シリーズ『死神のお仕事』〜天寿全う編〜
シリーズものを書いてみようと思いました。死神のいろんなお仕事。
死神の仕事は、決められた担当の人間の一生を見守り、いつ命を終わらせかである。
生まれ落ちたその日から、彼らの人生にぴったり寄り添い、終わらせ時を考える。
長い付き合いになるので、当然その人間に愛着がわく。死神という物騒な呼び名とは裏腹に、たいていの場合その感情は愛そのものだった。
彼らに、よりよい人生を送って欲しい。その一語に尽きるのである。
今回俺が担当した人物は、平凡そのものの人生を歩んできた。普通の家庭に生まれ、反抗期もそれなりにあったし、挫折もたくさん味わった。だけど、おおむね幸せに暮らして来たと思う。そんな普通の一生。
それでもかけがえのない一生だ。見ていて感動することもたくさんあった。彼の家族への愛。仲間たちへの愛。仕事への献身。
そういうものを見ていると。この人物との別れの日。命を終わらせる日が来るのがなんだか、寂しくなってくる。そういう意味もあって、今回は長めに時間をとった。
93歳。家族たちに見守られながら、静かに逝かせてあげることにした。
そろそろかな? と思いベッドの中にいる彼の体から、魂を切り離す。
彼はすっと、息をしなくなる。
家族がわっと、涙を流しながら彼にすがりつく。この場面は何度見ても慣れないものだ。
魂はふわふわと、天の国へと帰っていく。
お仕事終了。
さあ。俺も天の国へ帰ろう。そして、しばし休んだ後また仕事が始まるのだろう。次はどんな人間の担当になるのか? 楽しみでもあり、不安もある。
これが、死神のお仕事・・・。