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勇者が正義に生きるなんて誰が決めた?  作者: 紅蓮グレン
第1章:勇者が自己犠牲なんて誰が決めた?
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#003.隣席争い 女神vs賢者

「ふう、宣言したらすっきりした。」


 俺はそう言って大きく息を吐くと、2杯目の玉露を注ぐ。すると、ニーナが寄って来た。


「ニーナ、どうかしたか?」

「玉露は飲み過ぎると毒よ。東国ではニンジャっていう職の人たちが毒薬に使うみたいだし。」

「大丈夫だ、玉露は2、3杯飲んだところで何も起きない。それに、俺は大抵の毒ならレジストできる。仮に効いても死にはしない。」

「なんで堂々とそう言い切れるの? レオンは勇者時代から危機感が欠落してると思うんだけど……」

「勇者時代、って何だよ。今も俺は勇者だ。それに、俺が毒に倒れてもニーナ、あらゆる魔法を極めたお前が解毒してくれるだろう?」


 俺はニーナの頭を掴んで、わしわしと撫でるようにする。ニーナは顔を赤くしながらも俺の手から逃げた。


「き、急にそんなこと言うのは反則よ!」

「何の反則だよ。それより、お前が寄ってきた理由は忠告じゃなくておかわりだろ。」


 ニーナの湯飲みに俺は玉露を注ぐ。え、そうだったのか? というラファエルとクレインの視線。まさかこいつら、気付いてなかったのか?


「私は気付いてましたよ♪」

「サラッと心を読むな、メルー。さっさと帰ってくれ。目障りだ。」

「酷いです、レオン様。」

「やっと分かったのか。そう、俺は酷いんだよ。さあ、もっと酷い目に遭いたくないならさっさと帰れ。」

「レオン様から酷い事されるならウェルカムです!」

「Mはお断りだ。」

「特殊性癖差別はしてはいけないんですよ!」

「別に特殊性癖の話じゃない。MはMEGAMIのMだ。女神はお断り。さっさと天上界に帰れ。」

「それは嫌です! そもそも、私だってレオン様のお隣に座りたいのに、そこの発情賢者に邪魔されて座れないんですよ! 女神はダメなのに発情賢者は良いんですか?」

「メルー、お前暴言も大概にしろよ? 俺の仲間を必要以上に侮辱するな。消し飛ばすぞ。」


 俺は右の拳に怒気を込め、闇のオーラを纏った拳をメルーに向ける。すると、メルーは大袈裟に嘆息するジェスチャーをした。


「いくらレオン様でも、神を殺せると思ってるんですか? 私は確かにレオン様の大ファンですが、黙って殴られる気はありませんよ? レオン様は赤いタオルを首にかけている方じゃありませんし、殴られても嬉しくないですからね。」

「赤いタオルって誰だよ……まあ、それは兎も角、神くらい簡単に殺せるさ。なあ、ラファエル、クレイン。」


 俺は2人に目を向ける。2人は同時に頷いた。


「確かに、レオンなら神を殺せるな。実質、俺に自分が勇者だと信じさせるために悪神を殺したし。」

「それに、レオンの装備は大体が神殺し級だからな。流石に素手じゃ無理だろうが、装備使えば……」

「そうだな。そういえば、【龍神の槍】を借りる為に龍神を素手でボコボコにしたこともあったか。」


 クレインとラファエルの神殺し肯定発言にメルーは顔を青ざめさせた。


「ラファエルさんが神殺しを肯定してるなんて……それでも天使族の末裔なんですか?」

「俺の先祖は所詮大天使。大天使は【下級3隊】所属で、天使全体から見れば下から2番目の地位です。その末裔ですから、神殺し発言を肯定することには疑問を抱きません。事実ですし。それより、本当にさっさと帰った方が良いですよ。レオンがキレたらこの辺は一瞬で焦土になります。」

「嫌です。私はレオン様の隣に座るんです!」


 メルーはそう言うと、俺の横に椅子を出現させ、そこに座って来た。


「ちょっと! 邪魔しないでよ! レオンの隣は私の物なんだから!」

「発情賢者は黙りやがれです!」

「発情してないし! そっちこそ発情してるでしょ!」

「賢者の癖に神が発情しないという常識を知らないんですか? 所詮は人間ですね!」

「いや、神だって発情するだろ。超越的領域生命体が発情しないという話は聞いたことが無い。なあ、ラファエル。」

「レオンの言う通り。神が発情しないなんてのは間違った常識、通用するのは500年前までだ。」


 ラファエルは俺の発言を肯定すると、少し目を瞑り、


「本家オリシエルが今俺に情報を寄越した。神も発情するぞ、って。」


 と淡々と言った。


「やっぱり発情してるんでしょ! この発情女神!」

「発情してないです! この発情賢者!」

「私だって発情してないし! っていうか、レオンから離れて! 100kmくらい!」

「そんなに離れたらレオン様が見えないじゃないですか!」

「守護してる人間に迷惑をかけるような輩はそのくらいが分相応よ! レオンを視界に捉えることはたとえ神や仏や王や皇帝やレオン自身が許しても、この私が許さない! レオンを視界に捉えたいなら、私を倒してからにしなさい! この発情女神! 【抵抗不能キャントレジスト】! 【不可視化シーシャットダウン】!」


 ニーナが呪文を唱えると、途端にメルーが慌て始めた。


「えっ? 急に何も見えなく……まさか……」

「私の魔法は神にだって通じるけど、念の為あなたの抵抗力を0にさせて貰ったわ。これであなたはレオンを見られない。私に盾ついたことを天界で後悔しなさい!」


 ふふん! とどや顔をするニーナ。俺はそんなニーナに向けて、


「【不可視化シーシャットダウン】!」


 と唱えた。


「えっ? ちょっと、レオン! 何するのよ!」

「喧嘩するな。玉露はゆっくり嗜むものだ。横がギャーギャー騒いでるとゆっくり楽しめないからな。喧嘩は視界が無い状態で2人でやってくれ。俺を間に挟んでやるな。それと、ニーナの視界はメルーが天界に戻るまで復帰しないから、メルーもさっさと天界に帰れ。」


 俺はそれだけ言うと、ラファエルとクレインの方に椅子を引いていき、まだ口喧嘩をしているメルーとニーナを尻目に玉露の味を楽しむのだった。

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