表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/246

開始

「……ください、起きてください。進藤君」


(明日香?)


 体を揺すられて目を覚ます。体を起こし、俺の体を揺すった本人に目をやる。そこにいたのは栗原だった。飛鳥と同じ起こし方をするから気づかなかった。


「おはようございます。進藤君」

「おはよう栗原。悪いな、起こしてもらって」

「いえ、私がその……起こしたかったので、気にしないでください」

「栗原が?」


 俺がそう聞くと、彼女はコクリと頷いた。


「最近、進藤君は他校の人や祐奈ちゃんとばかり話してるから、話す機会がなくて……それで……」


 そう言われて確かにと思う。合宿に来てからトーナメントや今日のボス戦やら色々な事を考えていたせいか、栗原とは全く喋っていない。というか関わっていない。


「なんかごめん」

「そんな、進藤君が謝る事じゃないんです。全部私の勝手なわがままだから……」


 表情を曇らせて俯く栗原。すると、笑顔で顔を上げて口を開いた。


「今日のクエスト、頑張ってくださいね。応援してます」


 そう言うと、栗原は扉に向かって歩いていく。胸の中で渦巻く罪悪感。あんな顔をされたら何もせずに返すなんて出来ないじゃないか。しかし、昨日同様に俺にはその手のコミュ能力はない。だから、今彼女に出来る俺の最大限を。


「栗原!」


 俺はベッドから飛び上がって栗原の肩を掴む。


「……っ!」


 栗原が驚いて振り返る。その反応を見て俺も手を引っ込める。


「どうしたんですか?」

「えと……その……」


 何を言おうかなんて考えていない。だから俺は、自分の思った事を喋った。


「俺……お前の分も頑張るから……その……見ててくれ」


 この瞬間、自分が物凄く恥ずかしい事を言った事に気が付き、心臓の鼓動が高まる。なんて言われるだろうか。哀れまれるだろうか。恐怖が俺の中で渦巻いた。


 覚悟して栗原の顔を見る。栗原は哀れみの目を向けているどころかニッコリと微笑んで答えた。


「はい」




 朝食を食べ終え、自由時間の後、多目的ルームに集められた。時刻は十一時四十分。壇上に上がった一ノ瀬が一昨日の風呂場で話した事を全て話す。そして五十分。俺、篠宮、一ノ瀬、白石は一つのテーブルに座る。


「進藤、頑張ろうな」


 篠宮にそう言われて俺は「ああ」と言って頷く。


「進藤、絶対勝ちなさいよ」


 後ろに立つ高崎がそう言う。その隣に心配そうに俺達を見守る栗原の姿があった。


「進藤君、頑張ってください」

「うん」


 栗原の声援にニッコリと応える。その後も色々な人の声援を聞いていたら、後二分で十二時。例のボス戦が始まる時刻だ。


「進藤。そろそろだ」


 一ノ瀬にそう言われて俺は頷き、ヘッドリンクを頭に着ける。


「カウントして、十二時になった瞬間、電源を入れるわ。みんな、準備はいいわね」


 一ノ瀬が自分の腕時計を見ながらそう言う。俺達はそれを聞いて返事を返す。


「ああ」

「分かった」

「了解」


 十二時まで後一分を切る。着々と時間が進んでいく中、初めての事もあり緊張が高まる。


「カウント。十、九、八、七……」


 一ノ瀬がカウントし始める。俺は直ぐにログイン出来るように電源スイッチに指を置く。


「……四、三、二、一、開始」


 電源を入れる。すると、いつものアナウンスが流れた。


(始めよう。もう一つの現実リアルを)


 脳裏で呟いたその時、俺の意識は体から引き剥がされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ