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不可思議談話集  作者: 佐村孫千(サムラ マゴセン)
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01.自分ペディア

ニートの主人公は、ウィキペディアをネットサーフィンするのが唯一の楽しみ。

今日もウィキペディアのリンクを渡り歩いていたら「自分ペディア」なるページリンクを発見する。


自分ペディアには、主人公の生い立ちが事細やかに記載されていた。

ふと「略歴」の項目を目にやると今日の日付出来事が記載されているのを目にする。


20xx年xx月05日:ネットサーフィンをしていたところ、自分ペディアを発見する。


PCがウィルスに感染したのではとスキャンをかけるも異常無し。

ハッキングやPCの乗っ取りではないと考えると一体誰が何のためにと主人公は考える。

しかし、再度自分ペディアのページを開こうとすると今度はNot Foundが表示される。

何かの見間違いだろうと思い、その日は気にせず再び主人公はネットサーフィンを行った。


数日後、主人公がネットサーフィンをしていると再び自分ペディアのページリンクを発見する。

ページを開いて「略歴」を確認したところ今日の日付の出来事がまた更新されていることを発見する。


20xx年xx月22日:自分ペディアを再度発見する。


主人公は気味悪がったが、そのすぐ下に続きの文章が記載されているのを発見した。


「この日、原稿を提出していた出版会社から連絡があり連載の依頼を受ける。」


すると、主人公に電話の連絡が出版社からあった。

ニートになる数年前に原稿を持ち込みで提出していた出版会社から是非連載して欲しいとの事だった。

突然の採用に喜ぶ主人公だが、同時に自分ペディアは一体何物だという疑問が残る。

再度ページを開こうとしても先日と同じくNot Foundが表示されていた。

しかし、自身の作品を認めてもらったという達成感が勝っていた為、その疑問はかき消されてしまった。


数日後、主人公は出版会社に出向いて今後の連載についての打合せを行う。

その帰り道、立ち寄ったネットカフェでメールチェックを行おうとパソコンを使用する。

すると、自分ペディアの画面が表示された。

ページを開くと「略歴」が更新されていることを発見。


20xx年xx月27日:週間少年○○で来年春に連載が決まる

20xx年xx月28日:ホームセンターまで漫画を描く為の道具を買いに行く

20xx年xx月29日:自分ペディアを再度発見する。(3度目)


主人公の最近の出来事が相変わらず細かく記載されていた。

そして、今日の日付の出来事の下に新しい出来事が記載されていた。


「この日、立ち寄ったネットカフェで無差別殺人を行いたい衝動にかられて実行する。」

「凶器は100円ショップで購入した包丁を使い、ブースの中にいる人を次々と襲っていく。」

「合計で7人を襲った後にトイレで首を吊って自殺する。享年23歳。」


主人公は怖くなってネットカフェを出ようとしたが強烈な頭痛に見舞われてその場に倒れ込んだ。


気が付けば主人公はネットカフェのトイレにいた。

首には天井から吊るしたロープがかけられており、脚立を足場にしていた。

驚く主人公だが、次の瞬間様々な事がフラッシュバックされる。


「自分ペディアで自分の出来事を事細やかに記載していく主人公の姿」

「自分ペディアの編集が終わったらページを削除していた主人公の姿」

「連載開始した事を喜び、口笛を吹きながら自分ペディアを更新している主人公の姿」

「100円ショップで不気味な笑みを浮かべながら包丁を購入している主人公の姿」

「ネットカフェでニヤニヤしながら自分ペディアでこれから行う犯行内容を記入している主人公の姿」

「雄叫びをあげながらネットカフェのブース内にいる人を無差別に襲っていく主人公の姿」

「息を切らしながらトイレに駆け込み、天井にロープを吊るそうとしている主人公の姿」


主人公は悟った。

「そうか、あの自分ペディアは全部俺が作ったんだった。」


そう呟くと主人公は足場の脚立を勢いよく蹴った。

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