序
父たちがこちらへ来るのが見えた。
連れ帰られたミリィが、このあとどのような仕打ちを受けるのか想像もつかないが、恐らくは逃げ続けていた婚約話を強引に進められでもするのだろう。
ミリィはレオを腕を強くて掴んだ。
彼の顔を見上げると、青い瞳の中に赤い炎が見えるようだった。
──あぁ、彼も。
ミリィと同じ思いなのだと実感して、心の底から“狂喜”した。
「レオ、レオ、わたしたち、まだ捕まる訳にはいかないわ。だってそうでしょう?わたしたちはまだなにも解明していない。まだ柵みがとけていない。」
「……あぁ。」
「……まだ捕まる訳にはいかないの。」
レオがぐいっとミリィの肩を抱き寄せた。周りの声がいっそう騒がしくなる。それでも、ミリィとレオは気にしなかった。
「逃げよう、ミリィ。」
言うや否や、レオはミリィの手を取って走りだした。
行く当てはない。
とにかく成し遂げなければならないのだ。
何百年と続く、“王の嘆き”を癒やすために。
“王妃の涙”を見つけるために。
そのために、ミリィは生まれた。
そのために、レオは生まれた。
何百年の時を経て、二人は再び巡り会ったのだ。
国のために愛する妃を犠牲にした王、レオナルド一世。
国のために愛する夫に殺された女王、アディル。
彼らの柵みに絡まるレオとミリィは、彼らを救わなければならないのだ。そうしなければ、レオとミリィの幸せもない。
たとえ、お互いの意思がすれ違っていたとしても。
───レオ、たとえ貴方がわたしを見てくれなくても。