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はるのひ
春はきれいでしょう
そんなこと、わざわざ言われずとも分かります
でも、春はきれいすぎてどこか居心地が悪くて
それでいて、うんざりするほどにやさしい暖かさなのです
やわらかいひざしが、自分をじんわりと哀れんでいるようで
余計にくるしくなるのです
春は美しいでしょう
さくら並木、かぜに吹かれたはなびらが舞うその情景は神々しく、意図せずなみだがこぼれるほど美しくみえるのです
この憂鬱な気持ちを、身体ごとぜんぶ
さくらの下に埋めてください
ながいながい時間がたったら
いつかは、さくらのはなびらになれるでしょうか
顔も名前も知らない、どこかのだれかに
美しいと思ってもらえるのでしょうか
それならば、あの憂鬱だった春も
少しは好きになれるのかもしれない
そんなことを考えてみたりする春の日でした