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鹿翅島‐しかばねじま‐  作者: 犬河内ねむ(旧:寝る犬)
七宿 業(ななやど ごう)の場合

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七宿 業(ななやど ごう)の場合(2/3)

◇ヒューマンドラマ

◇ホラー

 女の名前は六車むぐるま なおと言った。

 保育士だが、介護の資格も持っているというなおのおかげで、八十塚さんの世話はかなり楽になった。


「彼氏のことは悪かったな」


 二日目。十二匹目のゾンビを撃った後、俺はそう切り出した。

 あの男は右脛に噛み傷があった。

 周囲はすでに紫色に変色していて、ゾンビ化も時間の問題だった。

 そう言い訳をしていると、なおは「仕方ないですよ」と苦笑いをした。


「それに、彼氏じゃないですよ。先週から臨時で来てる保育士さんですから、実はあまりショックはないんです。昨日は何十人も人が死ぬところを見ちゃいましたし」


 テーブルの上にビールを置き、なおは八十塚さんのところへ戻る。

 あまりにもあっけらかんとした彼女の言動に、俺はジェネレーションギャップを感じながら十三匹目のメモを書きつけた。


 ◇ ◇


 四日目。

 夕方まで粘っても、その日撃ち殺したゾンビは二匹だけだった。


「朝から夕方まで視界に入るゾンビを撃ち殺して、一日目が五十五匹、二日目が二十六匹、三日目が七匹、そして今日が二匹だ。人間はなおたち以降見てない」


 なおがありあわせの材料で作った夕食を食べながら、俺はメモを読み上げる。

 八十塚さんもなおも、箸をおき、真剣に俺を見つめた。


「山に近いこの辺りはだいぶゾンビの数も減ったんだろうと思う。俺は自宅へ車を取りに行く」


 とるものもとりあえず駆け付けてみれば、八十塚さんは息子だったゾンビに殺されかけていた。

 初日に救助のヘリが街の中心部に飛んできているのが見えたが、足の悪い八十塚さんを連れて、ヘリまでたどり着けるとも思えない。

 車を取りに戻るにも、俺が死んでしまったら八十塚さんが一人で生き延びることが難しいのもよくわかっていた。

 できる限り周囲のゾンビを減らし、無事に車を取りに戻れる可能性を増やす。

 そこに、八十塚さんの介護ができるなおが加わったのは望外の幸運だった。


「車で……どうするんですか?」


 不安げに、なおが質問する。

 俺も特に確かな計画があるわけではなかったが、不安にさせないよう、自信ありげに計画を語った。


「警察か消防か、救助が来ている可能性がある。まずはそこを目指し、だめなら港から本島へ向かう。そうでなくとも、もう水がねぇからな。コンビニやなんかで食い物と飲み物は確保せにゃならんさ」


 とにもかくにも、ここはもうどん詰まりだ。

 前科持ちの俺はともかく、八十塚さんやなおみたいに真っ当に生きてきた人間は、ゾンビの島じゃなく人間の住む街に住むべきだと、俺は話を締めくくった。

 その日の夜、なおに銃の扱い方を一通り教え、八十塚さんのことをくれぐれも頼んで眠った。


 ◇ ◇


 早朝、八十塚銃砲店から自宅までの道のりは、ほとんどゾンビに遭遇することなく進んだ。

 昼前には自宅に到着し、銃を担いで車に滑り込んでキーを回す。

 ディーゼルのけたたましい音に引き寄せられ、どこにこんなに隠れていたのかという数のゾンビがわらわらと群がった。

 アクセルを踏み込み、ゾンビをなぎ倒す。

 なんとかゾンビの少ない道へとハンドルを切り、少し遠回りにはなったものの、八十塚銃砲店への道を走り始めた。

 山沿いの木々の生い茂る狭い道をしばらく走る。

 突然進行方向に現れたのは、イノシシのゾンビだった。

 避ける間もなく激突する。

 エアバッグが目の前に広がり、シートベルトをしていなかった俺は、そのまま意識を失った。

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