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第0章
真っ暗な水の中にゆっくりと落ちていく様な、そんな感覚にそれは思えた。
触れるものも何もなく、ただ無重力な空間に頭の先からまっすぐ、何もない場所へと流されるような、曖昧な感覚だけ感じ取ることができる。
目を開いているのか閉じているのか、それすらわからない程にそこには何もない。
一片の光さえも差し込むことのない闇だけがそこにはある。
体を動かしてみようと試みるが、指先一つ動かす事も出来ず、そもそも、この暗闇で自分の体そのものを認識することはできない。
ただ、何となくその存在だけを感じ取れる程度だった。
---自分は、どこへ行くのだろうか。
ふと、そんな疑問が浮かび、当然のことながらその問いに答えるものは誰もいなかった。
声にすることもなく、私はゆっくりとどこまでも落ちていく。
そして、どれほどの長い時間が過ぎたのか、或いは、そう思うほどの短い時間だったのか、私の意識が徐々に薄れつつあった。
---この闇はどこまで続くのだろうな。
そんな事を思い、ゆっくりと私の意識は途切れるのであった。