祈りの花
狭い物置小屋に閉じ込められて、どれくらい経ったんだろう。
風通しの隙間からかろうじて洩れていた光も消えて、あたしは暗闇のなかにいた。
呼吸する音だけが響く。
路地を行く足音や、バイクのエンジン音もしたけど、それもたまにしか聞こえてはこない。
よくある話。
新しいパパはあたしが嫌い。
ふた月まえに弟が産まれてから、優しかったパパの目が冷たいものになった。
ママも気づいているはずなのに、庇ってくれることはない。
些細なことで、あたしはここに閉じ込められる。
例えばお茶碗の置き方が悪いとか、足音がうるさいとか、そんなことだ。
ひと言でも反論しようものなら、ひどく叩かれてしまう。
よくある話。
あたしは黙って扉が開くのを待つしかない。
最近はここで夜を明かすことが多くなってきた。
中から鍵を開けられたらいいのに。
ため息がでた。
まだ座ることができるだけましかな。
このまえは立ちっぱなしで、足がひどく痺れて大変だった。
スペースを確保するために少し片付けておいて良かった。
懐中電灯も隠してあるけど、怖くて点けることができない。
見つかったらどんな罰を受けるかわからないし、下手をすれば、ひどく殴られるかもしれないから。