まあこ 入学する
校門を入って、張り出された掲示板を見たところ私は一年B組だった。
この学校ABCDEなんだ。
成績順だったら嫌だなぁ。
指定された昇降口で、一年B組と書いてある場所探した。
なんと、下駄箱に名前シールが貼ってある。
岡田真亜子と書いてあるのを探す。
小学校の入学のときはひらがなだったなぁ。
中学の時はどこでも好きなところにどうぞだったけど。
おろしたてのローファーをそこに入れて、新しい上履きを出す。
バレーシューズって、小学生みたいだ。
これってカラフルに色を塗ってもいいのかな。
周りの人波に乗って行くと、一年A組と書かれ横にC組E組と続いてる
B組はどこ?
「あれ。B組がない」
私のほけっとした言葉に隣にいた背の高い男子が教えてくれた。
「B組二階だよ」
なんで?
指さされた階段を上がってみると、目の前に一年B組と書かれたプレートの下がった教室があった。
なぜだ?
教室の後ろの扉からそっと中を覗いてみたけど、フツーの教室だった。
黒板に紙が貼ってあって、そこに席が示されていた。
岡田は廊下側の前から3つ目の席だった。
隣は誰だろう。
鞄を机の横にかけて席に座ったとたんに肩を叩かれた。
「よっ。俺、岡本修史。あんたの名前は?」
さっき下の廊下でB組は二階だと教えてくれた人だった。
「私。岡田真亜子」
「まあこ?変な名前だな。まあこまあこまこでいっか」
変な名前とは失礼な奴だな、それに人の名前を省略すんなよ
でもまいっか。
「ならあなたはまあ君でいいかな?」
「なんだよその子供っぽい呼び名」
「だって私のこと、まこって呼ぶんでしょ。なら私がまさふみからまぁ君だっていいじゃない」
「せめて君取れよ」
「まぁ?おかしくないかな?」
「なんだよそれ。もうまあ君でもまあちゃんでもいいって」
まさふみ君は笑い出した。
なんか感じのいい人だなっておもった。
「なんでB組が二階なのかしってる?」
「担任がじゃんけんで負けたって聞いてる」
なんだそれ。
「とりあえず一年間よろしくな」
「こちらこそよろしくね」
それから、だんだんと人が増えてきて、先生がやってきて講堂で行われる入学式の説明が有りーの行きーので一日が終わった。
私の前の席は浅羽哲也君、その前は阿久津杏子ちゃん。
なんと杏子ちゃんは寮で私の隣の部屋だった。
知らなかったよ。
杏子ちゃんは美人で可愛い。
見ているだけで、眼福眼福。
哲也君は、メガネ男子だ。細いフレームのメガネがとても似合う。
「浅羽君のメガネとっても素敵ね。似合ってる」
「わーお、誉められちゃったよ。岡田さん、修史のこと名前で呼んでるんでしょう?
僕のことも名前でいいよ」
「哲也君てっちゃん哲君?うーん、私としては哲也君って呼びたいかも。
それと私のことはまこでいいよ。クラスでの呼び名は統一したいから」
「それって、俺がまこって呼んだから?」
「そう、まこって呼ばれたの初めてだから、なんかちょっとうれしい」
「私もまこちゃんって呼んでいい?」
「じゃ、私も杏子ちゃんって呼ぶね」
すごいぞ私。
初日からお友達候補が三人もできた。
みんなと仲良くできるといいなぁと思った。
私立常盤高校は全寮制で、常磐大学の付属高校だ。
付属高校の中には普通の全日制で寮じゃないところもあるらしいんだけど、ここは全寮制。
きっかけは海外赴任に連れて行けない子女のために寮完備となったと聞いている。
親が海外赴任なんてすごいね。エリートだね。
うちはフツーのサラリーマンだし、祖父は農家だけど地元の権力者ってやつで市議会の議員もやったことが有るらしい。
だもんだから、私の虐待されているっていう脅しにびびってお金を出したみたい。
まぁ、虐待って言えば虐待だよね。見て見ぬふりしていたし。
今は全国各地からお勉強のできる子やスポーツ特待生とかが来て、学校の名を上げるためにそれぞれ頑張ってるみたいよ。
一にも二にも学校の名を上げろっていうわけじゃない。
そこのところはもう少しおおらかかな。
自分がしたい勉強したいスポーツを極めるために、環境を提供しましょうって感じ。
そのうえで学校の名を上げてもらえたら嬉しいですっていう雰囲気。
ただし、学費は馬鹿っ高い。
父が兄の大学費用より高いと言って居たっけ。
もちろん寮費食費学費その他もろもろ込みだから、家にいない分安いんじゃないのって言ったら、まあこがいない分別のお金がかかるって言われた。
そこまでわかってたんなら私にその分くれたらよかったのに。
そうすれば、バイトとあきらめて家事やおさんどんだってやったよ?
みみっちく多少のお金を惜しんで私をこき使うから、大きなお金が出ちゃうんじゃんか。
ま、この先頑張ってほしい。
とりあえず家に帰る前に胃腸薬は買った方が良いと思うの。
スポーツ特待組はスポーツ寮ってところに放り込まれてる。
通学時間って結構時間取られるものね。
校内に寮があるから、時間を気にしないで練習できるっていいよねって言ったら、
まぁ君がその分しごかれるわけだと黄昏ていたよ。
でもスポーツ寮のご飯美味しいらしいよ。
だからがんばれ。(*^-^*)
身体を作るために朝からきちんとした食事が提供されていて、食べた量もきちんと計るらしいよ。
食べ過ぎたら、追加で走らされたりしてねと笑っていたけれど、マジかも。
お勉強組は普通の寮です。私たちと一緒ね。
一応寮は個室です。一人一部屋。お風呂は時間が決まっていてその間に入る大浴場。
洗濯は洗濯場に洗濯機が10台乾燥機が8台あります。
でもさ、自分の衣服だけなのでそんなに大きな洗濯機が必要なわけじゃないよなぁって思う。
スポーツ寮は特大洗濯機が有るらしいよ。確かにユニフォームとかタオルとか結構な量になるだろうしね。
一度見に行きたいと言ったら、スポーツ寮の中にかなりイケメンの有名選手がいるらしいので、立ち入り禁止だとまぁ君が言った。
なんでも、イケメン先輩の下着を狙って女子が不法侵入したんだって。
すげぇ。
下着よか中身じゃないのかって言ったら、まぁ君と哲也君が私のことを呆れた顔で見た。
だって、年頃の兄と弟がいるんだよ?
今更男のパンツでキャーキャー言うかよって言ったら、杏子ちゃんがまこちゃんイケメンって言った。
使い方違うし。
それに言っちゃなんだけど、夢精したパンツまで洗わせようとしたので、兄の顔にそのパンツ投げてやったこともある。
「兄、自分の恥ずかしい写真ばらまかれたくなかったら、こういうのは自分で洗え」
って言ったら、そそくさと洗濯機に入れて洗っていた。
後で母に、パンツ一枚で洗濯機回すなんて不経済だと言われたので、
「わかった、次は兄の夢精のパンツとお母さんの下着一緒に洗う」
と反撃した。
「それは絶対いやー」と叫んでいたけれど、なんで自分が嫌なことを人に押し付けるのだろうと思う。
弟はその一件を見て、こそこそと自分でパンツを洗っていた。
ついでに溜まったごみ箱の中身も自分で捨てないと、その写真ばらまくと言ったら、しおしおとごみを捨ててた。
人に家事を任せるって言うことは、自分の弱みをさらけ出すって言うことだと学習しろ。
友達やガールフレンドに見せたくないものを一々写真に撮っているんだ、私は。
親せきや友人に見せたくないだろう物を、いちいち写真にとって使いどころを考えていたんだ、私は。
児童虐待って子供が小学生くらいまでじゃなかな。
その先はこのネット社会、親を抹殺するための証拠硬めの仕方なんていくらでも転がっている。
今不条理に悩まされている子供たち。
しっかりと証拠を取っておきなよ。
暴言を吐かれたらなんでもいいから録音しろ。
殴られたら、病院に駆け込んで親にやられたことを言いたまえ。
飯を抜かされたら、近所で申し訳なさそうにご飯をくれなくて、うちってそんなに貧乏なんですかねって言いふらせ。
死んじゃったら終わりだよ。
せっかく生まれて来たんだから、自分で何とか生き延びて楽しく生きようよ。
私は私のやり方で、親兄弟親族を脅して、もちろん合法的に、やっと心身ともに健やかな学校生活を手に入れた。
だから、学校で頑張る。
もうあそこには戻りたくない。