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魔術王と氷の魔女  作者: 上総海椰
12/25

4-1 追跡開始

吐く息が白い。

凍りつくすほどの寒さではないが、北の冷え込みは南のそれとは違っていた。

露出した肌から刺すような寒さがある。

フィアの体調管理はクーナが行っているようで、ずっとフィアのそばに付き添っている。

旅支度で衣類の着込み過ぎで丸くなったのを見たときはヴァロとココルは爆笑した。

さすがのフィアの抗議の声を上げ、それは無くなったが。

リブネントからクーナはフィアを大事にするようになった。

それは過保護と言っても言い過ぎることはない。

選定会議で何があったかは聞かなかったが、クーナの考えを改める何かがあったのは確かだ。


「ひとまず北を目指す。しばらく天気が大きく崩れることはなさそうだしな」

空を見上げながらヴィズル。

「わかりますか?」

「ここでは天気の崩れは死活問題だからね。猛吹雪に遭遇すればほんの近くでも遭難して死ぬこともある」

北の天候は想像以上に大変らしい。エーダと会った翌日の朝ヴァロたちはミョテイリの北側に集まっていた。

空は晴れているが風が絶え間なく吹き続けている。

ヴィズルは数日分の食料と人数分のソリを用意してきていた。

犬のカタチをした傀儡が数体ある。

「これは君が?」

驚いた表情でヴィズル。

「ええ、そうよ」

クーナは当然のように言ってのける。

「驚いた。ここまで再現されているとは。君も相当な魔法使いなのだな」

感心したようにヴィズルは言う。

「…あなた魔法がわかるの?」

意外そうな表情をクーナは見せた。

一般の人間には魔法はわかったとしても、それがどれほどの習熟度が必要とされるかまでは判別できないためだ。

それは魔法の道に携わる人間でも分野が違えばわからない時もある。

この魔法は見かけこそ簡単であれ、ある一定の水準以上の者でしか使うことはできないものだ。

それを一瞬でこの男は見抜いた。

「魔法を使える者が知人にいるからな」

「ここの北の地ならありうるでしょうね」

クーナは食堂の男を思い出し、クーナは一人納得した。

教会の目が届きずらいことから魔道具とかも所有している様子だった。

「知人にね。本当に変な男ね。あのとんがり帽子の男と同じぐらいに」

クーナは一人の男を思い出し、つぶやく。

「とんがり帽子?君たちの仲間か?」

「ドーラと言う男よ。正体不明で妙な魔法を使ってる。興味あるの?」

「男で魔法を使えるのは驚きだな。そんな者がいるのか」

珍しげにヴィズルはつぶやく。

「そうなの?まあ、いろいろと事情があるんでしょ」

事情を知ってるヴァロは耳に入ってくる言葉を聞かなかったことにしている。

元第四魔王であることは公然の秘密である。

「この仕事が終わったら是非紹介してもらえないか?少し興味がわいた」

「え、ええ」

フィアの表情に影が差す。ヴァロはそれを見逃さなかった。

「フィア、どうしたか?」

「なんでもない」

「北の地に来てから様子が変だぞ?体調が悪いのなら…」

「大丈夫」

フィアはそう言ってヴァロの先を進む。

思い返せばドーラといいフィアといい、今回の旅は妙なことが多い。

ヴァロにはこのときそれが何を示しているのかわからなかった。

「ヴァロ君たちには悪いが、ここからは私が指揮をとらせてもらおうと思うがよいかな?」

「任せます」

北の地の勝手などヴァロたちにはわからない。

ヴィズルにまかせれば悪いようにはなるまい。

ヴァロたちはひとまず任せてしまった方がよいだろうという結論に至った。

「それにしてもどうやって追うつもりなんですか?」

目の前には銀世界が広がっている。

吹きやまぬ冷たく凍えるような風が絶えず途切れることがない。

果てしない平原が地平線の彼方まで続いている。

こんなただっ広い北の地で五人の魔族を見つけろという。本当に無茶苦茶な話だと思った。

フィアの探査魔法は見たこともない魔族には使えない。

さらにその魔族の捕縛まですることになっている。

「北に向かう五人の人影を行商の者が目撃している。今エルンにその集団を追ってもらっている。私たちは北に向かおう」

エルンと言うのは昨日ヴィズルと一緒にいたカラスのことだ。

目につかなかったのは捜査に出しているらしい。

「…それとこれは関係あるかどうかはわからないが、昨日の夜、見たこともない鳥が北西の方向に飛んでいくのを見たという目撃情報があったらしい」

ヴァロとフィア、ココルは顔を見合わせる。

「それって…」

三人はそれには心当たりがあった。

ドーラである。

何のためであるのかは知らないが、ドーラはミョテイリから北西の方角へ向かったのだ。

「何か心当たりでもあるのか?」

不思議そうにヴィズルは三人に聞いてくる。

「いえ」

ヴィズルの問いに三人は首を横に振る。

「ヴィズルさん、北西…には何がありますか?」

フィアの問いにヴィズルは首をかしげる。

「北西の方角は海だ。今の時期流氷がゾプダーフから流れてきてるな」

ドーラのことだ、ただ流氷を眺めに行っているわけではあるまい。

どういう事情かは知らないが、ドーラには北西に行かなくてはならない事情があるらしい。

横でそれを聞いていたフィアはどこかほっとした表情をする。

「それじゃ、北に向かおうか」

ヴィズルの声に一同は頷く。

そして魔族の追跡が始まった。

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