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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第一章 非日常へ

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二人の秘密

ダート視点

 レースさんが疲れた顔でリビングに入って来る。


「レースさんお疲れ様です。」


 声をかけても反応がないどうしたんでしょうか?

そのまま椅子に座ったかと思うと崩れ落ちるように床に倒れこむ。


「レースさんっ!」

 

 咄嗟に抱き留めるけれど、意識を失った男性を受け止められるような力は私にはない。

彼を支える事が出来ず一緒に倒れこんでしまった。


「……レースさん大丈夫ですか?」

「……すぅ…すぅ…」


 寝てる、安らかな目をして寝ている。

このまま床に寝かせるわけにはいかないですし……、それに運ぼうにも身長が見上げる位には高い人だ……私よりも重いだろう。

私の身長が150位しかないから特別大きく見えるんだろうけど、それを視野に入れてもどうやっても無理だ。


「このままじゃ重いしどうしましょう……そういえば昔お母様がこういう事してたっけ」


 元の世界に居た頃、お母様が定期的にお父様の頭を膝に乗せて頭を撫でていたのを思い出す。

当時は何をしていたのかわからないし今でも良く分からないけれど今出来るのはそれ位だろうか。

でもいざやろうと思うとなんだか少し気恥ずかしい。


「えっと確かこうやって、頭を膝の上に乗せて……長くやってると足が痺れそう」


 膝の上にレースさんの頭を乗せたのまでは良いのだけど、頭の重みで足が痺れそうで長い時間は出来そうになかった。

出来れば早く起きて欲しいと思いながら彼の頭を撫でる。

黒い髪に触れる度に適度にふわふわした感覚がして触り心地が良い、お母様はいつもお父様の頭を触る時こんな感じだったのかな。


「……レースさんの髪の毛って触り心地良いんですね」


 そんなことを思わず口に出してしまい恥ずかしくなる。

当時は一人娘として蝶よ花よと大切に育てられて来た身だったのもあり異性と関わった事等なかったせいもあると思う。

この世界に来て冒険者になってからは異性と関わる事は増えたけど仲良くなったこと何てなかったですし……もしかしたら距離感を間違えているのかもしれない。


「男性の髪の毛ってもっとごわごわしていて硬い物だと思ってたなぁ……」


 改めてレースさんを良く観察する。

良く見ると整った顔をしていると思う。

ショートの黒い髪に薄い水色の瞳をしていて…起きている時は優しそうな眼をしている。

そして眼が悪いのか眼鏡をしているけど……、そうだ借りてかけてみようかな……やっぱり止めた方がいいかな?って思ったけど無意識に手がレースさんの顔に伸びて眼鏡を外してしまう。


「少しだけ…付けるだけなら…」


 そういえば眼鏡って初めてかけるな……、付けるとどんな風に見えるかドキドキする。

眼鏡を顔にかけて周りをゆっくりと見たら不思議な感覚がする、近くの物が遠くに見えるようなふわふわした感じ……面白い感じにワクワクしてしまう。


「不思議な感じ……あれ?」


 レースさんの顔を見て違和感を感じる。

髪の色が黒から白い色に変わっていて光を浴びてきらきらと輝いていた。

そして視界には彼の状態が診察結果として表示されていた。


「……症状:失血性の貧血……状態:魔力を血液に変換中?」


 貧血は辛いもんね……、何だか分からないけど魔力を血液に変換中って事はきっと大丈夫だと思う。

ただどうして髪の色が違うのだろう…そんな疑問があるけれどもしかしたら触れて欲しくない秘密なのかもしれない……。

私も異世界から来た事とか知られたくないから、もしそうだったら秘密にしてあげた方が良い。


「ん……うぅん」


…レースさんが膝の上で動く。

もうすぐ目が覚めるのかも知れない、私はそっと眼鏡を外すとレースさんの顔にそっとかけなおす。

そろそろこの時間もおしまいね。

私は指先に光を灯すと自身に暗示をかけて今の自分からこの世界のダートへと上書きしていく。

いつか私の秘密を打ち明ける事が出来たらいいのにと思いながら彼が起きるのを待つのだった


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