5話 衛兵は優秀
現在、俺は後ろから追いかけて来る衛兵の集団から全力で逃げている。
……どうしてこうなった!
ナスリアさんと別れてから1時間も経ってないぞ!?
行動が早すぎるだろうが!
しかも闇雲に追ってきているわけじゃなく、陣形を組んで確実に追い詰めてやがる。
このままじゃ時間の問題だ。
何処かでやり過ごすか?
いや、これだけ統率力がとれているんだ。
すぐに見つかる。
かと言って走り続けていても……!
ん?
あれはダンジョンか?
……あそこに入るしかないな。
出来るだけ入り組んでいてなんかすごい迷宮であってくれ!
ダンジョンってことはモンスターがうじゃうじゃいるわけだ。
だが《スニーク》を持ってる俺の方が衛兵よりモンスターには見つからないだろう。
奴らがそれに対処している間に俺は全力で逃げる!
それしかない!
石造りの入り口には人が群がっている。
俺はその人混みの隙間を手早く抜け、重装備の人達を横目に見つつダンジョンに突入した。
中はゲームでよくある感じのザ・ダンジョンってやつの遺跡タイプ。
入った瞬間分かれ道があった。
右はただの通路。
左にはスライムの群れ。
当然左だ!
スライムでもいい、少しでも足止めしてくれ!
大人数の衛兵達ではたとえスライムと言えども抜けるのに時間はかかる。
俺は蠢くスライム達を当たらないように飛び越えながらかわしていく。
「なんでわざわざこっちの道に!」
「迷うそぶりも見せなかったぞ!」
「スライムの群れなんかどう考えても自殺に等しいだろ!そうまでして捕まりたくないのか!?」
後ろから叫び声が耳に入るが聞いている場合ではない。
とにかく深く、より下層へーー!
ーーどれだけ走っただろうか。
いくつ階段を降りたのかも覚えていない。
だがもう追って来るものはいない。
その場でへたりこむ。
俺は、逃げ切ったぞ!
ざまあみろ王め!
はーっはっはっは!
……だがここに危険がないというわけではない。
ここは、何階層だ?
辺りを見回す。
階段の側の壁にプレートが埋め込まれている。
『59』
つまり、ここは59階層?
………。
たしか、王都のダンジョンって王国屈指の難関ダンジョンって聞いた気がする。
そのため現在攻略されているのは40階層にも満たないとか。
……別の意味で死ぬわっ!
だが待て、未開の地と言うことは言い換えれば人が来ないと言うこと。
よし。
方針は決まった。
俺はここでサバイバル生活をするぞ!