4話 メイドさんぐう有能
〜前回のあらすじ〜
王宮から脱走しようと思ったらドアの前にメイドさんがいたぜ!
ってそんなこと言ってる場合じゃねえぇぇ!
ど、どうにかして乗り切らなければ!
「ご安心くださいませ、遥様。私はあなたの味方です」
へ?
「味方?」
「はい、遥様のその出で立ちを見るに一般職の方々の遠征のことをお知りになられて脱走をお考えですか?」
………洞察力が良過ぎるんですけど。
たしか、ナスリアさんだっけ?
メイドさん達の中でも俺とよく会話する方の人だったから覚えている。
「ま、まあそのつもりなんですけど……ナスリアさんはなぜ俺に味方を?なんでここに?」
手助けするつもりで罠にはめられるかもしれない。
信用できるかどうか慎重に判断せねば。
「質問にお答えする前にひとまずお部屋に入りましょう。ここでは人に見つかる恐れがあります」
「あ、ああそうだな。わかった。入ってくれ」
「失礼します」
ナスリアさんを部屋に招き入れる。
そしていつでもナイフを取り出せるように構えて座る。
「唐突にこのようなことを申したのでは遥様も疑われることでしょう。ですが信じて欲しいのです。遥様が王宮から逃げ出せるチャンスはおそらく今夜のみ。王は明日にでも遠征の件について召喚者様達にお伝えになられます。もはや一刻も猶予はありません。どうか、信じてください。」
………。
「わかった。俺はどうすればいい?」
「っ!……ありがとうございます。私が王宮の外までご案内します。付いてきてください」
そう言って立ち上がったナスリアさん。
俺は信じる事にする。
もしこれが嘘だったのならどっちみち終わりだ。
今目の前にいる出会って1週間しか経ってないこの人に全てを託す他ないのだ。
そうして俺は《スニーク》を発動させながら後を追った。
「ここが城下町です。私が案内できるのはここまでです」
俺と彼女は現在見事脱走に成功していた。
……まさか隠し通路の中に隠し通路があるとはなぁ。
「ありがとうございましたナスリアさん。この恩はいつか必ず返します」
「いいんです。私がしたいと思ってした事なので」
彼女は優しく微笑みながら答える。
「こちら、路銀になります。少ないですがお使いくださいませ」
そう言えば無一文だった。
ここは貰っておくべきだろう。
「本当に、なにからなにまで………」
「お気になさらず。では、私は戻らなければなりませんので。どうかご武運を。そして……」
とびきりの笑顔を俺に向けた。
「必ず、また会いに行きますから」
それだけ言って来た道を戻っていった。
………。
びっくりした。
なんでここまで協力的だったのか分からないけど、彼女のおかげでここまで来れたんだ。
俺は後ろ姿の彼女にぺこりと頭を下げてからこの場を去った。
必要な描写がことごとく抜けている気がする……。