絶滅 intro
私はインターネットで捜索を開始した。天使たちのwebサイトや、様々な情報源(オカルト情報サイト、ツイッター、様々な怪しさ満点のブログ、YouTube、5ちゃんねる、まとめサイト)で嗅ぎ分けた点と点をつなぎ合わせ、最近他の女の子たちに聞いていたこととも照らし合わせ、ものの三、四時間のうちにこの天使たちの首謀者らしい人物を発見した。調べものは得意な私だ。
【絶滅の季節 逸る気持ち抑え 愛するものを愛し抜く それすらできずに 盲目の人間たち 彼らのすべきことといえば 低次の欲を満たすことと行き場とやり場のないオナニー すべてがバカらしく とはいえそれを嘆く僕にできることも ここで訳も分からず歌うことくらい――】
凪斗という名前で、YouTubeに自作の歌の動画を投稿する男の子。この子が怪しいと睨んだ。最近、同じ学校の女の子でこの子にハマっているという子が何人かいて、「何かあるな」、と感じていた。シックス・センスとでもいうべきなのかしら。
【絶滅の季節 人を愛することすら素直にできずに そんな世界で愛するパワーを持つものは 実は人の形をした悪魔 悪魔の増殖 人間の堕落 正義が正義を騙る時 人は人であることをやめる――】
何というか、言い表しがたい不思議な叙情を誘うメロディーだ。ロックというか、バラードというか、電子音というか……音楽的な素養のない私にはこの曲がどういうジャンルに属するものなのか分からないのだけど、それでもわかるのは詩と曲とこの凪斗の声が非常によくマッチしているということと、この動画全体が何か根本的な不安を感じさせる作品だ、ということだ。
【絶滅 絶滅の季節では人は人であることをやめる 魂の喪失 楽になる 楽になる
絶滅 絶滅の季節では人は人であることをやめる 魂の喪失 楽になる 楽になる――】