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勇者が正義に生きるなんて誰が決めた?  作者: 紅蓮グレン
第1章:勇者が自己犠牲なんて誰が決めた?
2/7

#001.質問攻めと言い争い

「おい、レオン。」


 俺が大魔王城の崩壊を感慨深く見つめていると、クレインが声をかけてきた。


「何だ、クレイン。」

「お前、本当にレオンか?」

「……どういう意味だ、それは。」

「……本当に俺たちのリーダー、勇者レオンが生き返ったのならそれは嬉しいが、大魔王の魂が乗り移った、とかだったら目も当てられねえ結果になる。だから、テストをさせろ。」


 クレインは疑っているような目で俺を見ている。そういや、最初にこのパーティに誘った時もクレインはなかなか俺を本物の勇者だって信じてくれなかったな。


「ちょっと、クレイン! 何でそんなことを言うのよ! これがレオンじゃない訳ないじゃない!」

「俺が心を許すのは絶対的に信頼できる奴だけだ。このレオンは、今までのレオンと違うかもしれないんだから、まだ俺は心を許せねえ。」

「なんであなたはいつもそんな疑り深いの? そんなんだから友達がいないのよ!」

「んだと? ニーナ、お前もそんな偏屈屋だからいつになっても彼氏ができねえんだよ!」

「私はできないんじゃなくて作らないのよ! 想い人には覚悟ができたら告白するつもりだし!」

「おい、クレインもニーナもやめろ。主論からずれてるぞ。」


 ニーナとクレインの言い争いをラファエルが諫める。


「ラファエルはどっち派だ? 俺を疑うか、俺を信じるか。」

「俺はレオンが生き返ったと信じたい。だが、場所が場所だったからな。いくつか、俺たちしか知らないことを質問させて貰う。それが答えられれば信じる、それでいいか?」

「ああ。どうせ疑われるとは思っていたからな。俺自身だって生き返ったって実感がわかないし。」


 俺がこう言うと、ラファエルは質問を始めた。


「お前の名前は?」

「レオン・アントニウス。」

「俺の名前は?」

「ラファエル・オリシエル。」

「勇者パーティの賢者の名前は?」

「ニーナ・フォールディ。」

「戦士の名前は?」

「クレイン・レイティアル。」

「俺たちが最初に攻略したダンジョンの名前は?」

「不浄の妖蟲巣窟。」

「レオンの嫌いな食べ物は?」

「カリフラワー。」

「好きな食べ物は?」

「ブロッコリー。」

「お前が腰に佩いている剣の名前は?」

「聖剣フォーラ・アミュールと魔剣デスラビ・キラー。」

「聖剣を入手したのはいつどこで何から?」

「王国歴396年8月19日午後2時17分、凍結の山脈の頂上で聖属性モンスターのライトニングビーストから。」

「魔剣は?」

「王国歴397年11月7日午前0時3分、魔獣の帝国の最深部で邪属性最強モンスターの邪龍から。」

「お前が俺と出会ったのはいつどこで?」

「王国歴393年4月30日午前7時17分、ムラガの街のギルド【イグドラシル】で。」

「クレインと出会ったのは?」

「王国歴395年5月11日午後1時39分、トキの街のギルド【クレッティ】で。」

「ニーナと出会ったのは?」

「王国歴394年9月28日午前3時19分、デュライス山脈の麓で。」

「よし、じゃあこれで最後だ。ニーナは処女か?」

「知るか! ラファエル、女の子のプライベートに突っ込むな!」

「うん、その回答をするってことはレオンに間違いないな。」


 ラファエルはそう言ってうんうんと頷いた。と、その時、ラファエルの頭からゴスッと鈍い音が。どうやらニーナが宝石杖で頭を殴ったらしい。


「ラファエル! あなた、私のことを……」

「ニーナ、怒らないでやってくれ。ラファエルは俺の正体を見極める為にやったんだし、ニーナが純潔を保っていてもそうでなくても、俺は気にしないから。勿論クレインも。だよな?」

「何で俺に振る?」


 クレインは困惑気味だが、俺は強引に話を進める。


「気にしないよな、クレイン?」

「お、おうとも。俺はそもそも異性としてニーナに興味はないからな。」


 ――ゴスッ!


 クレインが宝石杖の一撃により気を失ったのは言うまでもない。



「ニーナ、テメエよくも俺を……」

「女に手をあげようとするな、クレイン。ニーナだって仮にも女の子なんだから。」

「ちょっとラファエル! 仮にもって何? 私は正真正銘女の子よ!」

「言い争い好きだな、お前ら。」

「ちょっとレオン、見てるだけ? あなたも参加してよ!」

「なんで被害を受けてない俺が参加しなきゃいけないんだ。」

「被害受けてなくたってこういうのは参加すべきだろ!」

「クレインまで何を言う。俺は参加しない。」

「じゃあ、せめてどっちの味方か言ってよ! 勿論私の味方よね?」

「いや、レオンは俺の味方だ!」


 ニーナとクレインが血走った目で俺を見ている。因みにラファエルは既に戦線離脱して溜息を吐いていた。対岸の火事というか、呑気なもので、この言い争いを収めるのは俺に任せたのだろう。


「お前らバカか? 俺はどっちの味方でもない。強いて言えば世界の味方だ。」

「うー……それで逃げるのなしよ! そんなレオンも好きだけど!」

「レオン、お前は逃げ回るだけか? この腰抜け勇者!」

「何とでも言え、クレイン。俺をその程度で逆上させられる訳がないだろう。言い争いたいなら好きなだけ言い争ってろ。俺はラファエルと茶でもしばいてるから。」


 俺はそう言うと、異空間に格納していたテーブルと椅子を取り出し、ラファエルを座らせる。


「レオン、今日の茶は何だ?」

「大魔王を倒したんだから最高級のにしよう。玉露とシルバーニードルズ。どっちが良い?」

「レオンに任せるよ。」

「じゃあ玉露だな。お茶請けは羊羹だ。」


 俺がこう言うと、俺の足元にニーナとクレインが野球のホームベースにヘッドスライディングするような勢いで土下座してきた。


「どうした、2人とも。もう言い争いは良いのか?」

「レオン……謝るからお茶を私にもちょうだい……なんか急に寂しくなっちゃった……」

「俺も同じだ。謝るから参加させてくれ……」

「分かった分かった。元々ラファエルと2人で茶を飲む気はないし。な、ラファエル。」

「ああ。レオンに言い争いを収めるのを丸投げした俺にだけ茶を振る舞うなんて、レオンがする訳ない。それに、大魔王を倒したのはレオンだけど、俺たちだってやることはやったからな。全員で祝うのが普通だろう。」

「よく分かってるな、ラファエル。」


 俺はそう言うと、椅子を2つ追加で異空間から取り出し、玉露を淹れるのだった。

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