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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

お手伝い

作者: 壱原 一

はい。


はい。そうです。いま開けます。少々お待ちください。


どうぞお上がりください。よくお越しくださいました。今日はよろしくお願いします。


お任せしたいことをまとめておきました。概ねお昼前には終わるのではないかと思います。


お帰りになる時に料金をお渡しします。額面は投稿に記載しておいた通り、こなしてくださったお手伝いに応じて計算します。


これからお任せしたいことをお伝えしていきます。順次お願いします。


玄関の鍵を閉めてください。ありがとうございます。こちらへ。


手洗いとうがいをしてください。ありがとうございます。こちらへ。


これを召し上がってください。具は梅干しとおかかです。きっと朝ご飯を食べてこないだろうと思って、あなたのために作っておきました。朝ご飯をしっかり食べて、一緒に頑張りましょう。


他人が作った料理は食べられませんか。


そうですか。安心しました。ではどうぞ。ええ。お待ちします。


ありがとうございます。こちらへ。


この部屋に父がいます。父にこのスープを飲ませてください。父は高齢のため固形物を食べられません。固形物を食べられない父のために毎食スープを作っています。このスープは朝ご飯です。


昨日父に今日あなたが来ると伝えてあるので大丈夫です。この部屋に入って壁際の椅子に座っている父にそのスープを飲ませてください。


いいえ。父は陽気で人当たりよく新しい方と接するのが大好きで他人が部屋へ来ると喜んで迎えますから大丈夫です。


いいえ。私はここで待っています。


あなたはこの部屋に入って壁際の椅子に座っている父にそのスープを飲ませてください。はい。ええ。そうです。どうぞ。


どうしましたか。


驚くことはありません。それが父です。スープを飲ませてください。


いいえ。父はスープを飲めます。固形物を食べられない父がお腹を空かせて待っているのでスープを飲ませてください。


父にスープを飲ませられませんか。


そうですか。ではお帰りになる時お渡しする料金の額面から除きます。こちらへ。


そのスープを召し上がってください。


父に飲ませられないと無駄になってしまいますからそのスープを召し上がってください。


いいえ。そのスープは父が飲むものです。私は飲みません。父に飲ませられなかったため無駄になってしまいますからあなたがそのスープを召し上がってください。


さっき朝ご飯におにぎりだけお出ししてしまいましたね。少し後になりましたが汁物と思って。いかがですか。


スープを召し上がれませんか。


召し上がれなければお帰りになる時お渡しする料金の額面から除きます。


そうですか。安心しました。ではどうぞ。お待ちします。


今どき電波も届かないこんなに辺鄙な所へ急な募集にもかかわらずすぐ来てくださる位だからきっと退っ引きならないほどお金に困っているうえ頼る宛が一つもないだろうと思っていました。


とても眠くなってきましたか。どうぞこの椅子に座ってください。


父は高齢のため固形物を食べられず他人が好きですが私には乱暴するので父が飲むためのスープを毎食作っています。


一生俺の世話をしろときつく言い含められているからです。


私はまだ生きているので父を世話しなければなりません。


一生俺の世話をしろと毎日何度も呼ばれるのに部屋へ入ると暴れるから父にスープを飲ませないと。


最近のんでくれないからいつまた呼ばれて暴れられるか私はまだ生きているのにひと時も生きた心地がしない。


でももう安心しました。


やっぱり父はスープを飲めます。


父は陽気で人当たりよく新しい方と接するのが大好きで他人が部屋へ来ると喜んで迎えますからきっと飲んでくれると思っていました。


父はスープを飲めました。


スープを飲ませたら暴れません。


椅子を壁際に寄せましょうか。またずり落ちると戻すのが大変なので。


後は念のため、こうしておけば、二度とずり落ちないでしょう。


次はお昼にスープを作って持ってきます。


次も大人しく飲んでくださいね。お父さん。



終.

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― 新着の感想 ―
[良い点] とてもいい作品だと感じました。 お手伝いなのか、それとも意味深なアルバイトなのか。 ぞくぞくする話でした。私はオカルト寄りのホラーが好きなので、私にはぴったりでしたよ。 [気になる点] 一…
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