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家出するなら異世界へ 妖怪に愛された私の異世界魔王の喫茶店ライフ  作者: 茶山 紅
家出01 家出するなら放浪中
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九話 迷い家を見つけました


 とにかく援助を約束したがそれにしても迷い家を店にした方が良いだろう。

 それにホムラによると、

「正直に言えばそこならばひょっとしたら米とか味噌とか手に入る可能性があるよ。

 元の世界から輸入というんじゃなくて育て方とか脱穀とか作り方とかを知っている可能性がある。古くからある家だからね。

 僕はあの家にいたから味噌や醤油、みりんや酒を造るところにいなかったし……。そもそも座敷童はそれらの作り方を学ぶ妖怪じゃないんだ」

 との事だ。

 その言葉にアカネも同意する。

 元居た世界からいくつも持ってくるわけにはいかない。

 この世界で生きていくとアカネは決めたのだ。

 ならばあまりいつまでも元居た世界に頼るわけにはいかないだろう。

 そのことを考えると、確かに自作する必要があるだろう。

 幸いなことに料理やその食材。

 それらを作るというのはどの世界でも割と不可能ではない。

 意外な事に食材というのはその世界で多少の違いがあれど似たようなものがあったりする。それを考えると再現は全く不可能ではない。

「少なくとも食材は元居た世界と大した違いがない。

 ならたとえ、醤油やみそが全くなかったとしても……。

 再現は不可能じゃないはずだしね」

 そうアカネは静かに納得する。

「実際、問題としてその調味料って聞いたことがないけれど……。

 材料とか手に入る保証はあるのかい?」

 そうエルダが尋ねる。

「まあ。一応は材料ぐらいはだいたいはわかりますよ。

 一番、手に入れやすいのはお酢というかビネガーですね。

 本物のお酢とはいろいろと違いますが最も似てますね。

 あとは酒」

「お酒ならありますよ」

 アカネの言葉にヨハンが言う。

 ヨハンの言う通りこの世界にも当然ながらお酒がある。

 葡萄を使うワインを始めとしてビールの原型であるエールやラガー。それらを元に造られたのがウイスキーやブランデーなどがある。

「欲しいのは日本酒系列なんですよ。

 料理に造るのだからさほど味には拘りませんが……。

 けれども日本酒はワインなどとは違う味わいですよ。

 そしてそれらの材料に必要な代物。

 それがこのお米なんです」

 そういってヨハンが持っていたお米を持ってきて見せる。

「米は便利ですよ。

 それで米からお酒、そしてお酢にみりんが作ることができるはずです。

 あとは必要なものは大豆ですね。

 味噌と醤油は大豆ですから……」

「大豆なら簡単に手に入るぞ。

 馬の餌だけれど」

 そうエルダは言ったのだった。

「こっちの世界ではわりと便利ですよ。

 そもそも大豆はわりとつかがってが良いんで」

 そうアカネは言う。

 味噌、醤油の材料んあるというのもあるが他にも利点がある。

 豆乳、豆腐、おからなどの品々も和食には無視できない食材だ。

 それに、

「それにもやしに枝豆。いろいろと食材になるんですよね」

 大豆といえば乾いた黄色い豆を思い浮かべるだろう。だが、実際のところ大豆というのは生の状態で緑のさやに入った状態で枝豆。さらに芽というか苗の状態でもやしとなる。

 どれもこれが主食になるというわけではない。

 味そのものもシンプルなものだが、それゆえに料理に多種多様に使えるし飽きにくい。

「食材のすばらしさはわかったけれどね。

 まずは店でしょう」

 そう呆れたようにブラウニーがつぶやく。

 それもそうだ。

「まあ。望む食材が手に入る可能性もありますし……。

 ないものも代用品が見つかるしれません」

 主に見つけるのが難しいのは肉類だろうとアカネは思っている。

 何しろ異世界だ。

 生態系が違う可能性もある。

 そもそも日本の食材……特に肉類の類は品種改良と豊らこそできる良い環境での農畜によって味が保たれているのだ。

 その昔、まだ畜産に力を入れるほど余裕がなかった時代。

 牛は主に労働力として使われていた。そのために牛の肉を食べるとしたらそれはミルクを出すこともなく労働力として働けなくなった足腰が弱ったやせ細った牛であった。そのために筋も大きくストレスや疲労で品質が落ちた固い肉。

 食べている餌も基本として残飯。そのために味に癖もあってあまり人気がなかったという国もある。どちらかというとどんどんと大きくなる上に子供も大量に産む。そして食べるためだけに育てられることがほとんど(単に乳も卵も出さない上に労働力にもならなかっただけだろうが……)の豚肉よりも安値だったそうである。

 まあ。特別な行事などで特別に育てられていた牛などは別だっただろうが……。

 ちなみに同じく鶏もそうである。

 基本的に卵を産まなくなった。あるいは年老いて鳴かなくなった。そんな鳥を使うためにやせ細りこちらもあまりおいしくない。

 対して日本の肉は違う。食べるようの牛、豚、鶏はそれ用の環境を整えられており食材も気を遣われている。最近では地域ごとに特色としてその特産品を食べたりしている。(厳密に言えば特産品の廃棄されるはずの部分であるが……)環境もよく特に牛。

 最上級の牛肉とされるのは下手をしたら人間よりも贅沢といえるかもしれないような環境で育てられているという。

 その肉に比べたらおそらくこの世界の肉は味が落ちるとアカネはわかっていた。

 とはいえ、それに関しては調味料などでどうにかしようと思っている。

 実際のところ、アカネ自身も味噌や醤油などを自作するのは難しいと思っている。日用品としてならばともかく料理を作るとなると難しい。

 さらに肉……畜産となると余計にだ。

 ぎりぎり鶏から卵をとることはできるだろうが生きた鳥や豚や牛を裁く自信はない。

 アカネはなんだかんだとお人好しである。

 そうでなければもっと家のものへと復讐を考えていただろう。

 けれどもそれを望まずにただ家を出て行くこと。それだけを考えた。

 まあ。好意の正反対は嫌悪ではなく無関心という。

 そういう意味ではある意味、正しい行動だったのかもしれないが……。

 閑話休題。

 とにかくアカネは畜産をしてその家畜を殺して食べることができる自信はない。

 魚ならばどうにかできるかもしれないが、それでも牛や豚、鶏は自信がない。

 偽善と言われてしまうだろうが育ててしまえば情が移ることはわかっていた。

 ついでにいうとその捌く技術がなかった。

 どちらかというと最後のが致命的だろう。

 とにかくその食材。ほかにも豊だからあるいは環境故のものがあるだろう。見たところ西洋系列の世界のようである。

 探せば日本のような環境の国もあるかもしれない。

 けれども全く同じ食材があるという保証もなかった。

 そう思いながらいえば、

「そちらはこちらでどうにかしますよ。

 とにかく大切なのはまずは店です。

 そこから考えましょう」

 そうエルダにいわれて本格的にお店になるだろう迷い家を探すことになった。

 今までもそういった迷い家を探そうとする暇人などはいたし中には金持ち貴族もいるらしい。理由は簡単でありそこに行って成功した人間もそれなりにいるからだ。

「貴族の中には野心家がいますからね。

 いや。最低限の野心がなければ貴族としては問題ですからね」

 そうヨハンがいう。

「そういうものですか?」

「まあ。師匠にいわせれば野心がない人間は成功しない。ただ惰性のように生きていくだけだとのことです。

 野心といっても手段を選び理性でそれを制御できればよいんですよ。

 王が国を豊かにさせようとするのも野心。そのために政でいろいろする。その中で戦争という手段や民から搾取して自分だけ豊になろうとする。

 そういったことをしなければよいんです。

 商売人だってお金を稼ごう。そうするからこそ商売人として成功できるというものです。貴族だって領地をもり立てたい。家を豊かにしたい。

 そうすることで成功していくんですからね。

 ただそこに他者への心配りを忘れてはいけないんです」

「つまりこいつの親は心配りを忘れたんだな」

 ヨハンの言葉にホムラがそう言ったが幸いにもヨハンには聞こえていなかった。

 聞こえているアカネは苦笑を浮かべることしかできない。 

 とにもかくにも探すのは迷い家である。

「まあ。オレは迷い家とは相性がよいからな。

 見つけやすいと思う」

 そうホムラが言う。

「相性がよい?」

「ああ。妖怪の中にもいろいろとあるんだよ。

 出身が日本の妖怪。中国の妖怪、西洋の妖怪」

 その説明で脳裏に思い浮かぶのは虎柄ちゃんちゃんこを身につけている少年が浮かぶ。

 だが、それは一瞬でありすぐに霧散した。

「そして性質もな。

 例えば貧乏神や疫病神。それらは災いを与える存在だ。

 あえて言うならば悪いことをしたやつに罰を与えたりする役目だ。

 水辺の妖怪。山の妖怪。人里の妖怪などな。

 迷い家は言ってしまえば富を与えるチャンスを与える。

 そして悪いことをした場合、不運を与えるというのだ。

 そこはオレと近いんだよ。

 それと家と言う場所を縄張りにしているオレと家そのものである迷い家はそういう意味では相性がよいんだよ」

 そうホムラが言う。

「そうなんだ」

「あと、出身地が近いんだよ。

 どっちも東北だしな」

「あたしの家、別に東北じゃなかったけれど」

「東北を中心として存在しているだけだよ。

 最近じゃ日本に西洋の妖怪が現れることもあるからな」

「まあ。異世界に来ている時点でその通りといえばその通りよね」

 ホムラの言葉に納得するアカネ。

 そもそも出身地とか一定の場所にしかいない。

 それなら異世界にいくこともないだろう。

 そう思っている中で、

「見つけたぞ」

「速い!」

 思ったよりも遙かに速くに見つかったことにさすがに驚きを隠せなかったアカネ。

 そして言われてみてみると、確かにそこには立派な屋敷があった。

「なるほど。確かに怪しい屋敷だ」

 そうヨハンがつぶやいたのだった。

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