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試合後

 現実世界に帰ってきた俺は、ヘッドリンクを外して一息吐く。


 周囲を見る。何故か沈黙している。


『優勝は……紅ヶ丘高校の篠宮茜!』


 一ノ瀬が壇上でそう叫ぶと、同時に歓声が巻き起こる。


(負けたか……)


 今更のようにそれを実感し、頬が緩む。まさか俺が負けるとは思っても見なかった。ここ半年負けなしだったからそう思えた。


「進藤」


 そんな事を考えていると、俺を破った篠宮が俺の隣に立っていた。それを見て俺も立ち上がる。


「ナイスゲーム」


 笑顔でそう言って手を差し出す。俺はそれを見て笑顔で手を握り、一言言う。


「ああ、楽しかったよ」


 俺と篠宮の握手をしたその時、会場全体で拍手が巻き起こった。




「かんぱーい」


 時刻は午後八時。外でのパーティーが始まる。主役は当然優勝した篠宮。篠宮の周りには他校の生徒が群がっており、楽しく騒いでいる。


 俺はパーティーの端で渡されたジュースを少し飲んだ。


「惜しかったわね」


 俺の近くに寄ってきた一ノ瀬がそう言う。


「主催者様がこんな所にいてもいいのかよ」

「主催者でも自由行動はしてもいいはずよ」


 そう言って一ノ瀬も飲み物を一口。彼女のグラスの中身が緑色のところを見るとメロンソーダだろうか。


「さっきランキング見てきた」

「どうだったの?」

「二万四十一位。かなり下がった」

「まあ、それくらいは下がるわよね」


 今頃七位の席は篠宮が座っているだろう。驚くべき強さに俺も今尚驚いている。


「けどまあ、本題は明日だからな」

「そうね。どんなモンスターが出て来るか見当もつかないわ」

「参加者は、俺と篠宮、一ノ瀬と白石だよな」

「そうよ」


 片手剣三人に大剣一人か。なんともバランスの悪い組み合わせだが、個々に強いからその辺はカバー出来るだろう。


 そんな事を考えていると、篠宮とのデュエルであったある出来事を思い出す。


「一ノ瀬」

「なに?」

「お前、剣から赤いスパークが出た事あるか?」

「赤い……スパーク……」


 それを聞いた一ノ瀬は首を傾げる。


「ないけど。それがどうしたの?」

「今日の篠宮とのデュエルで起こったんだけど、それに見覚えはないか?」


 それを聞いた一ノ瀬は顎に手を当てて考え出す。そして、思い出したかの様に呟いた。


「アビリティ……」

「お前もそう思うか?」


 アビリティ発動時のエフェクトは稲妻のエフェクトが走る。その色は限りなく赤に近い。


「待て……て言う事はお前まさか片手剣のアビリティを使ったのか?」

「いや、あれはアビリティじゃない。それの一つ手前の状態だ」


 一度、リサの勧めでレイピアのアビリティを使った事があるが、その時の感覚とは程遠かった。


「引き金は?」

「わからない。いつもと同じ様にゲームしてただけだから」


 そう。一番困っているところはそこなのだ。今日の戦闘を何度も見直しても今までやって来た事と同じで特に変な所はない。


「その答えは明日わかるわ」

「お前の言い分だと、一番にクリア出来る前提なんだけど」

「当然そのつもりよ」

「強気なやつ」


 皮肉を呟き、ジュースを一気に飲み干す。すると、篠宮がふらふらと歩いてやって来た。


「しんどー」


 何故か篠宮の顔は赤かった。


「ど、どうした篠宮?」


 篠宮は真っ赤な顔で笑顔を見せ、答えた。


「あそぼ」

「は?」


 まるで子供だ。そう思ったその時、篠宮に押し倒された。


「し、篠宮?」


 その時、篠宮の息が俺にかかった。そして気付く。篠宮の息は酒臭かった。


 俺は篠宮の肩を押して体を起こし、質問する。


「お前、酒飲んだか?」

「へ? なんのこと?」


 どうやら本人に自覚はない様だ。俺はパーティー会場内を見渡し、中野を探す。中野を見つけ、目が合うと、彼女は直ぐに目を逸らした。


(あいつか)


 俺はそう確信し、篠宮を立たせようとした。しかし、篠宮は寝息を立てて俺にもたれかかって来た。


「すーすー」

「寝てるし」


 俺は溜息を吐いて、彼女をおんぶすると、別荘に向かう。


「どこ行くの?」


 一ノ瀬にそう聞かれて、俺は「寝かして来る」と言って別荘内に入った。


 廊下を歩いていると、篠宮の寝息が耳にかかる。彼女の体温を間近で感じ、柔らかい何かが俺の背中に押し当たる。この時点で俺の理性はぶっ飛びそうだった。


 なんとか耐え切って篠宮の部屋に到着し、ベッドに寝かして布団をかける。俺も早く戻らなければ。そう思って部屋を出ようとした。


「進藤」


 篠宮に呼ばれて振り返る。


「私の勝ちだ」


 どうやら寝言の様だ。それ程までに嬉しかったのか。


「今度は俺が勝つ」


 俺はそう言い残して部屋を出て、パーティー会場に向かった。

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