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夜中

 深夜一時。スマホゲームに夢中になっていたせいでいつの間にかもうこんな時間だ。流石に眠くなって来る。


「そろそろ寝るか」


 無意識にそう呟き、スマホを置いて部屋の電気のリモコンを手に取る。その時、扉からノック音が聞こえる。こんな夜遅くに誰だろうか。扉を開いてみるとそこにいたのは高崎だった。


「どうした、こんな時間に?」

「その……」


 頬を染めて落ち着かない感じで俺を見て来る。その目線にドキリとしつつ、高崎の話を聞く。


「トイレ……ついて来て欲しいの」

「それなら、篠宮か栗原と一緒に行けばいいだろ」

「今二人共、怖いテレビ見てて……」


(そう言うことか)


 確かにそんな二人と一緒に行ったら大変な事になりそうなのは分かる。と言うかあの二人怖いの大丈夫だったのだろうか。


「ちょっと待ってろ」


 俺は部屋に置いて来たスマホをポケットにしまって扉を閉めた。


「行くか」


 高崎はコクリと頷き、俺のシャツをつまみ出す。本当に怖いんだなと思いつつ、二人でトイレに向かう。


「テレビ、どんなの見てたんだ?」

「ちょっと、思い出させないでよ」

「すまん」


 ここから会話は無くなった。まあ仕方ない気もするが。て言うかネタないし。と言ってもトイレはすぐそこだ。高崎が早足にトイレに入って扉を閉める。


「し、進藤。そこにいるわよね」

「分かってるよ」


 そう答えて、壁に寄りかかる。それからしばらくして高崎がトイレから出て来る暗がりだが頬を少し染めているのが分かった。それだけ恥ずかしかったのだろう。


「行くわよ」


 スタスタと先を歩いて行く高崎。しかし何処からか聞こえた鳥の鳴き声に驚きトイレの前まで戻って来て今度は俺の腕を掴む。女の子にここまで密着されるのは初めてではないだろうか。少し鼓動が速くなる。


「だ、大丈夫か?」

「よ、余裕よ」


 俺の質問にそう返すと腕から離れて服を摘む。結局そう言う体制に入るのねと思いつつ、俺は先に進んだ。


 ある程度進んだところで、俺は足を止めた。その理由はすぐそこの曲がり角から話し声が聞こえるからだ。


「な、なに?」


 高崎も聞こえたらしく、より一層体を俺の体に密着させる。それにドキリとしつつ、ポケットからスマホを取り出し、懐中電灯機能を使える状態にしておく。そして、声の主が曲がり角から顔を出した瞬間、懐中電灯でそれを照らした。


「きゃあぁぁぁっ!」

「きゃあぁぁぁっ!」

「きゃあぁぁぁっ!」


 高崎と声の主二人が悲鳴をあげる。ていうかうるさいうるさい。みんな起きちゃうから。


「篠宮と栗原?」

「え、進藤?」


 よく見ると篠宮と栗原だった。


「どうした二人揃って?」


 俺がそう聞くと、二人は顔を見合わせて戸惑いながらも言った。


「トイレ……」


(お前らもかよ)


 内心愚痴る。高崎みたく怖いテレビ見ていた結果だろう。


「んじゃ、俺達は部屋に戻るから」

「つ、ついて来てくれないんですか?」

「は?」


 栗原の意外な言葉に驚く。


「いや、お前ら二人でいるだろ」

「女の子二人だと……心細いだろ」


 篠宮にそう言われて確かにと思う。これはついて行くしかないようだ。


「高崎、お前はもう部屋に戻って……」

「私も行く」


(ですよねー)


 まさかこうも短期間にトイレに二回も行く羽目になるとは思っていなかった。しかもそれはただの付き添いだ。


 こうしてまたトイレに行く羽目になり、そしてやっとの事で自分の部屋の前まで戻って来た。


「すまない進藤。無茶なお願いを言ってしまって」

「いいよ別に」


 篠宮が申し訳なさそうに言うので、流石に責められない。


「そんな事よりさっさと寝ようぜ。もう一時過ぎだぞ」

「そうですね」


 栗原がそう答え、みんな部屋に戻る。さっさと布団に入って、目を瞑る。


(散々な目にあった気がする)


 そう脳裏で呟いたその後すぐ、意識が遠のいた。


 後日、夜中この別荘で悲鳴が聞こえると言う都市伝説が伝わる事となる。

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