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私と彼らの7日間。  作者: ありま氷炎
大団円番外編ーChristmas Days
39/50

4 days ago - December 21 (1 of 2)

「いってらっしゃい。早く帰ってきてね」


(母さん、それは私のセリフ!)


 そう思いながらもミヒロは母の隣でパトリックの手を振る。ハンサムな彼氏はにこっと王子様スマイルを浮かべると玄関を出て行った。

 


 ――昨晩


「ミヒロ。Do you love me? (ボクのこと愛してる?)」


 ベッドにもぐりこんできたパトリックはじっとミヒロを見つめるとそう聞いてきた。


「うん」


 ミヒロは少し顔を赤くしながらうなずく。


「I'll come back soon. Please call me everyday(すぐに戻ってくるから。毎日電話して)」


(パトリック?どうしたんだろう?)


 彼が出張に出かけることはめずらしいことではなかった。こんな風に言われたのは初めてでミヒロは戸惑う。


「Do you understand?(わかった?)」 

「うん」


 ミヒロは疑問に思いながらも再びうなずく。


「ミヒロ。I love you (愛してる)」


 パトリックはミヒロの頬を両手で包むとキスをした。そのキスはいつもと違い少し強引でミヒロは驚いて身をよじる。しかし、パトリックはそれでひるむことなく、再び唇を寄せた。


「パトリック!」


 ミヒロは悲鳴のような声をあげ、その胸を押した。強引なキスは嫌だった。


「……sorry (ごめん)」


 パトリックはショックを受けたような表情を見せた後、体を起こす。


「Can I sleep with you?(一緒に寝ていい?)」


 髪をかきあげ、そうたずねるパトリックはなぜか物悲しそうにミヒロを見つめる。


「いいけど。何もしないで。今日はなんだか嫌だから」

「Okay」


そう静かに答え、彼は再び横になるとミヒロを背後からそっと抱きしめた。


(どうしたの?)


 ミヒロには彼の表情を見えなかった。


「Good night (おやすみ)」


 ただそう囁かれて反射的におやすみと返す。そして気がつくと眠りに落ちていた。



(やっぱり様子、おかしかった。今朝出て行くときもなんか笑顔がおかしかった気がする)


 ミヒロは昨日のことを思い出しながら、パソコンの画面を見ていた。マウスを動かすが思考はパトリックのことでいっぱいだった。


「長三山さん!」


 ぽんと不意に肩に手を置かれ、ミヒロがぎょっと振り向く。


「ひっかっかった」


 ぷにっと指が頬をつき、ミヒロは幼稚な悪戯に引っかかったことに気づく。


「木田さん!何してるんですか!」


(今時こんなことする人がいるなんて)


「いらずら。昔よくしたよね~。なんか長三山さんって引っかかりそうだったのでやってみた」

「なんですか、それ」


 ミヒロが憮然とした態度でそういう。


「長三山さん、ぼーとしてるからちょっと刺激が必要かなと思って。彼氏と離れてるからって仕事の手を抜いたらだめだよ」

「わかってます」


 そんなにぼーとしてたのかと反省しながらも、木田のいたずらで気を悪くしたミヒロは堅い表情のままだった。


「ほら、これ確認よろしくね」


 木田はミヒロのすこし怒った顔にひるむことなく、青色のファイルを渡すと隣の席に座る。


「!?」


 ファイルと開くとそこには紙が挟まっていた。


『夕食一緒にどう?』

 ミヒロは驚いて隣を見るが木田は飄々と仕事してる。


(なんかよくわからない人だな)


 ミヒロはファイルをパタンと閉めると、パソコンに向き直る。そして社内メールで『お誘いありがとうございます。でも無理です』と返事を返した。





 『我不在的时候,请看着她(ボクがいない間、彼女を見ていて)』


 昨日訪ねてきたパトリックは神妙な面持ちで伍アキオにそう言った。どうやら社内にお邪魔虫がいるとようだった。その虫がミヒロに手を出さないように自分が帰ってくるまで見張っておいてくれと頼まれた。


(見張っていてくれって難しいことを頼むよな。まあ。ミヒロちゃんなら浮気なんてしないと思うけどな)


 アキオはそう思いながらパラパラと資料をめくる。今日の午後から訪問する予定の会社の決算書だった。


(まあ、私も暇だし。夕食にでも誘ってそれとなくお邪魔虫のことでも聞き出すか。パトリックが心配する位な奴だ。見て見たいし)


 アキオは休憩所に行くと携帯電話御取り出し、ミヒロにかけた。





「鈴木、紹介しよう。パトリック・コーだ。会ったことあったよな」

「はい。お久しぶりです。覚えてますか?鈴木ユウコです」


 ユウコは事務所に現れた優しげな王子様に少し見とれながらそう挨拶をする。


(やっぱり、この人ハンサムだなあ)


「覚えてマスヨ。鈴木サン」


 王子はにこっと微笑むとそう答える。


(笑うとかわいい感じになるんだ)


「鈴木。事務所の奥にある衣装を取ってきて」


 ぽーとしてるユウコに館林が声をかける。声質が少しとがったものでパトリックが不思議そうな顔をする。ユウコも同様だったが、衣装を取るために事務所の倉庫に向かう。


「パトリック。鈴木を誘惑するのはやめろよな」

「ユーワク?Impossible! 僕が好きなのはミヒロデスカラ」

「わかってるよ。でも、その王子様スマイルは事務所では出すなよな」

「??OKデス」


 二人がそんな会話をしていると段ボール箱を抱えたユウコが姿を見せる。


「鈴木、ありがとう」


 館林は少し慌ててユウコから段ボール箱を受け取ると机の上に置く。


「Ah, memories! (うわあ。懐かしい)」


 パトリックは懐かしそうに段ボール箱を開けると、中から白い衣装を取り出す。


(本当に王子様の服だ。すごい、でも似合いそう)


 ユウコは白い衣装を体に合わせ、あーでもないこーでもないとポーズを決めるパトリックを見ながらそんなことを思う。その横で館林はじっとパトリックを見つめるユウコを横目にそっと溜息をついていた。



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