず日本に残り色々と仕事をするそうで朝が早いからと俺がシャワー浴びてる間に帰宅したそうだ。


 一緒にハワイに行けると思っていた俺はスゴく残念だったけどハワイで行われるトーナメントに心踊らせていた。

 どんな選手がいてどんなファイトをするんだろうか?

 ワクワクしながらタクシー内で寝てしまったのはご愛嬌。

お読み頂き感謝感謝\(^o^)/

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ここから加筆修正が増えていきストーリーが前同タイトルと変わっていきます。

たぶん

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