決戦前夜
パーティー終了後、部屋に戻ってベッドに飛び込む。さすがに疲れた。まあ三連続で強敵を相手にすればそうなるだろう。寝不足だったし。
時刻は午後十一時。パーティーをかなり楽しんだせいかもうこんな時間だ。
寝ようか。そう思ったその時、風呂に入っていない事に気がついた。風呂に入らずに寝たら妹飛鳥に怒られてしまう。俺は着替えを用意して部屋を出た。行くのは当然大浴場。脱衣所で服を脱いで大浴場に入る。浴槽に貼られた湯に足を入れ、そのまま体まで浸かる。
「ふー」
息を吐く。気持ち良い。今日の疲れが湯船に溶けて行くみたいだ。
入ってから一分。ガチャリと大浴場の扉の開く音が聞こえる。昨日と同じ展開。この別荘に男は俺だけ。確実にやばい状況。俺は隠れるべく奥に行こうとしたが、それより先に見つかってしまう。
「進藤……」
「お前……なんでこんな時間に」
白石だ。白い肌が俺視界に入り、思考が止まる。
「お前こそ」
数秒の静寂を経て、俺の思考はやっと回り出した。
「お、俺、出るから」
そう言って風呂から出ようとする。
「待って、話がある」
白石にそう止められて、俺は湯船に浸かり直し、彼女に背中を向ける。後ろで湯船に浸かる音が聞こえた。
「明日の敵、どんなのが出ると思う?」
「さあ、このゲーム始まって初だからな。見当もつかない」
「そう」
今日の白石はよく喋る。そう思ったその時、また彼女は口を開いた。
「赤いスパーク。あれはなんだ?」
「……っ!」
まさか画面越しに見えたというのか。間近にいた篠宮でさえ気づかなかったあれに。
「まだ詳しい事は分かってないけど、アビリティ発動の手前だと思う」
「そうか……」
そう言って白石は黙り込む。俺は女子との会話の仕方なんて知らない。この後何を喋れば良いのかも。ましてや彼女は無口なタイプ。コミュニケーションを取るにはレベルが高すぎる。
「まあ、答えは明日わかるから良いけどな」
結局俺のコミュ能力ではこう応えるのが精一杯だった。俺はそう言って湯船から上がり、出口に向かう。
「進藤、もう一度あそこに戻ってこい」
白石が俺の背中に言葉をかけて来る。
「そこにいるお前を、次こそ倒す」
彼女なりの決意表明、いや、励ましだったのだろうか。俺はその言葉に応えるべく口を開いた。
「俺はもう、誰にも負けるつもりはないよ。明日の強敵にもな」
俺はそう言い残し、大浴場を出た。




