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家出するなら異世界へ 妖怪に愛された私の異世界魔王の喫茶店ライフ  作者: 茶山 紅
家出02 家出して開業しました
20/21

十六話 開店するならお客が来る 豚汁セット前編

ようやっと書きたいシーンを書けるようになってきました。


 かくしていろいろあって開店となった。

 とはいえ、お客さんがたくさん来ることはないだろうと言うのは予想していた。

 どちらかというと試食的に新作料理を作る。

 そのレシピを売るというのが基本としての目的としていたようなものである。

 なので様々な料理を作ったりしている。

 エルダからのつてでヨハンが珍しい食材を入手するのも大きい。

 またエルダも味噌や醤油といった得意としている和食などの調味料を自作してみたりしている。とはいえ、さすがにプロが作る品質を用意するのは難しい。

「調味料一つでもやっぱり職人さんとかはすごいと思いますね」

「まあ。確かに」

 塩や砂糖といったものならともかくだ。

 酒やお酢、醤油や味噌など加工調味料と評される品々。

 それは作り手によって味わいが違ったりするのだ。

「そういえば米でお酒も造れるんでしたっけ?」

「はい。ただ麹から作るし……。

 そういうプロとかが必要なんでしょうけれど……」

 アカネはあくまでも知識はある程度だ。

 知識はあるが実戦経験はない。

 料理の経験こそあるがさすがに醤油や味噌などを自作することはなかった。

 一応、家は歴史がある旧家であり自身はそこのお嬢様だ。たとえ扱いが使用人以下の扱いだとしても味噌や醤油を作らせたりはしない。と、言うかそもそもそういった独特のにおいが発生するだろうことは基本的に趣味や道楽という扱いだ。

 現代日本では味噌も醤油も買おうと思えば買えるのだから……。

「そもそも味噌も醤油も歴史があるからなぁ」

 ごく初期のものならばともかく……。

 今ではいろいろと研究をされているのだ。

 それを作り上げるというのは一日、二日でできるわけがない。

 それならば高級品などと言われることはないだろう。

 材料だってそう簡単に全てが手に入らない。

 基本的に必要なのは大豆なのだが大豆だけでできるわけではないはずだ。

 とはいえ、

「異世界で料理を作る物語に憧れはしたけれど……。

 本当にそうなる予定を考えてはいなかったし……」

 あたりまえとはいえば当たり前だろうが……。

 とにかくそういったわけで醤油も味噌も手に入らない。

 そもそも日本酒も手に入らないしみりんも手に入らないだろう。

 手に入るのはお酢だろうが……それもワインビネガーであり日本特有のお酢である米酢は手に入らないだろう。

 そう思っていると、

「そうでもないと思うぞ」

 そう言ったのは焔だ。

「どういうこと?」

「この世界でも米がある。

 そしてそれを作れる妖怪を呼び寄せればよい」

「妖怪が味噌や醤油を作れるの?」

「味噌舐めじじいといって人を田んぼに落とす妖怪もいるんだぞ」

「それ。どこに味噌要素が?」

 疑問を口にする。

 むしろそれははた迷惑な田舎のじいさんだったのでは?

 そう思ってしまう。

「そんなの連れてこられても困りますが……」

 ヨハンもそうあきれたように言う。

「まあ。それはさておいてもだ。

 醤油や味噌の工房にいた付喪神なら話は別だろ」

「つくもがみ?」

 焔の言葉にヨハンが怪訝な顔をする。

「長い年月がたった道具が妖怪へ転じた姿だ。

 唐傘お化けや化け草履、瀬戸大将なんかもそういったつくもの一種だな。

 名もない付喪神でも今までどういう道具だったのか。

 その本質は変わらない。

 だから醤油や味噌を造るのも材料さえあれば簡単だ」

「材料は必要なんですね」

「ゼロから一を作り出すなんて不可能だよ」

 ヨハンの言葉に焔はそう応えたのだった。 

「けれど必要なものはなんなんだい?」

「さほど難しい品ではないですね。

 まず必要なのは塩です」

「さすがにそれは手に入るよ」

「それはわかります」

 アカネの言葉にヨハンがそう応えればうなずくアカネ。

 この世界でも塩は普通に……でなはいが存在している。

 海が近い場所からではないと基本的に手に入らない。べらぼうに高いというわけでは無いがきちんと販売している状態である。

 そういったことは短いながらもアカネはそううなずいた。

「次に小麦です。

 これも手に入るのはさほど難しいことではないと思います」

「ああ。塩と小麦は質はさておいて手に入れるのはさほど難しくない」

「けれど次に必要な品が問題なんです」

 そうアカネが言う。

「まず大豆。

 これが無ければ味噌も醤油も作れません。

 あと、豆腐も作りたいんですよね。

 それにも大豆が必要ですし……。

 和食にはなんだかんだと必須な品なんです」

「大豆?」

「豆の一種です。

 まあ。さほど珍しくもないしなんなら育てるのもさほど難しくないんです」

 大豆は応用が利きやすい。未成熟なら枝豆。育て方をちょっと変えればもやし。成熟したら大豆となる。

「豆か……。

 エルダ師匠に頼んでいろいろと見せてもらえばわかると思うよ」

「はい。

 そしてこれが一番、心配なんですが……。

 麹が必要なんです」

「……こうじ?」

 出てきた言葉にヨハンが眉をひそめる。

 やはり思った通りだ。

 どうやらこの世界に麹というものは存在していない。

 あるいはとても珍しいものらしい。

 正直、予想はしていないわけではなかった。

 麹。

 塩麹など言われており日本は家庭にも会ったりすることもある。それだって麹をお店などで購入した代物だ。つまり麹を作るというのはめったに聞かないものだ。 

「自作するにしても雑菌が怖いからなぁ」

 麹は麹菌が発生することで作られる。

 だが、これらの気をつけるのは他の菌が発生する可能性があるということだ。

 これが納豆菌やパン酵母などならばまだよいだろう。

 けれどもそうでない。

 病原菌などを作ったら大変なことになってしまう。

 それを考えると厄介なのだ。

「味噌造りとか経験とか知識とか手伝える妖怪がいたら……」

「手伝えるぞ」

 アカネの言葉にそういったのはホムラだ。

「へ?」

「アカネ。オレをなんだと思っているんだよ。

 オレは座敷童だ。

 天童家と契約する前もいろいろな商家に行き来していたんだよ。

 その中には醤油や味噌を造る場所もあったさ」

 そうホムラが言う。

「それにオレは家の守り神。

 そして商売繁盛を司っている」

 そうホムラは言う。

 座敷童。

 妖怪の一種としても数えられているが神の側面を持つ。

 元々、妖怪の中には土地が実や守り神を司っているというのは珍しくない。

 人を襲う危険な妖怪もいるがそれだけではないのだ。

 人を守る。土地を守る。場所を守る。

 そういった性質を持つのは妖怪というよりも神の側面がある。

「まあ。努力を怠って自堕落にしていると見限るんだけれどな。

 とにかく味噌や塩のための麹菌を作り出すというかそういうの。

 美味しいのが作れるような幸運を引き寄せるぐらいは可能だ」

 発酵など運次第の要素というのは否応なくある。

 とはいえ、

「けれど、味噌も醤油も全て自作していくのはなぁ」

「そこはエルダさんに相談すればよいはずですよ。

 基本的な材料と作り方。

 それがあって美味しい料理が広まれば十分に利益が出るはずです。

 それまでは……自作するしかないだろうけれど……。

 量を作るにしてもそういうのは練習が必要でしょうし」

「確かに……既存の洋食でも醤油や味噌が隠し味にもなるし……」

 以外かもしれないが味噌と牛乳は不思議と会うのだ。

 そもそもチーズと牛乳もあうのだ。

 醤油も意外と洋食に合う。

 それを考えると一理あった。

 とりあえずというのは残っているのを使っていくということだ。

 さすがに自作というのは限界が来る。

 アカネはさほど器用なたちでは無い。

 そもそも器用だったらもうちょっとマシな生き方ができていたはずだ。

 不器用ながらも好きを突き進める。

 不器用ながらも信念を貫く。

 そういったところがある。

「作り方のレシピとかをお願いね」

「了解。

 まあ。全てをお前だけでやる必要も無いしな」

「そういうこと」

 自給自足というのも理想だが……。

 誰が仕事になるのならそれでよいだろう。

 質のよい醤油や味噌を造ってくれるならばむしろそれを専門にしてくれる職人がよい。料理の片手間につくり続けるのはいずれ限界がくるだろう。

 それはホムラも望んでは居ない。

 そう思いながらもレシピなどを作り上げていく。

「幸いなことに麹菌さえあればあとは出来るはずだ。

 完成するのにそいれなりの時間はかかるだろうな。

 少なくとも商品として売れるようになるのには時間がかかる。

 だが、ハマればうまいはずだ」

「確かに塩分だけじゃないうまみ成分もあるしね」

 醤油も味噌も塩が含まれているがそれだけではない。

 うまみ成分などの他の成分もある。

 そのためたんに塩だけで味付けをするよりも味に深みが出るのだ。

 そんな今後についての相談をしている中だった。

「あの……すみません」

「あ。いらっしゃいませ」

 客が来た。

 そのことにアカネはすぐさま返事をしてホムラ達はいつの間にか姿を消す。

 ヨハンもすぐに立ち上がり近づき、

「どうぞ。こちらへ」

 と、席へと案内する。

「あ。すみません。

 あのここは」

「飲食店です。

 お客様」

 そう言ってヨハンは笑みを浮かべて説明をする。

「お客様はどうやってこの店に?」

「あ。いえ……ただその道を歩いていて……」

「まあ。そうですよね。

 そうではなくて……この店にどんな理由で入ったんですか?

 なんのお店かもわからなかったのでは?」

「あ。はい。

 と、言うか店だとすら思わず……。

 ただ気がついたら開けていました。

 そのすみま……」

 そういった瞬間だった。

 男の腹の虫が盛大になった。

「どうぞ。ここは飲食店。

 空腹のまま客を帰したというのは恥ずかしい行為。

 それも客がいないんだからよけいにね。

 今ならオープン記念でお安くしておりますよ」

 お安くという言葉。それに空腹もあって男は席へと座る。

 そして、

「お客様はどのような料理をご希望ですか?」

 そうアカネが尋ねる。

「あ……その……。

 最近、忙しくて……。

 とにかく栄養が採れるものをお願いします。

 けれど……実はちょっと忙しくて……。

 出来れば早く帰れるとよいんですが……」

「わかりました。

 手早くかつ栄養たっぷりのものですね。

 それならこれがよいですね」

 そうアカネはいうとすっと奥へと向かう。

 それを見ながら男は困惑したように周囲を見渡した。

 男の名はユードリッヒ。

 つい最近、騎士団に入隊したばかりの若者だ。

 騎士団に入ったばかりなのだが……。

 ここで不運が重なる。

 彼は平民出身の彼が入った中に鼻持ちならない貴族がいたのだ。

 偉そうな男は有名な家柄の……それも騎士としては有名な家出身。

 その男が偉そうに同じ平民出身はもとより自分よりも地位が低い相手も見下している。

 そして小間使いどころか奴隷のようにこき使ってくるのだ。

 今日も本来ならば全員でやるのをその男が命令して自分達がやるのだ。

 それでも一人抜けただけで楽になるはず……が外面だけがよいこの男。

 自分一人でやると言って他の部隊を強制的に帰らせたのだ。

 おかげで残りの面子はほぼ徹夜状態でその仕事をしている。

 そうしてなんとか帰ってきたのだがあと数時間でまた騎士団の訓練所に行く。

 おかげでろくな睡眠も食事もとれていない。

 それなのに騎士の訓練は過酷。

 このままだと立派な騎士になるよりも先に死ぬ。

 そう男はわりと本気で思っていた。


 そんな疲労に気づいているのかはわからない。

 ただ女性はにっこりと笑うとわかりました。そう言って何やら用意を始めた。

 改めてみると女は異国出身なのだろう。

 妙に平たい印象を与える顔立ちをしている。

 不細工というわけでは無い。

 整った顔立ちだし所作は丁寧だ。

 ひょっとしたらそれなりに裕福な家柄の出身なのかもsりえない。

 それがどうしてこんな人気の無い飲食店で料理人をしているのか?

 訳ありか道楽か……。

 前者ならともかく後者ならば出てくる料理の味が期待できなくなる。

 そう思いつつも周囲を見渡す。

 自分以外に誰も居ないはずなのに人気を感じる。

 そんな中で用意されたのが、

「お待たせしました。

 豚汁セットです。

 豚汁のおかわりはありますから」

 そう言って差し出されたのは何やら見たことも無い料理だった。

 まず目立ったのが手前の料理。

 何やら器に盛られたそれは肉と菜っ葉だろう食材。そして白い……どこかで見たようなのが上にのっている。

 あいにくと料理は不得手でありせいぜいが野営の料理。

 それも肉を焼いたり水を沸騰させることが出来れば大丈夫。

 そういったとにかく胃に入れるための準備に近い作業しかしない。

 そのためにわからないがとりあえず独では無い様子だ。

 そして隣にあるのは茶色い液体。

 スープなのだろう。野菜や肉がこれまたたっぷりと入っているのがわかる。

 最後にオレンジ色の……さすがにこれはわかる。

 ニンジンを細切りにしたのを炒めたものだ。

 ただし散らばっている何かのタネのい正体まではわからなかった。

 どれもこれもやや茶色い。

 そんな色彩がある。

 とはいえ、平民出身である男から見たら貴族が食べるような豪華絢爛で色とりどり。そんな料理を求めてはいない。

 むしろ落ち着いた色彩に安心すら出来た。

 とはいえ、食べるのにはやはり躊躇した。

 今まで食べたことがない料理だからだ。

 だが、鼻腔をくすぐる香りに胃袋が刺激された。

 とりあえず恐る恐ると肉を口に入れる。

 すると口の中に広がる風味は今まで味わったことがない味付けが広がった。

 口に広がったのは一言で言えば酸味。

 お酢のような口だがそれだけではない。

 塩っ気などもあるが複雑な味付けともいえるうま味が広がる。

 料理をまったくしない自分にはわからない。

 だが、確実にわかるのは濃厚な味付けではないがはっきりとわかるうま味。

 けれど疲れた胃にこれ以上は負担をかけないようにしている。

 さらに白い何かは粉々のような崩れるようなそれが絡まってうま味がさらに広がる。

 おそらくこのタレ単品ならば味付けはとてつもなく濃いだろう。

 けれどもそれを白い何かと葉っぱが和らげてくれて食べやすくしてくれている。

 とはいえ、それだけではどうやっても口が酸っぱくなる。

 白い何かを口に含めばそれだけで口がさっぱりとする。

 否、その酸味が白い何かにあるほのかな甘みを引き立ててくれている。

 おそらく穀物…麦を煮込んだものに近いのだろう。

 ただそれは麦では無いと言うことだけはわかった。

 ただそれでもやっぱり口寂しい。

 今まで食べた料理が美味しかったということも手伝いスープを口に入れた。

 その瞬間にやはり男は驚いた。

 塩っ気があると言えばある。

 だが、それだけではない。

 複雑なうま味が広がるし何よりも様々な具材が入っているのがわかる。

 その具材のうま味が引き出てそして調和をしている。

 何よりも……胃の疲れがとれていく気がした。

 うまいと感じながら男はどんどんと食べる。

 気がつけばお変わりを要求しており白い何か…ご飯を二杯。おかず…青菜と豚肉のポン酢蒸しも二皿。そして豚汁に至っては三杯もおかわりをしたのだった。

 久しぶりにしっかりと食べた実感を得る。

 だというのに胃に感じる重さも痛みもない。

「なんかむしろ食べる前より胃がすっきりしているような」

「大根おろしを使っていますから」

 そう言ったのは店主だろう女性だ。

「ダイコンオロシ?」

「大根という食材をすりおろしたものです。

 大根には消化を助ける作用があるので胃もたれや食べ過ぎの疲れをいやしてくれます。

 他の食材も胃の疲れや疲労回復の効果があるんですよ」

 そう女性は笑みを浮かべて言う。

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