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一回戦

 通常のデュエルだと、ただポイントがやり取りされるだけである。しかし、ランキングトップテンのプレイヤーは話が違う。負けた瞬間にランキングが入れ替わる。そしてランキング七位である俺にそのルールは適用される。


 一回戦の相手は高崎。短剣二本を装備した双剣スタイルだ。同じ部活でいつも一緒にプレーしている事もあって、彼女の強さはよくわかっている。だが、それより危険な存在をつい昨日知った。


 一ノ瀬が頭に浮かぶ。負けたら即座にその座を失うわけだ。つまり彼女が一番危険。


「進藤」


 高崎に呼ばれる。いつの間にかカウントがもう少しでゼロに達するところで彼女は口を開いた。


「私が勝つ」


 決意表明。その後カウントがゼロになる。その瞬間彼女は地面を蹴った。俺はそれにつられる様に地面を蹴る。


(速い!)


 始まった瞬間驚かされた。いつもより高崎は速いのだ。一段階ぐらい。それに対応しようとしたが、更にそれより先に短剣が俺に襲いかかる。少し体を反ると、さっきまで顔があったくらいの位置を剣が通り過ぎる。避けた。そう思ったが、頬に少し焼ける様な感覚を覚える。そしてHPバーが数ドット削れた。


(あっぶね……)


 体を反らなければ確実にやられていた。しかしホッとしたのも束の間、高崎の双剣は凄まじい速度で襲い掛かってきた。それを剣で捌き、捌ききれないものは避け続ける。避けきれない斬撃は体を掠めた。


(間違いない)


 HPバーが削れていく中、一つの確信を覚え、俺は口を開く。


「お前、筋力ステ上げただろ!」

「脚力もな!」


 そう言って飛んでくる蹴りをしゃがんで回避し、攻撃に転じようとするが、それよりも先に短剣が襲い掛かってくる。このままでは攻撃に転じる前にHPバーが全部持ってかれる。そう悟った俺は大きくバックステップして距離をとった。その瞬間、高崎の目が光った。


(しまった!)


 俺がジャンプするのをこいつは待っていたんだ。今更後悔してももう遅い。何故なら俺はもう既に空中にいるからだ。ならば、空中で出来る事をする事だ。そう思った刹那、高崎の短剣が飛んでくる。俺は剣を振り払って弾く。その瞬間、ある光景がフラッシュバックした。一ヶ月前、六位の殺人鬼と戦ったあの瞬間だ。これをデジャブと言うのだろう。恐らく、彼女はあの時の戦いをちゃんと記憶していたのだ。それを裏付けるかの様に彼女は俺に飛びかかってきた。しかも確実に仕留める為に短剣の握り方は逆手。


 悪寒が走る。これはまずい。そう思ったその時、彼女の持つ短剣が稲妻のエフェクトを放った。アビリティだ。アビリティの発動条件は十連続で攻撃して溜めモーションをする事。既に条件は揃っていた。効果は威力上昇。ほんとにヤバイ。


 そして俺達は倒れ込んだ。砂埃が舞う中、高崎は俺に上から抑えられている状態だ。アビリティを発動させた短剣は咄嗟の判断でガードした腕に刺さっている。血液の様にダメージエフェクトが流れ出す。そのまま押し込まれそうだ。こいつの筋力ステータスは俺より高いのか。まあそんな事考えている暇はない。このままだと今だ稲妻のエフェクトを放つ短剣が俺の体に突き刺さってしまう。


(すまん、高崎)


 内心謝りつつ、俺は足を上げて高崎を蹴飛ばす。これで彼女は俺から離れた。俺はフラフラっと立ち上がって彼女をHPバーを確認する。半分削られている。まさかここまでとは思っても見なかった。攻撃だってもっと防げたかもしれない。あのデジャブだってもっといい防ぎ方があったかもしれない。だが自分が招いた結果だ。一ノ瀬ばかり頭をよぎり、高崎を軽んじて戦ったこと。


「やっと戻ったか」


 いつの間にか立ち上がっていた高崎がそう口走る。


「何が?」

「なんでもない。いくぞ!」


 彼女が何を言いたかったのかはわからないが、ここからは全力でいかなくては。


(集中しろ)


 俺はそう脳裏で呟いてPゲージを溜めながら走った剣が黄色のライトエフェクトを纏い、同じくPゲージを溜めて黄色いライトエフェクトを纏った短剣が衝突した。そして、短剣が宙を舞う。俺は直ぐに刃を彼女の首元に向ける。


「筋力ステータスが俺より高いから勝てると思ったか?」

「まさか」


 高崎は敗北宣言をした。こうして一回戦は俺の勝利に終わった。

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