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家出するなら異世界へ 妖怪に愛された私の異世界魔王の喫茶店ライフ  作者: 茶山 紅
家出01 家出するなら放浪中
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十三話 開店準備のための奔放 その3


 やってくる客は紹介もかねて五人。そういったこともあり準備をしておく。まずは飲み物……これは前もって用意しておいたほうじ茶だ。そもそも茶葉は紅茶もウーロン茶もそして緑茶も実は同じ茶葉だ。生の茶葉を入荷してもらいそれをそのまま蒸したのが緑茶。とはいえ、独特の苦みがあるのでこれを炒めて焙じ茶にした。

 そしてスープ……汁物の準備だ。キノコと昆布を乾燥させたものを水で戻して出汁を取る。鏡のおかげで確実に手に入っており気に入られたら入荷をしてもらう予定だ。

 鰹節は諦めた。手に入れることは出来るがこの世界で再現してもらうのは簡単では無いだろう。

 そして料理の下準備も出来たころに、

「やあ。アカネちゃん。来たよ」

 そう言ってエルダさんがお客さんをつれてやってきた。

 エルダさんが商人ということもあるのだろうが本当に多種多様な人だ。

 一人目は若い男性。金髪に青い瞳という西洋系の典型的な顔をしておりなかなかにイケメンの男性で俳優みたいだ。しっかりとした体つきで姿勢も良く無駄の無い体格。身なりもこの世界基準はわからないが良い用に思える。

 二人目は妙齢の女性。きっちりと赤い髪の毛を結い上げた凜々しい印象を与える女性は現代日本で言うところのキャリアウーマンという印象を与えた。すらりとした体格だが少し心なしか顔色があまり良くない。体調が悪いと言うよりも栄養状態が悪い気がした。

 三人目は中年の男性。ただしよく言う下っ腹が出てきた脂ぎった娘からパパ嫌いとかくさいと言われ始めるような男性では無い。しっかりと鍛えているのだろう。筋肉質で姿勢もよく過去に両親の関係で見たことがあるSP(重役を守ったりする警備員であり格闘技などをしているプロフェッショナルだ)を思わせた。

 四人目は老婆だ。足腰はしっかりとしているし品のよい印象を与える女性で白い髪の毛は銀髪なのかそれとも色が抜けたのかわからない。身につけている服装もそうだが浮かべている笑みが優しそうに思えた。

「いらっしゃいませ。

 本日はきていただきありがとうございます」

 そう私は頭を下げる。

 もちろんヨハンさんも同じだ。

「ああ。こちらも招待いただきありがとうね。

 それでどんな料理かな?」

「はい。簡単な処理などもありますのでよほど時間がかかるということがない限りはある程度のリクエストを受け付けようと思います。

 何か食べたいもの……食材などでどんなのが良いのかという希望はありませんか?

 あと、逆に食べられないものもありませんかね」

「好き嫌いかい?」

 私の質問に老婆が尋ねたので、

「それもありますが……アレルギーの心配もありますね」

 アレルギー。

 その言葉に全員がきょとんとする。

 どうやらアレルギーという言葉は知られていないらしい。

「すみません。私の故郷にある医学の知識。と、言っても一般に広く知れ渡っている知識程度で専門はありませんが……。食べると体調が悪くなってしまう。そういった食材を持つ人がいるんです。……そうですね。特定の植物の汁をふれるとかぶれやすい。そういった方、あるいは貴金属に触れると肌があれてしまう。

 そういった方を存じませんか?」

「ああ。そういえば何人かそういう人がいるねぇ」

 そう言ったのは老婆だ。

「はい。そういう人です。

 他にも特定の植物の花粉でくしゃみや鼻水といった風邪に似た症状が出る人がいます。まあ。こちらはよほどのことがない限りは命に危険はないんですが……。

 食物……食べ物でアレルギーがある方は命に関わる可能性が高いんです」

 そう説明する。

「金属の場合は手に触れる。体の外から腫れる。

 けれどもそれが内側から起きるのが食べ物によるアレルギーです。

 呼吸をするための首を内側から首を絞められるようなものです。

 それに体中の内側がかゆくて痛い。

 想像を絶する苦しみでしょう」

「なるほど……。そういうものもいるのか? それは治るのか?」

「特効薬というのはないですね。

 小さな子供の場合だとしたら成長するにつれて治るものもいますが……。

 あいにくと私は料理人。

 そういったアレルギーの方に無理に食べさせてはいけない。

 アレルギー反応が出やすい食材。それらなどの知識もありますが……。

 医学の知識は何分にも専門外でして」

「うむ。なるほど」

「ですがそういったことを調べているという方はいると思われます。

 ただ基本的にそういう体質の方は自分がこれを食べる事が出来ない。

 そのために拒否をする方も多いです。

 ただ何分にも理解が難しくたんなる好き嫌いというわがままと判断されてしまう。そういったこともありますので」

 そう答えると全員がうなずく。

 とりあえずそういったことは今のところは全員、心当たりがないようだ。

 他にも志向や食べたいものなどを聞く。

 それぞれがいろいろな注文をしたことからそれぞれに会わせて料理を作る。

「できました。

 まずはエルダ様」

 そう言ってエルダ様に用意したのは肉じゃがとふろふき大根。そしてお味噌汁におひたしだ。

「ご要望はいろいろな豚肉と食材を使った親しみやすい料理とのことでしたので……。

 肉じゃが……豚肉とジャガイモをはじめとした食材を使った煮物料理です。

 私の故郷では家庭の味と言いまして……。

 お嫁さんなどが作ってほしい料理としてもよくあがります」

 そう説明をする。

 ジャガイモと豚肉の他ににんじん、タマネギそして彩りを加えるためにインゲンを使う。家によってはこんにゃくなどを入れたりもするがあいにくとこの世界ではこんにゃくが手に入らなかったのだ。

 こんにゃくは癖があるし何よりも原料が毒とされている。

 そうそう使うことは難しいだろうと判断してだ。

「豚肉以外にも使うことができますが一般的には豚肉です。

 材料の大半は長期保存が可能なので冬場でも食べることができます。

 ふろふき大根はシンプルにですが長期間にて、出汁の味をしっかりとしみこませたものです。特製のたれをかけております。

 続いてはお味噌汁。故郷の伝統的なスープです。

 ふろふき大根にも使っている味噌を使ったスープでして具材にキノコを使っています」

 基本は豆腐とわかめだが豆腐はなかったしわかめは不安があった。

 実は海藻は人種によったら食べられないのだ。

 日本人は消化できるのだ国民によっては消化することができないのだ。

 なのでキノコのお味噌汁にした。

 個人的には豆腐とわかめという基本を守りたかった。

「とはいえ、味噌汁は自由度が高いので野菜などもいれることができますし肉もいれることが出来ます」

 あまり具材を入れすぎると味噌汁というよりも豚汁になるだろうが……。

 そう内心で付け足しながらも出す。

 つづいて、若い男性に出す。

「こちらの方はさっぱりとした料理ということでしたので魚料理にさせていただきました。魚の煮付けです」

 幸運にも海の魚の新鮮なものを手に入れることが出来たのだ。

 とはいえ、さすがに刺身に出来るほどではないが……。

 きちんと下処理をしておけば魚特有の生臭さは無くおいしく食べることができる。

 ちなみにふろふき大根と味噌汁は基本として同じだ。

「メインは違うが他のものは同じなんだな」

「すみません。何分にも一人で料理をしておりまして……。

 それにふろふき大根は作るのに数時間かかるんですよ」

「ほお」

 私の説明に驚きがでる。

「大根は食べたことがある」

 そんな中で中年の男性が言う。

「だが、辛みがあるのもあるが基本的に味はない。

 とてもおいしいとは言えないな。水だけは含んでいたし腹にもたまるから空腹時なら生でも食べることが出来ると言う利点があったが……」

「まあ。そうですね。

 すぐに煮込んでも味はしみこみませんが……。

 じっくりと下ゆでなどの下ごしらえをしてゆっくりと料理をする。

 そうすればおいしくできあがりますし……。

 いろんな食材と相性がよく大根があると一体感が出たりするんですよ」

 にっこりと私は言う。

 ちなみに煮込み料理は基本的にゆでた後、冷ましたら味がしっかりとしみこむものが多い。ふろふき大根だけでは無い。

 肉じゃがや筑前煮、魚の煮物や角煮もしっかりと煮込むなど時間もかかるが……。煮込んだ後に冷まして味をしみこませるという作業がある。

 もちろん熱々がおいしいので食べる前にまた煮込む必要があるが……。

 さすがに角煮までは作れない。あれは手間もだが時間もかなりかかる。

 特に大根は野菜の中ではわりと煮込むのに手間がかかる。

 下ゆでをして味付けをする必要があるのだ。

 ちなみに裏技というか下ゆでをするときに米のとぎ汁を使うとよい。まあ。米食がまだ一般的では無い場所ではあまり不便な知識あろうが……。

「まあ。辛みはきちんと処理をすれば抜けますよ。

 まあ。メインとして出すのは難しい食材ですが……」

 和食で大根はよく使われているがメインとして使われることは基本的に無い。副菜や主菜として出したとしても材料の一つ。裏方と言う印象が強い。

 刺身にも出るのに文字通り添え物扱い。人によったらいらないと言う人もいる。おでんでも人気のない具だ。ただ家庭ごとで材料が違うおでんだが大根は必ず出ているというのはある意味、定番と言えるだろう。

 閑話休題。

 そして三人目の妙齢の女性。

「リクエストは食欲が無くても食べられる料理ですね。

 お味噌汁とふろふき大根は一緒ですがメインディッシュとしてあんかけ湯豆腐です」

 そう言って薄味の出汁で煮込んだ豆腐と白菜に長ネギににんじんが入っている。そこに味付けしているあんかけをゆっくりとかけて出す。

「本来ならばお客様の前で作ってゆく形なのですが……。今回はそれぞれ違うということもありこうさせていただきました。

 足りなければおっしゃってください」

 そうにっこりと笑って言う。

「豆腐? とは?」

「ちょっと裏技で手に入れたものです。本当は個人的に使うつもりでもあったんですが……。失礼ながら顔色がかなりわるいようなのでとっておきの食材を使わせていただきました」

 そう私は言う。元の世界から持ってきてもらった豆腐。とはいえ、この女性の顔色がかなり悪い。栄養状態が足りていないようだ。それを考えるとしっかりとした食材を食べてほしいのだが……。食欲が無いと言っているあたりからさっぱりと食べやすい代物。

 それを考えると豆腐が良いと思ったのだ。

「これは畑の肉と呼ばれているものを使った食材です。肉よりもぐっと食べやすくまた太りにくいことで私の故郷では人気の食材です。

 味もさほどこくないので食べやすいと思いますよ」

 そう言ってあんかけ湯豆腐を差し出した。


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