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A woman's mind and winter change

作者: 白山菊理

『A woman's mind and winter change.(女心と冬の風は良く変わる)』とはよく言ったものだ。

実際に私もそう思う。

しかし私は彼女の心がどんなに変わろうとも彼女を愛していた。

そう狂おしいほどに愛していたのだ。

私の恋人クリスティーナ。

美しい女だった。私は彼女の為だったら何でもしてやった。

指輪や首飾りを買い与え、ブランド物の服や毛皮も買ってやった。

彼女が欲しいと望むものは全て与えてやった。

私からそれらを受け取った彼女は嬉しそうに微笑み、私に礼を言うのだ。

その微笑みも感謝の言葉も私を幸せにした。



そんな愛しのクリスティーナが私と別れたいと言い出した。

私のことをつまらない男だと言い、私が今までにあげたものをトランクに詰め込み始めた。

私は彼女を必死に止めた。

君に相応しい男になるからと言い、彼女を説得したが彼女は冷笑して、貴方はただのカモだったのと私に言い放った。

彼女は私を愛してなどいなかったのだ。

私は彼女をこんなにも愛しているというのに。

一瞬にして幸せが悲しみ、苦しみに変わった。

そして、それは強い憎しみへ……

私は頭に血が上り、近くにあった果物ナイフで彼女の片目を刺してしまった。

彼女は悲鳴を上げ、許して欲しい、私が悪かったと泣き付いてきた。

涙と血で染まる彼女が美しく、また彼女を愛していたので私は彼女を許し、自信の過ちに対し彼女に謝った。

事を大きくするのは好ましくないと判断し、私は知り合いの医者を呼び彼女の手当てをさせた。

医者の話によると彼女の片目は完全に失明してしまったらしい。

一体何があったのかと医者にしつこく尋ねられたが、上手い具合に誤魔化した。


クリスティーナは片目を失い、距離感覚を掴めなくなってしまった為に何かにつけて私を頼るようになった。

私は内心嬉しく思っていた。

一度は私を愛していないと言った彼女が私の支えを必要とし、頼りにしてくれるのだから!!

今度こそ本当に私達は互いに愛し合えるようになったのだと私は思っていた。



そうして1ヶ月が過ぎたある日、私が仕事から帰ってくると彼女は荷物をまとめ家を出て行く準備をしていた。

何をしているのかと問い詰めると、新しい男が出来たから出て行くのだと彼女は言った。

ここのところ彼女が上機嫌だったのはこのためだったのか。

どうして私がこんなに尽くしても私のことを思ってくれないんだクリスティーナ!!


私は出て行こうとする彼女を押し倒し、逃げられぬように足で背中を押さえつけ、薪割り用の斧で彼女のの片足を切断した。

鮮血が壁に散り、床が血の海となる。

彼女の顔はどんどん血の気を失ってゆく。

彼女は叫びにも等しい声で私に向かい、こう言い放った。

貴方は結局、自分の事しか考えていないんじゃない!と。


私が自分の事しか考えていない?

私は今まで君の為につくしてきたというのにか!!

さらに喚き続ける彼女を煩く感じ、彼女の喉に斧を振り下ろした。

そして彼女は、息絶えた。



それでも私は彼女を愛していたのだ。

彼女がどんなに私を裏切ろうとも、私は彼女を狂おしいほど愛していた。

彼女を殺してしまった事で、彼女の声も微笑みも二度と見れなくなってしまった。

もし、ここで彼女の死体を処分してしまったら、本当に彼女を失う事になる。

それだけは避けたかった。

しかし、このままにしておけば死体は腐敗してしまう。

そこで私はあることを思いついた。



翌日、私は消毒液を大量に買い込み、知り合いの医者に頼んで手術用の針と糸を借りてきた。

知り合いには訝しげな顔をされたが、小説を書くために実物を研究したいんだと言うと快く貸してくれた。

私は借りてきた道具で切断した足を見様見真似で繋ぎ合わせ、傷を修復し、浴槽に張った冷やした消毒液の中に彼女を漬けた。

長時間置くと彼女は屍蝋化し、人形のようになった。

腐敗しない完璧な死体。

私は大いに満足していた。

愛しいクリスティーナとずっと一緒にいられるのだから……




         *




「…と、いう小説を思いついたのだがどう思うかね?」


と、彼は僕に思いついた小説を大まかに話してくれた。

彼と僕とは作家仲間で、先輩と後輩の関係だ。


「良いと思いますよ。でももう少し死体をいじる描写にリアリティを持たせたほうが良いんじゃありませんかね?って、後輩の僕が先輩にアドバイスするのも気が引けますけど…。」


「気にせんでくれ。そこはお互い様だ。読者にはより良い作品を読んでもらいたい。そうだろ?しかし描写ね。さて、どうしたものか……」


「そんな難しい顔しないで下さいよ。先輩にはお医者様の知り合いもいらっしゃるんでしょ?その方に聞けば良いアイデアをくれるかも知れませんよ?」


「それもそうだな。よし、有難う。参考になったよ。さて、そろそろ時間何で失礼するよ。」


そう言うと彼は上機嫌で席を立った。

そんな彼の姿を見ながらふと僕は思った。




―彼の恋人の名は確かクリスティーナではなかったか、と……―

いかがでしたか?

どうも私が恋愛小説を書くとこんな展開になってしまいます(笑)

因みに「A woman's mind and winter change」とは、日本語で「女心と秋の空」という意味です。


この作品を読んでくださって有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の意外な落ちに、うおっ!と驚かされました^^!ああ怖かった……^^; とても面白い作品でした。これからも頑張って下さい^^
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