第11話 A級ダンジョン“影ノ回廊”へ
ダンジョンの中へと入るとまず視界に入って来たのは古びた黒色の木床、顔を上げると周囲はおびただしい数の札が貼られた土壁で囲まれ、上を見上げると赤い柱が至る所に伸びて壁を繋げ、天井が闇へと紛れてしまっている。
回廊の至る隅に蝋燭に灯った火だけがこの薄暗い回廊を照らしている。
俺たちはまるで古い神社の回廊に迷い込んでしまったかのように感じた。
「な、なんだこれ……い、今まで見てきたダンジョンとは少し違うような……かなり和風な気がする」
鈴木が剣と盾を持って身構える。
「なんだか……凄く不気味ですね。二多恵ちゃんも気をつけてね」
「……探索する」
二多恵は眼を光らせると自身のスキル【暗視】で暗い道を瞬時に把握、そして【気配感知】を用いて周囲を警戒し始めた。
「よし、進め」
葛嶋が偉そうに指示するとパーティたちはゆっくりと進み始めた。先頭に鈴木、中衛及びガイドに二多恵、後方に妃兎絵と葛嶋、そして美香。最後尾にぴよこと俺だ。
瞬時に陣形を組み、一気に集中モードに入った鈴木パーティ。流石にここまで生き残り、A級まで上り詰めてきたくらいに行動はできるようだ。
因みに俺は荷物持ちをして欲しいと鈴木から言われているので、俺のここでの仕事はカメラマン兼荷物持ちとなっている。
鈴木達が緊張しながら進んでいくなか、俺はよそ見するくらいには余裕だった。
「わぁ〜〜凄い! まるで日本のホラー映画の舞台みたいで怖いですぅ〜〜ぴよこホラー耐性無いから叫んじゃうかも〜〜☆」
“叫んで”
“ダンジョンってこんなに不気味だったか?”
“雰囲気好き”
“ぴよこたんがちびっちゃったらおじさんがおしめ変えてあげるネ”
あくまでも動画のメインはダンジョンの景色と“アスモディ”達の活躍だろう。
俺は更に一歩引いてぴよこの配信に映らないようにしながら歩いていた。
ゴゴゴッ……
突然、俺の背後で何かが動く音が聞こえた気がした。
最後尾の俺でギリギリ聞こえるかどうかの音だったのでもしかしたら空耳だったかもしれない。
(気のせいだろう……)
俺は気にもせず前へとついていくことにした。
☆☆☆☆☆
数十分歩き続けた頃、二多恵が口を開く。
「止まって」
「どうしたんだ二多恵?」
「この先から微かに気配を感じる」
「そうか……なら気を引き締めなければな」
パーティは警戒を強めて更に奥へと進んでいくと大きな赤い扉につき当たった。
「この先から……感じる」
「よし、じゃあ気をつけて開けるぞ」
鈴木は武器を扉に入れ込みながらゆっくりと部屋の中へと入っていく。それに合わせて俺たちも部屋の中へと入った。
しかし、部屋に魔物姿はなく部屋のほとんどが巨大な穴になっていた。
「なんだこれ!? 穴か?」
部屋にできた大きな穴を覗くと底が見えぬ闇が広がっている。
「ねぇ、これ何か書いてあるんだけど……」
穴の近くの床に石が埋め込まれており、ここに文字が刻まれていた。
『生贄を穴へ、さすれば道は開かれん』
「生贄だと!? つまり……ここにいる誰かが穴に入らなきゃならなねぇってことか!?」
「ま、まだ他にも道があるかもしれません! 周りを探ってみましょう、二多恵ちゃんお願い」
「分かった」
二多恵がスキルを使って周囲を観察し始める。一応俺も感知系スキル全てを使用して調べてみた。
やはりこの部屋には穴以外のものは無い。しかし、俺たちが今まで通ってきた後ろの道に違和感を生じた。
分かったことはこの穴は罠だと言うこと。
「多分これ罠ですよ、一旦引き返した方が良いと思います」
「小川君、悪いけどうちの二多恵の指示があるまで黙っててもらえるかな?」
俺が発言すると鈴木が釘を刺してきた。はいはい、どうせ無能な俺の発言なんて今では誰も聴いてくれやしない。
もう二度と話してやらないからな。
「これは巨大な穴ですね☆ こんな見え見えの罠に誰が落ちるのでしょうか!?」
相変わらずのテンションで実況を続けるぴよこ。その後ろから突如葛嶋が耳打ちをする。
「おい、一旦配信止めろ」
「へっ?」
「聞こえなかったか? 止めろと言ったんだ」
今までヘラヘラしていた葛嶋の目から鋭い視線に帯びた殺気を感じたぴよこは直ぐに配信を閉じた。
「み、みんなごめぇ〜〜ん、ちょっとこっちのトラブルで一旦配信閉じるから、再開するまでちょっと待っててね〜〜」
そう言ってぴよこは配信を閉じる。
「と、閉じましたけど」
「カメラの電源も落とせ」
ぴよこは渋々自身に付けていたカメラの電源を切った。
「……切ったけど」
「へへっ、よし」
「あの……葛嶋様、一体何を?」
堪らず美香が何か良からぬことを企んでいる葛嶋の前に出た。
「てめぇは黙ってろ」
「……」
質問して来た美香を黙らせると葛嶋は俺に向けて声をかけてきた。
「おいオタク、テメェが生贄になれ」
そう言うと葛嶋は右手を差し出すと突然光ったかと思った次の瞬間、俺の身体が葛嶋の右手へと引き込まれていく。
「ん?」
身体ふわっと浮かび上がり、そのまま俺の身体は葛嶋の腕に吸い付き、胸ぐらを掴まれる。
「悪りぃなオタク、俺たちのために死んでくれ」
そして、そのまま葛嶋は俺を穴の中へと放り込んだのだ。
視界に映る光景がスローモーションに見えた。
美香とぴよこが口をあまりにも衝撃的な光景に思わず口元を抑えているのが見えた。
葛嶋がニタニタと笑うその姿は悪魔の様であった。
(あーーそう言うことしちゃうのか……)
俺は奴のライン超えの行為に呆れを通り越して哀しみの感情を抱きながら。奈落の底へと向かっていくのだった。
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