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魔術王と氷の魔女  作者: 上総海椰
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3-2 氷の魔女

部屋に入ってきた女性は息を飲むほどの美しさだった。

光を受けてその髪は銀色に輝き、その真っ青で気品に満ちた双眸はまるで蒼海のようでもある。

服の上から露出する真っ白で透き通る肌は大理石を思わせ。

その毅然とした物腰は見る者を惹きつけてやまない。

まるでその場所の色がその女性一人に塗り替えられてしまった印象すら受ける。

「あなたがラフェミナ様に認められ聖堂回境師になったというフィアですか」

「はい」

フィアは丁寧に一礼して見せた。

「こうして会えることを大変うれしく思います。フゲンガルデンで起きた事件のことや、リブネントの会議のこと、

本当はもっとあなたとは語らいあいたいところなのだけどごめんなさい。この通りのありさまで」

「いえ」

エーダは背後にいるヴァロに視線を向ける。

「そちらの者が…『竜殺し』のヴァロ。…あら、あなた魔剣とも契約しているのですね」

「ええ」

ヴァロが魔剣と契約していることを一目で見抜いたらしい。

一目で見抜かれるとはヴァロは少しだけ驚いた。

「…ヴァロのことはヴィヴィや私、そしてラフェミナ様もご存じのことです」

フィアはこの件にはあまり触れてほしくないようだった。

それもそうだ。

「フィアさん、どうかここミョテイリで暴れた魔族捕縛のために、私に力を貸してはいただけませんか?」

フィアはエーダの言葉に反応を示さない。

「…私にはもう手段がありません。魔族たちはフィリンギの地に入ったという目撃情報もありました。

本来ならば現在捕縛の任にあたるはずの異端審問官『狩人』は動けず、現在応援を本部に求めているとのこと。

ここまで応援が駆けつけてくる頃には私たちの手の届かない場所にいることでしょう」

悔しげにエーダは語る。

「私はラフェミナ様からここを預かる立場の身、動くことはできないのです。

このまま魔族どもを取り逃がすようなことがあっては、ここを預かる者としてラフェミナ様に顔向けできません」

「フィア様、どうか」

そう言ってエーダはフィアに頭を下げる。

その姿に周りにいた従者はたまらず声を上げた。

「エーダ様」

同じ聖堂回境師とはいえ、エーダの方が年齢は上だし、ミョテイリと言う管理地まで持っている。立場的には本来頭を下げる者ではない。

「お黙りなさい。私は同じ聖堂回境師として頼んでいるのです。口出しは不要です」

背後の従者が声にエーダは一喝する。

ここまでされてフィアは断る理由はない。

「…わかりました」

フィアは嘆息してそれを了承した。

「それじゃ、フィア殿たちは私と一緒に行くということでいいのか?」

「ええ。ヴィズル。…話では昨日到着するということでしたが…」

エーダはしばしの逡巡を見せる。

「またあなたたちなのですね」

ギロリと背後にいる二人の従者を睨み付ける。

「そのような不浄と付き合われるのは…」

「…あなたたち、私の顔に何度泥を塗るつもりですか?」

決して大声ではないが、妙な圧迫感のようなものを感じる。

「決してそのような…」

従者たちはしどろもどろな答えをする。

「言い訳は結構。あなたたちが私の客人に働いた非礼は私への非礼でもあります。

次に同じようなことがあれば、即刻自身の結社に戻っていただきます。よろしいですね」

毅然とそう言い放つさまは女王そのもの。

叱られているというのになぜか従者は顔を赤らめている。

『氷姫』という二つ名は半端ないらしい。とんでもないカリスマである。

「やっぱりいいな…」

横でヴィズルはぼそりと漏らす。あんたもかよとヴァロはあきれた。

周囲を見ればまともなのはフィアとヴァロ、ココルだけである。

エーダはヴィズルに振り向き向かい合う。

「こちらに落ち度があったのは認めます。

ですが、ヴィズルもヴィズルです。なぜ私に一言言わないのです」

その姫様は次はヴィズルに食ってかかる。

「あなたのそういう表情が見たかった」

「はあ、またそんな軽口を」

呆れたような表情を見せた。

「冗談だ。本来のミョテイリの結界なら君が私を見つけるのはたやすいはずだ。

それができないということはつまりはそういうことなんだろう?」

エーダは唇を噛んだ。

結界の一部機能が機能していないということはうまく使えないということでもある。

ヴィズルの言葉に悔しげにエーダは頷く。

結界を取り仕切る聖堂回境師は各地域にそれぞれ一名づつ。

魔族の討伐に行きたくても、万が一のためにも彼女はこの場所を離れるわけにはいかないということだろう。

「ヴィズル、あなたの力を貸してもらえますか?」

エーダの言葉にヴィズルは首肯する。

「そのためにここに来た。その代わり私が捕縛してきたなら例のモノを頼みます」

真剣な眼差しでヴィズルはエーダを見つめる。

「わ、わかりました、いいでしょう」

エーダは少しだけ困惑気味に言葉を詰まらせる。

「例のモノ?」

「すまないが、そこは口止めされていてな。大人の事情と言ったやつだ」

ヴァロたちの問いにヴィズルはどこか砕けた笑みを見せる。

「忌々しい魔族。私の結界内で好き勝手あばれてくれた礼はきちんと返させてもらいます」

白い頬が紅潮しているその周囲には冷気が漏れ出ていた。

エーダ登場。銀髪の綺麗なお姉さん。

仕事もできますし、魔法使いとしても相当な実力者ですが、ある部分は箱入り娘で世間知らずです。

ある部分の天然っぷりがギャップの面白い女性です。

ストーリーの流れ上、登場の機会少ないのが玉にきず…。

機会があれば小説この女性で一本作りたいな。…無理かな。

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