遭遇
「それでタマちゃん、第7セクションとやらにはどっちへ行けばいいんだ?」
「ピー」
「なんだ付いて来いというのか?」
仕方が無い、ここはタマちゃんを信用してみるか。
だが全く変わったところだ、人の姿はまるでないのに変なものばかりが目に付く。
だいたいこのタマちゃんも、どういう仕組みになっているんだ?
フワリフワリと飛んでいるが中身はどうなっているのやら・・・。
「ピピピ!」
「ん?どうしたタマちゃん?」
おお!壁が崩落してこれでは進めないな・・・
「これではだめだな・・・、回り道をしよう」
「ピピー!」
「ん?」
ドーン!!!
「んな!?」
タ、タマちゃんからビームが出た!?
見れば通路をふさいでいた瓦礫が一瞬で消滅している。
「・・・・・・・」
(さっきはマタ三郎なんて言ってゴメンナサイ・・・。危うく殺されるところだったさ・・・)
「ピ、ピー・・・」
「ど、どうしたタマちゃん!?」
タマちゃんが力なく地面に落下していくではないか。
タマちゃんを手に取ると、羽も力なく萎れて見える。
そうかさっきのビームで・・・。
「オーケー、タマちゃん安らかに眠れ。君の事は忘れない・・・。グッバイマイフレンド!!」
「ピピピー!!」
「ナニ、違う?腹が減った?」
「ピー・・・」
ん、なんだ?
タマちゃんの腹なのか背中なのか分からんが、なんか開いたぞ!?
「ピピー・・・」
「なになに・・・、エナジークリスタをくれ?なんじゃそりゃ?」
「ピピー!!」
うわ!?なにをするタマちゃん!
タマちゃんが私の服の中に・・・、あ!そこは・・・!
「って、何をするんだタマちゃん!?」
「ピッピピー!!」
おお!私の服のなかから飛び出したタマちゃんが元気になっている!?
というか、今度は私の方がちょっと気だるい・・・。
一体何をしたんだ?
それとさっきから気になっていたんだが、なんでタマちゃんの言ってることが理解できるんだ?
“ピ”しか言っていないというのに、さっき出会ったばかりでもう“あうん”の呼吸なのか?おかしいだろう!?
「ピピッ」
「ん?どうしたタマちゃん」
なにやら反応しているタマちゃんに目をやると、通路のさきを物陰が横切るのが見えた。
なんだあれはヒトか?
「よし!付いていってみよう」
「ピッ」
確かこの通路をこっちのほうへ・・・
どこだ?どこへいった?
見つけた!
こ、これは・・・
目の前を歩いているのはメタリックな人型マシンだった。
ただ人型とはいえ骨格や関節はむきだしで、外見的には雑なものだったが。
人型をしたマシンは後をつける私など気にする様子もなく通路を進み、やがて一つの部屋の中へと消えていった。
「なんだ、この部屋は?」
部屋の入り口に近づくと扉の上にエナジーサプライの文字がみえる。
「中に入ってみよう」
「ピッ」
タマちゃんの反応は警告を発する感じでもないので恐らくは大丈夫だろう・・・。
扉を抜け部屋の中へと踏み出すと、室中は思ったより広かった。
部屋の中央にあるのは巨大な炉か・・・?
その周りを取り囲むように、なにやら計器らしきものが見えるな。
あ!
計器のようなものを眺めていると、さっきのマシンが目に入る。
さらによく見てみると、1体・・・、2体・・3体・・・、4体と、ここから見えるだけでも、4体はさっきと同じ形をしたマシンが動き回っている。
・・・メンテナンスをしているのか?
ここから観察する限りでは破壊的な行動は見受けられない。
ということは・・・
この施設はあのマシン達によって管理されているのか?
研究者の学者達はどこに?
なんだっ、頭の奥底がじわりじわりと痛む・・・
私は何かを知っている・・・
だが思い出せない・・・
だめだ・・・
ここに居てもこれ以上何も得られんだろう。
「出よう、タマちゃん」
「ピピー」
やれやれ私としたことが、ちょっとシリアスモードに入ってしまった。
気分はすぐれんが、まあ気にするほどではあるまい。
タマちゃんが私を気遣うようにフワフワと浮かんでいる。
「大丈夫だ、タマちゃん心配するな」
「ピピー」
「なに!?まるで心配していない?・・・少しは心配してくれてもいいぞ」
「ピ!?」
・・・まあいい先を急ぐとしよう。