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勇者が正義に生きるなんて誰が決めた?  作者: 紅蓮グレン
第1章:勇者が自己犠牲なんて誰が決めた?
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#005.街と歓迎

「勇者様~♡」


 大魔王城に一番近かった東の街。歩いているだけで町娘たちから黄色い声が飛ぶ。


「チッ、相変わらずレオンはモテやがるな……」

「我慢しろ、クレイン。俺たちの【勇者パーティ】というネームバリューはレオンあってこそなんだから。」


 ラファエルとクレインがなんかごちゃごちゃ言っているが、あいつらにだってファンはいる。しかも、


「クレイン様~♡」

「ラファエル様~♡」


 と完全に名前呼び。俺は職業名で呼ばれているのだから、こいつらの方がよっぽどいい身分だろ。


「仕方ないじゃない。レオンは【勇者】で通ってて、誰かを助けたところで『名乗る程の者ではありません。勇者ですから。』しか言わなかったんだし。」

「サラッと心を読むのはやめてくれ、ニーナ。まあ、確かに俺の名前を知ってる人は少ないんだけどさ。」

「もう自己犠牲やめたんだから、国とかに発表して貰えばいいんじゃない? レオンなら各国の王陛下にだって顔パスで会えるでしょ?」

「んー、それは面倒だしいいや。いずれ機会があったらな。」


 俺はニーナにそう言うと、ラファエルたちに、


「この街に何日か滞在しようと思うんだが、良いか?」


 と聞いた。


「別に構わないぜ。」

「俺も構わない。旅していた間はロクに観光もしていなかったからな。幸いモンスターを倒しまくっていたから、金貨は大量にあるし。」

「じゃあ先に宿だけ取るか。」


 俺は街並みをぐるっと眺め、比較的綺麗な宿に入る。


「いらっしゃいませ! お泊まりですか? それともお食事……って、ゆ、勇者様? し、失礼致しました! 少々お待ちください!」


 宿の受け付けカウンターにいた少女は俺の顔を見るや顔をサッと青ざめさせ、逃げるように奥へと走って行ってしまった。


「はあ……やりにくい……」

「レオンの顔は知られ過ぎているからな、名前と違って。ほら、あそこにも肖像画があるぞ。」


 ラファエルが指し示す先には美化されすぎて誰だか分からない程イケメンの肖像画が1枚ある。


「あれは俺じゃないだろ。偽作、贋作だ。」

「いや、鑑定によるとあれは【勇者の肖像画】だ。」

「俺はあんなイケメンじゃない。」

「レオンはあれ以上のイケメンだもんね!」

『レオン様はあれ以上のイケメンですものね!』

「そういう意味じゃない、ニーナ。それとメルー、天界から悪ノリするな。」


 俺たちがそんなことを話していると、宿の奥からどやどやと何十人も人が出てきた。その人たちは一斉に最敬礼。そして、声を揃えて、


「勇者ご一行様! 本日はお越しくださりありがとうございます!」


 と歓迎の意を表した。


「歓待が凄いな。」

「何だか悪いことをした気分になるな。」

「チッ、どうせ俺たちはレオンのオマケ扱いか。『ご一行』だもんな。」

「クレイン、黙ってなさいよ。せっかく歓迎して貰ってるんだから。」


 俺たちは四者四様に呟く。


「本日は20階の大部屋しか空いていないのですが、よろしいでしょうか?」

「1部屋だけですか?」

「10部屋分の広さがあります。また、個室が6部屋、浴槽も2つございます。」

「あ、じゃあそこで。取り敢えず3連泊するので、それでお願いします。いくらですか?」

「お、お代は結構です! 勇者様からお金など頂けません!」

「払わせないなら別の宿にしますよ。ちゃんと代金を取ってください。俺は正当な対価を払わない行動はしない主義なので。」

「で、では……大部屋は1泊17万5000ルクスですので3泊で52万5000ルクス、そこから連泊割引を適用して……50万ルクスです。」


 なんだ、恐縮してるからかなりの値段設定でもしてるのかと思ったが、ずいぶん安い。ラミア5体分程度じゃないか。


「じゃあこれで。」


 俺は金貨の入った袋を取り出して置いた。キィィィィィンと小気味のよい音が鳴る。


「かしこまりました。では、こちらが部屋の鍵になります。」

「どうも。じゃあ早速なんですけど、外出してくるので鍵を預かっていてください。」


 俺は受け取った鍵をすぐ渡す。渡したのは最初に受け付けカウンターにいた女の子だ。


「え? あ、はい!」


 女の子はちょっと驚きながらもそれを受け取った。俺はそれを確認すると、宿から出る。中から響いてきた、


「きゃあああああ! 勇者様から手渡しされちゃった!」


 という声は聞こえなかったことにしておく。


「さて、じゃあ街を散策するか。」

「マイペースね、レオンは。」

「まあ、自己犠牲はやめたからな。」


俺はそうニーナに返答しながら、ラファエルとクレインに、


「散策はどうする? 全員で回るか? それともバラけるか?」


 と聞いた。


「俺は1人でいかせて貰おう。たまには1人でのんびりと街をぶらつくというのもいいだろうからな。それに、俺たちが全員で回ってみろ、また宿屋みたいなことにならないとも限らない。そうなったら迷惑だろう。」

「あー、なら俺も1人で散策させて貰うぜ。この機会に武器を新調したいんだが、お前らはそういうの興味ないだろ?」


 2人は1人で回りたいようだ。


「ニーナはどうする? ニーナも1人が良いか?」

「私はレオンと一緒が良いな。怖い男の人にナンパとかされるかもしれないし。」

「ニーナなら一撃でその男をペーストにしそうな気がするが……まあ、じゃあ一緒に回るか。」

「う、うんっ!」


 ニーナは嬉しそうに笑った。その様子を見ていたクレインとラファエルはやれやれといった感じで溜息を吐くと、さっさと歩いて行く。


「ニーナ、何か見たいものは……」


 俺がそう問いかけた瞬間、


「きゃあああああああ!」


 どこからか悲鳴が聞こえた。


「何か起きたか……ニーナ、悪い。悲鳴の元へ向かうぞ!」

「えっ、ちょっと、レオン! 待ってよ!」


 俺は悲鳴が聞こえた方角へ向かって駆けだした。ニーナがついてくる。振り返ると、ラファエルとクレインも走ってきていた。街に着いても俺たちがやることは変わらないらしい。


 

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