第10話 クズと幼馴染とインフルエンサー
「あれが……美香か?」
俺は美香の姿を見て絶句した。
あの綺麗でサラサラとした黒色の髪はギラギラと眩しいほどの金髪になってしまっていた。
服も足を出したくない美香はいつもロングスカートか裾の長いズボンしか穿かなかった筈ったが、目の前にいる美香はお尻が見えてしまいそうな程のホットパンツに上は女児が着るようなぴちぴちのTシャツを着せられていた。
化粧もあまりしなかった筈なのに、今ではケバ過ぎる程の厚化粧で本来の顔が隠れてしまっていた。
耳にも唇にもピアスが付き、終いには腕にハートの刺青まで彫られている事に眩暈してしまいそうになる。
どれもこれも全部葛嶋のせいだ。
葛嶋はリムジンから降りると後ろから美香の肩を組みつつ、美香の胸を揉みながらこちらへと歩み寄ってきた。
大衆の面前でもお構いなしにセクハラができると言うことは、あいつの置かれている立場がよっぽど良いと言うことでもある。
美香は葛嶋の歩に合わせながら、記者のカメラから顔を隠すように歩く。
一方で地雷系の女は一歩引いたところで記者のカメラや一般大衆に向けて笑顔で手を振っていた。
あの後ろの女もどこかで見たことがある気がするが、彼女よりも俺は葛嶋にしか目が行かなかった。
葛嶋も俺がいる事に気がつくとニタリと笑いながら俺の方へと近づいてきた。
「オタク君逃げなかったんだ。偉い偉い♪」
「葛嶋……」
俺は今にも突き出しそうになる拳を押さえ、奥歯をグッと噛み締める。
例え俺に力があろうともここでトラブルを起こせば、不利になるのは間違いなく俺だ。
今は怒り云々をグッと抑え、来たるべきチャンスを待つしかない。
「紹介するよ、俺の彼女の美香だ」
まるで俺を挑発するかの如く、しなくても良い紹介をわざわざ俺にして来た。
「……」
美香は俺を横目で見るだけで何も言わない。
勿論、俺もその様子について何も言わなかった。
「あれあれ? どしたの? 1年ぶりの再会なんだからお友達同士何かお話ししたらどうだ? へっへっへ」
これ以上こいつと関わるとすぐにでも手が出てしまうと感じた俺は直ぐに後ろを振り向き、鈴木達の後方へと下がった。
「……ちっ、つまんねーー腰抜けめ」
恐らく、あの一連の挑発行為は俺に手を出させるためのものだと思うが、その手に乗るものか。
鈴木は異様な空気に割って入るように葛嶋へと声をかけた。
「く、葛嶋さん!! その後ろにいる方ってまさか!?」
「今日のダンジョン攻略はスペシャルゲストにも同行してもらう事にしてるよん。おい! 火喰鳥!!」
後ろで永遠とファンサをしている地雷系女が葛嶋の一声で笑顔で近寄ってくる。
「はーーい♡ 皆さんこんぴよよ〜〜♡ 君の心の卵にドロップキック♡ 火喰鳥ぴよこでーーす☆ Dチューブでダンジョン配信やってまーーす♪ 今日はギルド“アスモディ”さんの案件&コラボで来ました〜〜♪ 皆さんと一緒に楽しくダンジョン攻略できたら良いなと思っていますのでよろしくデス☆」
「ええっ!? まさかまさか!! あの有名配信者のぴよこさんとこんなところでお会いできるだなんて♪ 私も妹も大ファンですぅ♪」
「……」
東雲姉妹が目を輝かせながら紙とペンを差し出すと、ぴよこは笑顔でサインをしてやっていた。
火喰鳥ぴよこ……The・地雷系と思わせるピンクと黒のフリフリとした服と背中につけた分厚い翼(恐らくヒクイドリがイメージ)、そして青髪に赤のインナーカラーという奇抜な容姿でDチューブにて活動する探索者。彼女自身のランクはBとそれほど高くはないが、その圧倒的ルックスと企画力で多くのファンを獲得し、チャンネル登録者数200万人を超えるほどの人気インフルエンサーである。
俺も一応探索者になる前から彼女を見ていたファンの1人だったが、今はもう彼女に対して向ける感情は何もなかった。
ぴよこは東雲姉妹や鈴木に向けて丁寧に挨拶をして回る。
そして、俺のところまでやってくるとぴよこは少し頭を下げた。
「今日はよろしくね♪ お兄さんのお名前聞いても良い?」
「……小川圭太だ」
「じゃあ今日はケイたんって呼ぼうかな♡?」
「どうでも」
「……」
俺が彼女にそっけない態度を取った瞬間、丸い彼女の目が突然吊り上がり、腕を俺の首の後ろに回してまとわりついてきた
「あんま、調子に乗らないでくれる? あんたは今日、私の奴隷だから」
突然ぴよこは、人が変わったように高い声からドスの効いた低い声になって俺に耳打ちしてくる。
「奴隷?」
「“最弱の探索者”……葛嶋がそう言ってた。だから、好きに使って良いって言われてる。あんたみたいなのが居ると良い取れ高ありそうだからほんっと助かる。だから、これつけとくから」
そう言ってぴよこは俺の服の襟に小さな黒い機器を取り付けた。
「これはなんだ?」
「超小型カメラ、私のAdamで操作すれば私のカメラとあんたのカメラの視点を自由に切り替えられるし、配信と録画モードを切り替えられる。今日のあんたは私のセカンドカメラ。せいぜい、情けない姿を世界に晒してミームにならない様に気をつけなさい?」
ぴよこは絡んでいた腕を首から離すと直ぐに元に戻り、葛嶋の元へと戻っていった。
俺は首につけられたカメラを見ながらまたしても怒りが湧き上がってくる。
人間、みんな自分より下だと思えば直ぐ強気になって見下して良い気になる。
だけど、いつか全てを逆転してやる。
「さて、俺には時間がないんだ。そろそろダンジョンに入るからぴよこはカメラ回すなら回せ」
「あ、了解でーーす♪」
ぴよこは直ぐにカメラを起動して配信モードに切り替えた。
「みんなこんぴよよーー⭐︎ 今日も始まりました探索者ぴよこの〜〜ダンジョン配信!! 今日はなんとあの東北1、2を争う大型ギルド“アスモディ”のS級探索者葛嶋さん達とパーティを組んでダンジョンを攻略しまーーす☆ しかもしかも! 今日はなんと初めてのA級ダンジョンだよ! ぴよこ怖い……ぴえん。でもがんばるからリスナーのみんなは応援よろぴよぉ♪」
“ぴよこキタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!”
“こんぴよよーーー!!”
“ぴよこ東北に来たってま!?”
“A級ダンジョン!?”
“こんぴよよーー!!”
”アスモディ! すごいところから案件来てて草“
“葛嶋嫌い”
”応援するぴよ!“
“がんばれーー!!”
“金髪の子の服装がえっ!!な件について”
配信が始まってすぐ同接がもうすでに100万人に達していた。流石は人気配信者、桁が違う。
「へっへっへ、じゃあ準備しとけぇ?」
葛嶋は本殿に近づくと賽銭箱を勢いよく蹴りつけた。
すると次の瞬間、賽銭箱が割れるとその割れた切れ目にあの青く渦巻いたゲートが出現したのだ。
「ここのゲートは神社の罰当たりを犯せば開く。へっへっへ……さぁ行くぜぇ!!」
葛嶋がゲートを潜るとそれに合わせて美香も入っていく。
入る前に美香が振り向き、どこか心配そうな面持ちで俺の方を見た様な気がした。
美香も潜り、鈴木、東雲姉妹、そしてぴよこも潜っていく。
俺も覚悟を決めてゲートを潜った。
こうして、葛嶋率いるパーティと共にA級ダンジョン“影ノ回廊”の攻略が始まったのである。
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