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私と彼らの7日間。  作者: ありま氷炎
大団円番外編ーChristmas Days
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Christmas Day – December 25

 イブの夜、土壇場で飛行機を明日に変更した。アイリーンからメッセージを読んだこともあったが、パトリックが名残惜しそうにしていたこともあり、ミヒロはこっちでクリスマスを過ごそうと決めた。

 念のためにと、館林から部屋の鍵を渡されていた2人は、空港から戻ると彼の部屋に転がり込んだ。


 窓から差し込む光でパトリックは起こされた。そして隣に眠る恋人に優しくキスをする。


「Good morning (おはよう)」

「!!」


 目を覚ましたミヒロは何も着けていない自分に気づき、真っ赤になる。


「I’ll make a coffee for you (君のためにコーヒー淹れてくる)」


 パトリックはミヒロの頭を撫でるとシャツを羽織って台所に消えた。


(なんかすんごい恥ずかしい)


 ミヒロは床に落ちている服をかき集め、着替えるとベッドから降りた。

館林の部屋はベランダ、寝室一室、居間、台所、トイレとシャワー室が一緒になっているバスルームで構成されていた。木製の作りではなかったが、木のような柄のタイルが使われていて、暖かな印象を持たせる部屋だった。家具も木製のものが多く、館林の趣味を窺わせた。


「Here is your coffee (ほらコーヒー)」 


 部屋をうろうろしていたミヒロにパトリックがそう声がかけ、テーブルにマグカップを置く。


「Is it your first time to come here? (ここに来たの初めてだっけ?)」

「うん」


 珍しそうな恋人の様子にパトリックは微笑む。


「キレイダヨネ」

「うん」


 ミヒロはパトリックに見つめられ、どきどきしながら椅子に腰かける。そしてマグカップを持ちコーヒーを飲んだ。


「おいしい!」

「So?」


 パトリックもつられてコーヒーを飲む。


「確かにオイシイ」

「ね?」


 2人はマグカップを持って微笑み合う。




「どうしたんですか?伍さん」


 待ち合わせ場所に現れたアキオの頬が真っ赤に腫れてて、ミヒロは思わずそう聞いた。


「………」

「アイリーン?」


 答えないアキオに再度そう聞くと頬を腫らした男は頷いた。


 朝、起きると隣にアイリーンが寝ていて驚いた。そして誘われるまま、その薔薇の花びらのような唇にキスをしようとしたところで思いっきり頬をはたかれた。

 昨夜のことはほとんど覚えていなかった。

 何かあったのかと聞こうと思うと殺気の篭った視線を向けられ、結局アキオは昨晩のことを聞き出せていない。


(服着てたからな。やってはいないと思うんだけど)


 今日は日曜日なのだが、アイリーンはクリスマスイベントのバイトがあり、昼過ぎに家からアキオを追い出した。行くところがない男はミヒロ達に合流することに決め連絡をとった。心配していたミヒロは喜んで会うことを決め、クリスマスのデートの邪魔をされたパトリックは幾分ご機嫌斜めだった。


「あの病院です」


 街を散策する前に、館林の様子を見ようと3人は病院を目指して歩いていた。クリスマス当日で日曜日の今日は、サンタクロースやトナカイの扮装をした男女が華やかに飾られた街を練り歩き人々を喜ばせていた。家族ずれや恋人達の姿も多く見え、人が街にあふれていた。

 苦労して道を歩き、3人は街中の病院に辿り着く。


「館林さん!」


 館林は病室に現れた3人をみて顔をほころばせる。


「伍さん、無事でなによりです」

「あなたこそ、ぎっくり腰が治ったみたいで」


 2人の男は不敵に笑いながらそう言葉を交わす。


(なんか似てるような気がするんだよね。この2人)


 ミヒロは2人の様子を見ながらそう思う。


「長三山さん、結局いつ帰ることにしたの?」

「今日です」

「今日?!」

「やっぱり本社に迷惑かけれないですし」

「そう?伍さんは?」

「明日です。1日なんとか休みと取りました」


 アキオの航空券は結局本人確認が取れずキャンセル扱いになった。どうせ航空券を買い直すのであればアイリーンがいるこの国で年越しまでいたかったのだが、会社員の身でそれはできず、仕事納めの準備などもあり、明日帰ることにきめた。


「伍さん、アイリーンとはうまくいったのか?」

「……さあ、どうでしょう」


 アキオははぐらかすように柔らかな笑みを浮かべる。

 館林はこの男がアイリーンと一緒にいるという話を聞き、興味津々だった。しかし、男が話すはずがなく、支社長は少し悔しそうに笑うとパトリックに顔を向けた。


「これからどうするんだ?パトリック?」

「街をサンポシマス」

「そうか。楽しめよな」


 3人は館林とユウコに別れを告げると病院を出る。そして時計を見たアキオは2人に話を切り出した。


「私はアイリーンのところにいく。今日はリーブスホテルで歌ってるはずだ」

「好。再见(わかった。さよなら)」


 パトリックは邪魔ものがいなくなるとばかり、嬉しそうに微笑むと手を振る。


「真是。(まったく)パトリック、 圣诞快乐。(メリークリスマス!)ミヒロちゃん、またね~」


 アキオは苦笑すると2人に背を向けて歩き出した。


「ミヒロ、行こう」 


 やっと二人っきりで楽しめるとパトリックはミヒロの手を握ると、足を踏み出す。


「パトリック!」


 ふいに手を掴まれ歩きだされて、ミヒロはバランスを崩しそうになる。パトリックはすかさず体を支えた。


「Sorry (ごめん)」

「It’s Okay (大丈夫)」


 ミヒロは、申し訳なさそうなパトリックの腕に自分の腕を絡ませると微笑む。


「行こう!」

「ウン」


 そうして恋人達はクリスマスの街へと溶け込んでいく。

 クリスマスソングが鳴り響き、人々の笑い声が絶えまなく聞こえる。街は喜びと幸せで満ち溢れているようだった。

 ミヒロは恋人の暖かさを感じながら、同じように幸せな時間を楽しんでいた。



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