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家出するなら異世界へ 妖怪に愛された私の異世界魔王の喫茶店ライフ  作者: 茶山 紅
家出01 家出するなら放浪中
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八話 迷い家、さがしてます


 とにかく昨今の事情を考えてもいくらヨハンやエルダが守ると言っても宗教団体。それもかなり大きな組織になろうとしている。

 それを考えると、

「移動販売とかが理想なんでしょうけれど……。この世界だと難しい気がするなぁ」

「移動販売?」

 アカネの言葉にエルダが聞き返すので、

「行商でそこで商売をするというのがありますよね。

 それの中で料理の場合もあるんです。

 ただ難点があるんですよね。やっぱり屋外でしかも旅から旅で造れる料理となると限界がありますし」

 そうアカネは言う。

 旅をするならば基本はなるべく道具は最低限が基本である。

 日本でもキャンプで料理を作るための品というのもある。とはいえ、最近ではキャンプ場所が専用にありそこにある管理人さんからそういった道具を借りるのが多い。

 たとえ売っているとしても簡単に片づけることができるという高性能。

 だが、この世界にそこまでの技術力を持った品があるというのは謎。また会ったとしてもさすがに高額な気がした。

 さらにアカネは元々は現代日本で料理を作るのを想定していた。どこかの料理店で働くことなどを考えても異世界で旅をしながら料理を作るということは想定してない。

 そのため設備が整った場所で作る料理の手パートリーがほとんどだ。

「だとするとやっぱりあの迷い家があたら良いな。

 キッチンカーはさすがにこの世界にないし」

 そういったのはホムラである。

 そして、

「だろうね。だから言ったのはその迷い家だ。

 特殊な目を持つ君ならばその家を見つけて手名付けることができるかもしれない。

 その家は公式にはない家だ。だから収入するための予算はほとんどない。

 こっちが手に入れたというのを書類をどうにかするだけで十分だ」

 そういってエルダは笑って言ったのだった。

 つまり、迷い家を探せば助かるということだ。

 そういうことで一同は迷い家を探すということになったのだ。

「迷い猫とか迷い犬を探すということはきいたことがあるけれど……。

 迷い家を探すことになるとは思わなかったです」

 そう思わずつぶやく。

 異世界転移で冒険者になるという話は珍しくない。

 最初の冒険でいきなりモンスターと戦ってオレTUEEEEEな経験をするという話もある。かと思えば戦闘ではさほど強くないから迷子の犬や猫を探すという何でも屋みたいな雑務をしてという話もある。

 とはいえ、迷い家を探すというのは初めて聞いたというのが本音だ。

「まあ。普通の人間が探すというのは難しいが……。

 妖怪の家ならば俺が見つけることができるぞ」

 そうホムラが自信満々にいう。

「そういえばさ」

 その言葉を聞いてヨハンが尋ねる。

「なんで君の世界にいる妖怪がこっちの世界に?

 単に偶然、似ているだけ?」

「あー。違う。違う」

 ヨハンの言葉にホムラが反応するのでアカネが通訳する。

 ホムラによると元居た世界では妖怪が住みにくくなっているそうだ。

 科学技術が発展して妖怪の存在が否定されるようになっている。

 また妖怪が現れる条件が一致した場所というのも減っているのだ。

「まあ。妖怪が不要になっているということだな。

 自然と一体化して世界と同化する道を選ぶやつもいるけれどな。

 中には別の世界に行く道をえらぶやつもいる。

 オレもそうだし」

「……だそうです」

 そうヨハンの言葉にアカネは言う。

「なるほどな。精霊が移動するようなものか。

 精霊も住みにくいと感じた場所を移動すると聞く。

 それが世界レベルということだな」

「そうなのかもしれませんね」

 その言葉にアカネは元居た世界を考える。

 妖怪がいなくなっていく世界。

 それは一体、世界がどうなってしまうのだろうか。

 悪いことではないとよいな。

 そうアカネはひそかに思っていると、

「安心しろ。世界とはそういうものだ」

 静かにホムラは言った。

「変化のない世界なんていうのはない。

 人間だって同じだ。

 成長していくにつれて悪いところが出てきたり変化をしていく。

 子供が大人になるにつれて声が変わったり体格が変化していく。

 男と女。赤子のころは大した違いがなくても大人になるにつれてまったく変化していく。まるで別の生き物のようにな」

 ホムラの言葉をアカネは黙って聞く。

 ホムラの言うことも一理はあった。

 変化というのはあるものだ。

 女の子は大人の女性になるにつれてつきものなどがあり子供が産める肉体に変化する。胸が大きくなり腰が括れるようになる。

 男の子は大人の男性になるにつれて毛深くなり声も低くなりがっしりとしていく。もちろんそこに個人差があるが……。

 そしてそれは肉体だけではない。精神にも変化が生まれていく。

 子供のころは男女問わずに一緒のお風呂に入っても平気だったのが気になるようになる。異性に対して恋愛感情。あるいは下心。欲情。そういった感情を抱くようになる。

 それは良い事、悪い事というよりも当然の事であった。

「森もそうだ。ドングリといった山の木の実が不作の年がある。けれども沢山の木の実が実る年もある。不作の年は動物たちは飢えて死ぬこともある。

けれどもその結果として減った翌年にはたくさんの木の実が食べきれずに落ちて沢山の気がまた生えていく。そしてたくさんの木の実ができるようになる。

 そして木の実を餌とする動物たちが増えていく。

 悪い時代。良い時代。それはこうして交互に来るし一口に悪い。良いと一概に言えない。

 変化は必ず来るものだ。

 それでよりよくなるか。悪くなるかは当人次第だ」

 きっぱりといった。

「そうなんだ」

「まあ。ただ大切なのは今をどう生きるかだな。

 まっすぐに前を向いて自分が自分で恥ずかしくなる。

 そんな人生を送るな」

 そうホムラは言った。

「うん。ありがとう。

 なら一つだけ約束して。

 もしもホムラがあたしのそばにいるのが嫌になって出ていくというのなら止めはしない。けれど自分のせいであたしを不幸にしてしまう。

 そう思って出ていくようなことだけはしないで」

 そうアカネが言うと、

「安心しろ。お前のことが大好きな限りオレはお前と一緒にいるよ」

 そうホムラは断言した。

 そんな中でブラウニーだけ考えていた。

 ブラウニーたちは立ち去っても何かが変わることはない。ただ家を守るというだけだ。だが、守りの力が無くなるので今まであったことがなくなってしまうことがある。

 対してこのホムラ。おそらくブラウニーよりも守る力などの加護を与える力は強力だろう。その強力すぎるほどの力。

 おそらく因果律。運命。そういったものを左右しかねないほどの力を秘めている。

 それだけの力を与える存在、それの加護が無くなった場合。それは失ったものは加護を失うだけですむのだろうか?

 そう思ったがブラウニーは気にすることをやめた。

 気にしたところで何かが変わるわけじゃないからだ。

 ただとにかくそお迷い家が見つかればそれでよいのだ。

 そう思いながら目撃証言などを聞いていく。

 ホムラによるとそれだけ大きな怪異だと出現場所というのはさほど広くないらしい。

「一応は家だしな。家は歩き回るものじゃない」

 そうホムラが言う。

 アカネは一瞬だがキャンピングカーはどうなのだろうか? そんな疑問を抱いたが冷静になって考えてみればキャンピングカーはあくまでキャンプの時にテント代わりになるような車である。本物の家に比べると劣るのだろう。

閑話休題。

 とにかくそれを考えると出現場所を見つけるのは難しくないらしい。

 また、

「それにアカネがいたら大丈夫だろ。

 故郷の……もともといた世界の人間でしかも霊力を持っている。

 興味を引くのはわかっているのさ。

 オレもいるしな」

 そう自信満々にホムラが言う。

 そして目撃証言がある場所へと向かう。

 工業地帯と呼ばれる場所。鎧や剣、あるいは工具や道具。魔法道具などの様々な品を作っている場所である。

 もちろん商業地帯でそういったのを作っているのがあるが危険なもの。あるいは作るのに大きな音が出てしまうもの。そういったのはどうやっても近隣の迷惑が出る。

 さらに飲食品の場合、油などの衛生面。また爆発などの事故の危険性からそういうのは場所が固まりやすいという。

 そこから住宅地。わかりやすく言うと人が良く住んでいる場所だ。そこへと行く道筋あたりにある地区。その名も酒場地区と呼ばれる場所に目撃証言が固まっていた。

「まあ。おかしい話じゃないな」

 そういったのはホムラだ。

「酔っぱらっている人間。

 そういうのはうつつと夢が入り混じった状態だ。

 そういうやつらはこの世とあの世。違う世界へと渡りやすくなっている」

 そう静かにいうホムラの言葉を翻訳すると、

「なるほどな。つまり酔っぱらっているとは入れるということか?」

 そうヨハンが尋ねる。

「まあ。それはおかしくない話だね」

 そうエルダが冷静に言う。

「神官。ああ。新しいところじゃなくて歴史があるところだね。

 その中で予言や占いなどを専門としている連中もいる。

 胡散臭いと言われるかもしれないが存外に無視できないやつらさ。

 大したことがない奴はせいぜい街角で占ったりするぐらいだがね。

 きちんとしたところだと王などに関わり政治なども占ったりすることがある。

 もちろん占いですべてを決定させるわけじゃないが意見としては聞くね。

 商売をしているとそういった占いも馬鹿にできない」

 そうエルダが言うと、

「そうなんですか?」

 と、アカネは驚く。

 とはいえ、アカネは知らないが商売人のなどには占いなど信心深い人は割といて成功している人も大勢いる。もちろん神頼みだけではない。

 だが、商売繁盛のためにビルなどに小さくてもきちんとした祠などを用意する。(主に稲荷系である)新しい開発などでもきちんと祈ったりする。

 そういうことをきちんとしているところほど繁盛や大きくなるかはさておき長く続く商売となるものなのだ。

 それに、

「商売というのは運試しの要素はどうしてもあるからね。

 確実にここで商品が売れる。だが、占いで不吉と出た。

 そういった理由からそれをやめた商売人がいた。それを馬鹿にしたやつは商売へと向かった。ところだ途中でとんでもない災害にあってしまったね。

 その結果、そいつは積み荷を失い赤字になってしまったという話だ。

 特に行商などで盗賊、魔物、自然災害。そういったのに襲われてしまい赤字になってしまうという話はある。どれも前もってわかるもんじゃない。

 警戒しても警戒しても難しい。雇った冒険者がその盗賊よりも強い保証はない。魔物が弱い保証もない。自然災害に至っては冒険者だってどうしようもないからね」

「なるほど」

 アカネは納得する。

 考えてみれば元の日本でも皇族などが神社に参拝するのは通例であった。

 慣習といえば慣習だが神頼みをしているのだ。

 努力や勉強。

 そういったことでどうにもならないということがある。

 いくらばくちを打つつもりがなくてもどうしても運に左右される。

 そういうものだからこそ運命という言葉があるのだろう。

 アカネが妖怪を見ることができるように生まれて女だった。

 それも運命というやつなのだから……。

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