間奏 Ⅰ
「あの女たちさ、最初は俺たちのことずっとガン無視してたのに、ちょっとでも金の話ちらつかせたらすぐ目の色変えて俺たちについてきたんだよ」
「へ〜。そんな簡単なもんかね?」
「超簡単。マジで。最近の女チョロすぎ。そんで俺ん家連れてってさ、そしたら『え〜こんないいとこ住んでるのっ!?』とかすぐわかりやすく騒いでさ」
「現金な女だな」
「ま〜確かに俺の住んでるマンションはいいとこだけどな」
「それを狙ってそこにしたんだろ?」
「ま〜な。おかげでセックスやり放題。結局その方が安上がりだよな。都心の良いマンションに住んで近場の狩場にいってすぐナンパしてそこからワンナイトで家に連れ込む方が安上がりに数をこなせる」
「マジでゲスいなお前」
「クレバーと言ってもらいたいね」
「で、その女たちと乱行したと?」
「ま〜な。今度またやるからお前も呼ぶわ」
「マジで!? さっすが持つべきものはお金持ちの友達〜」
「てかお前だって金持ってるだろ」
「う〜ん、まぁ人並みには。てか何でみんな金稼げないのか不思議。これだけ世の中金が稼ぎやすい時代なのにさ。何つ〜か、みんな努力が足りないよね。年収一千万とか二十代前半のうちに突破しとけよ、って感じだわ」
「普通にやってりゃいくよな? 年収一千万なんか」
「通過点だろ」
「俺なんか今年三本(三千万)超えたわ」
「マジか〜俺も来年そこまで行くと思うけど今年はまだ二本(二千万)だわ」
「だいたい金稼げない奴ってのはあれだろ? やるべきことをやってこなかった奴だから自業自得だろ。受験勉強をサボって就職活動をサボって――」
「――甘ったれてんだよ」
「――そう、甘ったれ坊やどもなんだよ。キモくて金のないおっさんとか言ってるけどさ、努力が足んないんだよね」
「そそ。だいたい俺たちみたいな奴らが恋愛もゲームもせずに一心不乱に勉強している時にずっと遊んできた奴らなんだから」
「バカなんだよな。中高生の六年間グッと我慢して東大京大医学部行くだけでその後の人生一生笑って暮らせんのに、それを散々言い聞かされてんのに、やってこなかったんだから」
「バカっていうか、何ていうの? 痴呆症? ボケ老人?」
「「ギャハハハハハハハハハハっ――」」
【お前たちには心がない】
「……誰だ?」
「……お前にも聞こえたか?」
「あぁ、なんか脳内に直接響くような感じの声だった」
【お前たちには心がない。心がないやつの時代はもうこれまでだ。もうお前たちのような刹那的な人間、物質のみに溺れる人間たちは要らない。魂がある、本来的な人間たちの時代がもう一度くるのだ。魂を大事にし、魂の喜びのため、この世の真の法のために従事して生きる者たちの時代が来るのだ】
「何だこれ。何なんだこいつ。今時こんなカルトみたいなやつがいんのか? てかどこから話しかけてんだこいつ」
「てかカラスめっちゃ鳴いてね? 超うるせ〜」
「やべってかこっちにめっちゃ一斉に来てるじゃん」
「俺たちの方向かってきてね?」
「来てる……うん……ってか来たっ!――」
「やめっ――うわっこいつ俺の腕の肉食ってるっ!?――グアアアっ――!」
「ぎゃあああっ――俺の目がっ! 目が潰れたぁああっ――!」
「てめっ――やめろっ――やめろぉおおおおっ――」
「…………………………………………」