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家出するなら異世界へ 妖怪に愛された私の異世界魔王の喫茶店ライフ  作者: 茶山 紅
家出01 家出するなら放浪中
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六話 お料理しました。


「人間が生きていくうえで必要な者。それは衣食住だ。

 その中で最優先は食だ。人間、食べるものが無かったら困るからね」

 その言葉にアカネも同意する。

「たとえ貴族だろうが平民だろうが金持ちだろうが貧乏人だろうが関係ない。

 食べていくのが大切だ。そして美味い食べ物というのはある意味、麻薬だ。

 拷問の特訓で痛みや自白剤に耐える特訓はできる。

 美味い料理を耐えることができる人間はいないからな」

 その言葉にアカネは納得する。

「わかりました。ならどんな料理が良いですか? 希望を言ってほしいんですけれど」

 そうアカネは言う。

「そうだね。できるなら新商品になる料理。

 屋台で売れるような料理で材料はありふれた……自然薯を使ったのが良いね」

 自然薯。ジャガイモのことだな。

 そうアカネは思い返す。

 どうやらこの世界にはジャガイモがあるらしい。

 まあ。ジャガイモはわりとメジャーな食材である。米やパンの代わりになるうえに保存はきく。しかも荒地でも育てることができる。肥料が必要なのが難点だが育てる場所はさほど困ったりはしないのだ。

 ただし保存方法などに失敗すれば毒が出たりする。その毒は有毒性が強く下手をしたら死んでしまうことがある。そのことから悪魔の実と呼ばれることもある。

 どうやらここではその心配はないらしい。

「どんな料理が有名なんですか?」

 逆にアカネとしては尋ねるしかない。何しろジャガイモは万能食材といっても過言ではない。ポテトチップなどのお菓子からちょっとマイナーだが麺になることもできる。和食から洋食などの多種多様の料理がある。

 すでにある既存の料理だと困るだろう。そう思って言えば、

「ん? 自然薯なんてゆでて食べるしかないだろ」

 どうやらかなり料理は遅れているようだった。

「それならいろいろな方法がありますね」

 そういってアカネは自信たっぷりに言うと調理場に案内してもらった。

 案内してもらってたどり着いた調理場。

 幸いにも料理を作るための場所ということもあって技術が発展していた。

 もしも薪で火をつけるとかそういうレベルだとしたら別の意味で困っていたほどだ。

「まずはそうですね。ポテトチップスとフライドポテトを作ります。

 材料は自然薯と塩です」

 用意されていた自然薯はやはりアカネのしるジャガイモと同じであった。

 まず自然薯を程よい大きさに縦長のスティック状に斬る。

 そしてある程度、切ったら水に入れて塩を入れてゆでる。

 その間に今度は別のジャガイモを薄切りにする。ピーラーのような道具がなかったので包丁で薄く切る。

「専用の道具があれば楽なんですけれどね。

 ピーラーなんかあったら皮むきが楽だし」

 そうアカネが言うとその装置について聞かれたので絵でかいて説明をする。

 包丁で切る関係上、ちょっと大変だったのでポテチの材料はさほどない。

 そしてうでている方に火が通り串で指してすっと通るようになったらお湯から取り上げて水切りをする。その間に油を鍋に入れて熱する。

「そんなに油を使うのか?」

 驚いたように言うヨハンに、

「ああ。故郷だと油は何度も越して使うんです。

 金網とかで汚れを取りのぞいて取っておくんです。

 最近だと墨とかそういうので越して汚れをきれいにして言って何度も使うんですよ」

 そうアカネが説明するとそちらにも興味を抱かれた。

 越す部分は定期的に変えないといけないことを言うがむしろそれを繰り返されることで別の収益になるとエルダは言う。

 すさまじい勢いでメモをしているエルダを無視してアカネは料理を続ける。まずはポテチのほうだ。薄切りにした自然薯を油にくっつかないように入れる。

 薄切りなのですぐに火が通りそれを上げて油をきる。

 そしてアツアツのうちに塩をまぶす。

「今回は基本の塩をまぶすだけですけれど・・・。故郷だといろんなバリエーションがありましたね。チーズを振りかけたり青のりをまぶしたり……」

 アカネはコンソメ味がひそかな好物であったがあれは過程で再現は難しい。

「他にもスパイスとかまぶすと面白いかもしれませんね」

 そういっている間に今度はフライドポテトも作る。上げ終わった油はさほど汚れていない。衣がない分、さほど油も汚れにくいのだ。

 同じように塩を振りかけて見せる。

「アツアツのうちに食べてください」

 そういえばヨハンとエルダ。そしてホムラ達は食べ始めた。……ホムラはどんな代物か知っているのだが……。

 その様子に苦笑をアカネが浮かべている中で、

「おおお!」

 そう簡単の声を上げたのはエルダであった。

「パリパリの触感。シンプルな味付けだがその分だけ応用が利くという証明。

 しかもこの触感は癖になる。

 どちらも簡単で単純だから難しい技術もいらない。

 子供も好みそうだがエールにもあいそうだ」

「喜んでもらえてよかったです」

 歓喜の様子にアカネはそう苦笑を浮かべる。

 ヨハンの方も気に入ったのかフライドポテトのほうを延々と食べ続けている。

「応用はいろいろとききますから……。

 ただ見た通り簡単ですからちょっと料理ができる人ならすぐに思いつきますね。

 だからこの店オリジナルという形にはできませんよ」

「いや。それでも構いませんよ。

 最初に出したお店ということから流行り始めても元祖という名前を付ける。

 それだけで客足は来る」

 この世界にも元祖という言葉はあるんだな。

 そうアカネは思った。

「えっと揚げるのを早めたいならフライドポテトはゆでた方が良いですね。

 それとポテトチップスの方は見ての通り薄く上げているのですぐに砕けます。

 だから持ち運びとかにはあまりむいてませんね。それに数日、放置しておくとパリパリ触感がなくなって触感がなくなって台無しになってしまいます」

 市販されていたものは水を触れないアルミ製品の袋を入れていたのだがそれはなかった。とはいえ、

「まあ。それでも半日程度ならば大丈夫です。

 むしろ問題はフライドポテトですね。こっちは冷めると明らかに味が落ちますし半日もしたら中の水分でしなびてしまいます。

 それとどちらも塩とか調味料をかけるといしたら早めの熱々のうちが良いです。

 その代わり単純だがから屋台とかそんな感じでどこでも売ることができます」

「確かに……。材料も主に自然薯だからどこにでも手に入る。

 まねさせやすいが逆に誰が作ってもさほど味に変化はない。

 むしろ応用が利く分だけいろいろは方法がある。

 うん。これだけで十分な対価だ」

「本当ですか?」

 エルダの言葉に逆に驚くのはアカネだ。

「いや。妥当だろう。大量にどこからでも手に入る商品。それの新しい調理方法。

 応用も聞くし難しい手順じゃないから作り手を選ばない。

 どこでも好きな場所で商売が可能だ。正直、利益は大きいよ」

 そうヨハンは説明したのだった。

「うーん。こうしてみるとそうだね。

 飲食店経営は確かに向いているね。

 ただ一つ聞くけれど経営の勉強を君はしたことあるかい?」

「あまりしたことないんです。一応、原価とかそういうのを独学で学びました。

 けれどあまり自信がないので……。

 なので故郷にいたころの将来設計ではどこかの飲食店で勉強をしつつ学ぶ。

 そこで経営に必要なことなどを学び料理店をするという予定でした。

 ただ両親がちょっと問題があって故郷にいられなくなってしまったんで……」

「なるほどね。

 これはあくまでアイデアだけれど」

 そう前置きしてエルダが言う。

「ヨハンが経営者。そしてアカネが料理人という形はだめかい?」

「「え?」」

 その言葉にヨハンとアカネは驚く。

「悪いアイデアじゃない。

 そもそも有名な料理店などでは経営をするものと料理を作るものが別人というのは珍しくない。料理のメニューなどを考えたりするが経営戦略などを考える経営者。

 それぞれが得意分野で支えあう。

 けしておかしな話じゃないさ」

 そうきっぱりというエルダ。

 エルダの言うことはおかしいことではない。

 アカネが考えているような小さな喫茶店だと珍しいだろう。とはいえ、大きな飲食店ならば話は別だ。

 日本というか地球でも有名なチェーン店のレストラン。あるいは大手のホテルの中で行われているようなレストラン。

 そういうところではシェフがいるが経営などをしているのは別の人間である。

 どちらが偉いとかどちらがすごい問うわけではない。

 そもそも料理を除いてもそういった考えは珍しくない。特に技術職と評される仕事の場合、ただそれだけを集中して技術を磨くものは少なくない。

 だが、それゆえに他の事。金銭感覚がいい加減なものも多い。

 なので経営にたけたものがフォローするというのはよく聞く。

 そしてそれはこの世界でもそうだった。

「まあ。そういった偏屈の職人気質がアカネさんにはないが……。

 アカネさんは世間知らずだ」

「あー」

 その言葉にアカネも否定できない。

 何しろアカネはこの世界で暮らしていたわけではない。そのためにこの世界では五歳になる子供が知っていても普通の常識すら知らないこともおかしくないのだ。

 それを考えると店を作るのは難しいだろう。そう思っていたら、

「だからお前が補佐をするんだよ」

 そうエルダさんはヨハンを指さして言ったのだった。

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