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勇者が正義に生きるなんて誰が決めた?  作者: 紅蓮グレン
第1章:勇者が自己犠牲なんて誰が決めた?
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#002.守護神とご対面

「やっぱりレオンのお茶は絶品だな。」

「はは、俺は淹れただけだけどな。」


 俺たちが談笑しながら茶をしばいていると、急に脳内にダイレクトな声が聞こえた。


『レオン様! 私もお茶飲みたいです! 呼んでください!』


 中性的な声。俺を復活させたメルーのものだ。せっかく生き返らせてくれたのだから無碍にするのも悪いと思うのだが、よく考えたら呼び方を聞いていなかった。


「呼んでもいいんだけど、どうやって呼べばいいんだ?」

『私の名前を叫んでください!』

「そういう変人的なのじゃない呼び方は?」

『……変人っぽいですか?』

「うん。もの凄い変人。いきなり女の名前叫ぶ奴とか完全に変人。」

『じゃあ、『守護神よ、ここに御身を現したまえ!』って言うのもアリです。レオン様にだけの特別出血大サービスです。特別ですよ? レオン様の大ファンである私以外はこんなこと……』

「分かった分かった。取り敢えず呼ぶから、続きはこっちで頼む。さっきからクレインたちが俺を胡乱な目で見てるんだよ。」


 俺はそう言うと、聖剣フォーラ・アミュールを掲げ、


「守護神よ、ここに御身を現したまえ!」


 と叫んだ。すると、俺の横にメルーが現れた。


「んー、久しぶりの下界ですー。気持ちいいですー。」


 伸びをするメルー。


「えっ? ちょっとレオン! 誰よこの人! 冥界で浮気でもしたの?」


 真っ先に声をあげたのはニーナだった。俺に糾弾するような目を向けている。


「いや、俺そもそも彼女いないし、浮気とか言われる筋合いはない。それと、この人は人間じゃなくて生命管理課の神だよ。名前はメルーで俺の守護神。」


 俺は本当のことを言っただけなのだが、こう言った途端ニーナとクレインの目が可哀想な人を見るような目になった。


「ラファエル、お前はどう思う? お前も俺の頭がおかしくなったと思うか?」

「いや、真偽判定眼によるとレオンは嘘を言ってないし、俺の中の天使族から受け継いだ血がこの女性を神だと認めている。」


 そう言えばラファエルは大天使ラファエルと大天使オリシエルの血を受け継いでいるんだった。神に近しい者なら神かどうかぐらい見ただけで分かるよな。


「んふふ~♪ やっぱりラファエルさんなら分かりますよね~♪ かれこれ500年くらい前に本家本元の大天使ラファエルさんが守護してた女性の命助けましたし。」


 どや顔で言うメルー。俺はその頭を小突いた。


「あいたっ!」

「あのさあ、守護神なら守護してる人間に迷惑かけないでもらえないか? そもそも召喚の呪文も面倒臭いし。」

「レオン様は神にも容赦ないですね……全能神様にもこんな感じで言っちゃうんですか?」

「知らねえよ、んなこと。全能神になんか会ったことないし。」

「凄いですね、レオン様は。全能神様に敬称をつけないなんて。」

「敬称略ってやつだ。それよりほら。」


 俺はメルーに玉露と羊羹を渡す。


「玉露と羊羹だ。さっさと飲んでさっさと食べてさっさと帰ってくれ。」

「本当に容赦ないですね……」

「レオン、守護神をそこまで邪険に扱わなくてもいいんじゃない?」

「まあ、それはそうかもしれないが、俺は迷惑をかけられた相手には容赦しない。」

「私が迷惑かけたっていうんですか?」

「そうだ。そんなことより、俺は1つ決めたことがある。」


 俺はニーナ、クレイン、ラファエルをぐるっと見回し、


「俺はこれまで、自己犠牲しかしていなかった。だが、もう大魔王を倒したから、勇者だってただのジョブ。ということで、自己犠牲はもうやめる!」


 と宣言した。


「おお、そりゃ一大決心だな。だが、俺は良いと思うぜ。」


 真っ先にこの意見を肯定してくれたのはクレインだ。


「私もいいと思うわ。そもそも勇者が自己犠牲しなきゃいけない、なんていうルールはないわけだし、この際思いっ切りはっちゃけちゃってもいいわよ! 大魔王も倒したんだし!」

「はっちゃけるかどうかは兎も角、俺もその決心には賛成だ。レオンはいつも自己犠牲心旺盛で、俺たちは精神をすり減らす思いばっかりしてきたからな。」


 ニーナ、ラファエルも肯定してくれる。


「よし、じゃあお前らにも肯定して貰えたことだし、改めて宣言しよう。俺は、今日を境に自己犠牲をやめる!」


 俺はもう1度、そう宣言した。


「だがレオン、まさか困っている人間を放ったらかす、なんてことはないよな?」

「当たり前だろ。俺は曲がりなりにも勇者だ。人助けはするさ。無論、正当な報酬を頂けるならだが。」

「じゃあ、スラムの人が暴漢に襲われていたら?」

「そういうのは別だ。俺は非情になる訳じゃない。自己犠牲をやめるだけだ。困ってる人は助ける、報酬が払えるか払えないかはその時は問題じゃないさ。助けてから交渉だ。その順番が普通だろ?」

「そうね。確かに、目先の物に釣られて動く訳じゃないんだし。」

「そうだ。」

「でもよ、例えば富豪を助けたとして、その富豪が『勇者は報酬なんか要求しないんじゃないのか?』って言ったりしたらどうするんだ?」


 クレインの問いに、俺はこう答えた。


「その時はこう言うまでさ。『勇者が自己犠牲なんて誰が決めた?』ってな。」

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