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#000.最終決戦と2周目

「うおおおおおお!」


 大魔王城最上階、玉座の間。俺が振るった剣が大魔王の胸を貫いた。


『勇者よ……我を討ったところで何になる……貴様にはもう何も残っておらぬだろうに……』


 倒れ伏した大魔王が忌々し気に言う。確かにこいつによって俺の仲間の魔術師も賢者も戦士も倒されてしまった。皆息絶えてこの玉座の間に倒れている。


「ああ、何も残ってねえよ。だが、お前を葬らなきゃ、俺はあいつらに顔向けできねえからな。さあ、塵と消えろ! 【虹夢撃砕弾レインボー・クラッシャー】!」

『グオオオオオオオオオオォォォ……!』


 俺が残った力をかき集めて撃った聖魔法により、大魔王は完全に消え去ったが、それは俺にもかなりのダメージを与えてきた。具体的に言えば、大魔王との戦いで負った傷と同程度。


「クッ……大魔王は倒したってのに、これじゃあ……いや、まだいける!」


 俺はある手を使うことにした。もうどのみち俺は助からない。だったら俺の残り少ない命でもっと尊い命を救うべきだろう。それが【勇者】としての最後の使命だ。


「我が命よ! その身を削りて尊き命を救いたまえ! 【究極蘇生ハイパーレヴィヴァル】!」


 この魔法により、俺の命は急速に摩耗していく。そして、それと反比例するように魔術師、賢者、戦士の体が光に包まれ……


「「「ううう……」」」


 彼らは蘇生した。そして、倒れ伏している俺を見つけ、慌てて駆け寄ってくる。


「おい、どうした、レオン!」


 戦士のクレイン・レイティアルがそう俺に声をかける。


「悪い、俺はどのみちもう助からないからな……お前らに、俺の分まで生きて欲しいんだ……」

「なんであなたはそうバカなのよ! いっつも自己犠牲ばっかりで! 私たちを生かして、自分だけ死んで楽になろうなんて、絶対許さないんだからね!」


 賢者のニーナ・フォールディはそう言うと、涙をぬぐって俺に治癒魔法をかける。だが、命の摩耗は止まらない。


「賢者のお前と比べりゃ……世の中の奴らは全員バカだ……それに、あの禁術を使ったんだ……勇者のみ取得可能の蘇生術を……もう引き返せない……」

「クソッ、どうにもならねえってのかよ……」


 魔術師のラファエル・オリシエルが悔しそうに呻く。


「仕方ねえだろ……ラファエル……お前らは……まだ生きられる……命の残り時間が……ある……無駄にするな……俺みたいに……」

「おい、待て! レオン、死ぬな!」

「それは無理だ……クレイン……どうせ俺は……いずれ風化するだけの存在だ……大魔王と戦って……討死にして消える……その程度なんだよ……世の中が求めていた……勇者ってのは……」

「そんなこと……そんなことないわ!」

「おうとも! お前は俺たちの立派なリーダーだ!」

「ニーナ……ラファエル……俺のことはもういい……お前らと戦えてよかったよ……」

「そんな……お願い、レオン! 生きて!」

「もうダメだ……摩耗が激しい……あと1分持つかどうかだ……最後に1つ……我が儘を聞いてくれ……」


 俺はそう言うと、クレイン、ニーナ、ラファエルの顔を順に見て、


「俺にトドメをさしてくれ……最後のお願いだ……」

「んなっ……出来る訳ねえだろ!」

「そうよ、そんなことができる訳……」

「……分かった、やろう。」


 クレインとニーナが反対の声をあげるが、ラファエルはやると言ってくれた。


「何言ってやがるんだ、ラファエル!」

「そうよ、何で私たちがリーダーの命を奪わなきゃ……」

「魔王に殺されるより、俺たちに殺されたいとレオンは願ってる、だったらそれを果たしてやるのが俺たちの務めだろ! それとも、俺たちの絆はそんな柔なもんなのか?」


 ラファエルが怒鳴る。するとそれを聞いて、クレインとニーナも顔を変え頷いてくれた。


「悪い……俺の我が儘に……付き合って貰って……」

「謝るな! 俺たちがお前に付き合うのは当然だろ!」

「生まれ変わったら、また4人で一緒に過ごすわよ! 約束だからね!」

「俺たちがお前のことは絶対に忘れさせない!」

「クレイン、ニーナ、ラファエル……ありがとう……そして、さよなら……安らかに逝けるよ……」


 俺がそう言うと、クレインの剣、ニーナの攻撃、ラファエルの魔法が俺に直撃。俺の命は完全に消え去った。


            ※ ※ ※


『もしもし、聞こえます?』


 俺は真っ白な空間にいた。男とも女ともつかない中性的な声が、どこからか聞こえてくる。


「ああ、聞こえてる。」

『あ、良かった、聞こえてました。私は生命管理課のメルーと申します。あなたのお名前は?』

「俺は元勇者のレオン・アントニウスだ。」


 俺がこう答えると、急にメルーとかいう謎の声が慌てたようになった。


『えっ? あ、あの・・レオン・アントニウス様ですか? どうしよう? 声が裏返っちゃうかも……あ! しかも今スッピンなのに! レオン様じゃきっと私の姿見えちゃうよね? レオン様、少々お待ちください! すぐ戻ります!』


 そう謎の声がつげる。その後、体感で2分ほど静寂が続いた。


「何なんだ、一体。この空間も訳わかんないし。そもそも、俺は死んだはずなんだけどな……」


 俺がそう呟くと、謎の声が再び聞こえてきた。


『仕切り直しします。よろしいですか、レオン様?』

「仕切り直し? いや、その前に説明をお願いしたいんだけど……」

『じゃあ、後ほどきちっと説明しますので、仕切り直しで!』


 そう謎の声は言うと、


『もしもし、聞こえます?』


 と先程と同じことを言ってきた。


「ああ、聞こえてる。」

『あ、良かった、聞こえてました。私は生命管理課のメルーと申します。あなたのお名前は?』

「俺は元勇者のレオン・アントニウスだ。」


 仕方なく俺は同じ言葉を返す。


「この後は同じにしないでくれよ、メルー。」


 一応釘を刺す。すると、謎の声はまた慌て始めた。


『えっ? あのレオン様が私を呼び捨てに? きゃああああ! 嬉しすぎて死にそう! 私死なないけど!』

「あの、ハッスルしてるところ悪いけど、説明を頼めるか?」


 俺がこう声をかけると、謎の声は、


『あ、すみません。ずっと憧れてたレオン様に呼び捨てにして貰えて嬉しすぎまして……このままお話するのも失礼なので、今実体化しますね。』


 と言った。すると、俺の前に金髪の女性が出現。


「では、改めまして自己紹介させていただきます。私の名はメルー。生命管理課の神です。」

「神?」

「はい、神です。それで、あなた様は本当にあの勇者、レオン・アントニウス様なんですね?」

「そうだけど。で、ここはどこだ?」

「ここは転生管理センターです。勇者であるレオン様はその正義の心と強さが絶対神様に認められましたので、甦ることが可能なのです!」


 ハイテンションに言うメルー。


「本当か?」

「はい! そして、私はそのレオン様を復活させるという名誉ある係に任命されました!」

「俺を復活させることがどうして名誉なんだ?」

「私はレオン様の大ファンなんです! まあ、それは兎も角ですね、クレイン・レイティアルさんもニーナ・フォールディさんもラファエル・オリシエルさんも悲しまれてますよ。まだ玉座の間であなたの亡骸に縋りついて。」

「まだあいつら大魔王城にいるのか……」

「このままだと大魔王城は崩壊します。危険ですよ。ついでに、あの方々を救出できるのは勇者特有能力で飛行ができるレオン様だけです。」

「ラファエルも飛べるはずだが。」

「ラファエルさんは精神集中できてないみたいですから、今すぐには飛べませんね。あ、崩壊まであと30秒です。」

「マジかよ……なら、復活するしかねえ! 頼む! 復活させてくれ!」

「了解しました。では、あなたの存在を再び現実のものと致します。尚、私はこれ以後、勇者レオン・アントニウス様の守護神となりましたので、お呼び下さればいつでもコンマ1秒以内に馳せ参じます。では、行ってらっしゃいませ、レオン様!」


 そうメルーの声が響くと同時に、俺の意識は急激に薄れていった。


            ※ ※ ※


「クソッ! レオン! 本当は生きてるんだろ! 目を開けてくれよ!」

「レオン! せっかく大魔王を倒したんじゃない! これからは使命に縛られずに生きられるのよ! だから生き返って!」

「レオン……お前にばかり辛い思いをさせてすまなかった……」


 俺が再び意識を取り戻した時、俺の耳にクレイン、ニーナ、ラファエルの声が聞こえた。俺はゆっくりと目を開ける。


「れ、レオン……?」

「生き返った、の?」

「本当にレオン……なのか?」


 3人が言ってくる。本当なら答えてやりたいが、今は時間がない。


「答えは後だ!」


 俺はそれだけ言うと、クレインとラファエルを俺にしがみつかせ、ニーナを抱きかかえると最上階の窓から飛び出した。それと同時に呪文を唱える。


「我が身に翼を与えよ! 【飛翔翼フライ・ウィング】!」


 そう叫ぶと、俺の背中に翼が生えた。俺はそれを羽ばたかせてゆっくりと着地。後ろを振り返ると、大魔王城が大きな音を立てながら崩れていた。


 この瞬間から、大魔王を倒した俺、レオン・アントニウスの2周目人生が始まったのだった。

新作、勇者が好きに生きる冒険譚です! 完全なる不定期更新ですが、よろしくお願いします!

面白かったらブクマ、評価などお願いします!

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