通話
最近学校から帰るのが遅いからか、帰って即飯を食い、風呂に入って自分の部屋でダラリとしている。
俺はいつもの如くベッドに寝転がると、スマホの画面を操作して連絡先を見る。新しく増えた二人の連絡先を見て俺は内心嬉しくも感じつつ、なんでこうなったのという心情だった。
「はあ」
日頃の疲れだろう。この四日間いろいろな事があり過ぎた気がする。て言うか一番の疲労の原因は月曜日の突然の襲撃だろう。早く金曜日を終わらせて休みたい。
(……って、土日も部活あるのか)
俺はその現実を見たところで瞼が重くなって来た。睡魔だ。俺はその睡魔に逆らう事なく瞼を閉じる。どんどん意識が遠ざかる。このまま寝よう。俺はそう思った。
「ブー、ブー」
「……んあ?」
突然のバイブ音で睡魔が吹き飛ぶ。音の発生源が俺の耳元。スマホである。
スマホの画面を見ると、栗原と画面に表示され、受話器のボタンが二つ表示されている。
(電話?)
栗原からのいきなりの電話。部屋の時計を見るともう十時半。結構遅い時間だ。俺は何故電話して来たかの疑問を晴らすため、応答ボタンを押した。
「もしもし」
『もしもし、進藤君。夜分遅くにすいません』
謝罪から入る栗原にますます疑問が浮かぶ。
「それで、どうしたんだ?」
『あの……もし良かったら今から私とゲームしませんか』
「は?」
気になりの回答に思わず声が出る。
「ゲームって、《バトル・アリーナ》か?」
『はい……嫌、ですか?』
(そんな言われ方したら断れねーよ)
「わかった。すぐログインするから像の前に来てくれ」
俺はそう言って電話を切るとベッドの上に置いてあったヘッドリンクを頭に装着してスイッチを押す。
(あれ、あいつヘッドリンク持ってんの?)
VRゲーム初心者の栗原がヘッドリンクを持っている事はないはずだ。
『ヘッドリンクを起動します』
突如現れた疑問を引き剥がすかの様に、俺の意識は体から引き離された。
アバター生成直後、俺は走って像の前まで来た。周囲にはたくさんのプレイヤーが溢れかえっている。流石ネットゲーム。夜の方が人が多いな。
像までついて、俺はその像を見上げた。台座の上で両腕を組んで剣を目の前に刺した上半身の像はいかにも威厳を放っている。製作者はこの像を『終焉の像』と言っていた。この意味は未だ掴めていない。俺的には一度戦って見たいなーなんて思ったりしたが、そもそもオブジェクトである像が戦えるはずないのでこの像を見たときに描いた夢はすぐに消し飛ばした。
「進藤君」
可愛らしい声で俺を呼んだのは今まさに走っている栗原だった。
「栗原。ここでのリアルネームの呼びかけはタブーだ」
「え? どうしてですか?」
俺はその返答を聞いて溜息を吐いた。こんな事ならちゃんと最初に教えておくべきだった。
「リアルとゲームを一致させると危険なんだ。それだけは覚えておいてくれ」
「はい……分かりました」
俺は周囲を確認した。幸いBGMと人の声で誰にも聞こえていないらしい。ちなみに頭の中に直接流れ込んでくるBGMを俺は設定で消してあるので聞こえないが、なかなか陽気なBGMが流れているはずだ。
俺は栗原を注意したところで一つの疑問を尋ねる。
「それで、どうしたんだ?」
俺がそう聞くと、栗原は少しの間間を開けて言った。
「シン君とデュエルをしたかったんです」
「は?」
予想外過ぎて声をあげた。俺は戸惑いを振り払って聞き返す。
「なんで俺なんだ?」
「それについてはデュエルの時に話します」
「わかった。観戦拒否でつくるよ」
栗原の狙いは分からないが、取り敢えずデュエルはしようと思う。
俺と栗原はいつも通りカウンターに向かい、デュエルの申請を受ける。設定時に観戦拒否設定をして俺達は出発口へと向かった。
「それじゃ、行くか」
「はい……あ、ちょっと待ってください」
栗原はそう言ってメニューウィンドウを呼び出し、画面を操作し始める。ウィンドウを「ええっと……」とか「あっ……」と戸惑いながらウィンドウを操作する。手伝ってやろうと思ったが、それより早く栗原がウィンドウを閉じた。
「シン君。準備オッケーです」
俺は頷き、出発口に足を踏み出した。




