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孤独鬼

作者: 黄緑智史

 (くそ、くそ、くそっ!)

 茨城県のとある寒村にある廃墟に、一人の青年が息も絶え絶え壁にもたれかかってきた。

 「俺は何もしてないのに、なんでいつもいつも!」

 誰もいないため虚しいほどに青年の声がこのコンクリートの建物に響き渡る。

 この青年の名は柳井(ヤナイ) 新太(アラタ)

 なぜこんなに柳井が一人怒りを露わにしてるか。

 それは今から十年前。昼間にもかかわらず人が1人としていない閑静な住宅街に衝撃を走らせたとても残忍で残酷な事件「一家三人殺害事件」が起きた。  この事件の犯人の息子が柳井なのである。

 柳井は殺人犯の息子という理由でいじめられ、親戚にも見放され、ましては託児所でも暴力をうけた。

 そして、今現在。安心して過ごせていたこの寒村にも年月を経てどこからか彼が殺人犯の息子だという情報が漏れ、再び理不尽な脅威が迫っているのである。

 「おい、後ろだ!」

 「は、は?」

 「いいから走れ!」

 「何だってん――っ!」

 姿がみえずどこからか聞こえてきた男の強引な声に従う柳井の顔すれすれを刃物のような尖った物がかすめた。

 その時である。彼の胸の奥底で何かがひしひしと湧き上がってきたのは。

 そして同時に意識も遠退いていった。



 「・・・・・・はぁはぁ・・・・・・う」

 柳井が目覚め、瞳に移した光景はドラマのワンシーン――しかもサスペンスドラマの一部のような残酷なものだった。

 目の前に転がっている村人の死体から流れる赤黒い血の生臭い臭いに嗚咽感を味わう柳井。 口元をおさまえなんとか耐える彼の後ろに、優しそうではあるがどこか凛々しい青年がいきを止めてるがごとく静かに忍び寄る。

 「一体誰が・・・こんな」

 「お前だよ」

 (・・・・・・っ! ・・・・・・)

 突如上からの声に慌てて青年から距離をとり、武器を無意識に探す柳井。

 そんな姿をみて、青年――葛原(クスハラ) (ヤス)が口角を怪しく上げ

 「やっぱりてめぇ、親譲りだな〜その素早い武器の持ち方。いや〜殺したくなるくらい似てやがるよ!!」

 ホントに人間かと思うほどの鬼の形相を柳井にみせながら、ズボンの後ろポケットから拳銃を取り出して構える。

 「ま、まま、待て、俺はやってない!」

 「は? やったろうが」

 装填して顎を死体にむけ、柳井の注意を死体に逸らすと、一発太ももを撃ち抜いた。

 「ぎぅ! あぁあーーー!」

 「あははははははははははっ! どうだ、俺の家族が味わった痛みは?」

 「家族、だっ?」

 「ああ、そうだよ。お前の親が殺した家族だ」

 (そ、そんな偶然あるのか?) 「いや〜、まさかこんなクソ田舎に身を隠すなんてビックリだぜ。でも、助かったわ。おかげで復讐が出来るんだからな!」

 葛原のくすみきった目を見て、どこか似た感じがするなと思っていた柳井だったが、銃口を近付いてくる葛原から遠ざかるため後ろに後退したとき、足元にへんな感触。

 (こ、これってまさか!?)

 「おーーらーーあぁ!」

 ボフッ。

 柳井が踏んだ物実は体育用チョークの粉の袋だったのだ。

 あたり一面に細かい粉が待っており、息がしづらい程である。

 (よし、窓の近くに移動しよう)

 「くそ、どこだ!」

 「ふふ。ふあーはははっ! 君には死んでもらおう」

 カンカン。カンカン。

 そう。チョークの粉は密度が細かく部屋に充満している状態で電気をつけると、平屋くらいなら軽く全壊させる力を持っているのである。

 カチッ。

 火花が柳井の持っている石からとび、細かい粒子に引火。

 柳井はその反動で吹き飛ばされ、三階の高さから芝生に落っこちた。

 「・・・・・・そうか。分かった分かった。俺に独りで生きて一人で死ねっていうんだろ?神様よぉー?」

 びちゃびちゃといつの間にか降り出していた雨に空を仰いだ顔を濡らしながら、出したことのない声でわめき散らしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の心の声と状況のギャップw [気になる点] もっと欲しい1p [一言] 読みやすい気がしたよ(俺はね)
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